目次
天地初めて發(はつ)す之(この)時、高天原成るに於いて神名は、
天之御中主神(高の下の天の訓は阿麻(あま)と云う。此れ下も效(なら)う。)。
次高御産巣日神。次神産巣日神。
※「髙御産巣日神」の「産」が、「国宝真福寺本」では、「座」に変わる。
此の三柱神者(は:短語)、獨り神(ひとりがみ)而(に)成りて、
並んで坐り隱れる身也。
天地初發之時
古事記が神話の分類に入るとしても、現実の話を書いていると考えていますので、
「天地」も地殻変動といった事ではなくて、別の意味だと思います。
一章考察終了後、ファンタジー(非日常)ではなく、
古代人が生きた現実(リアル)の情報だと言えると思っています。
時代ですが、「淤能碁呂嶋」の「時代考証」では、
本家のある南朝鮮では、移住以前から「寒冷化」の影響があり、
このままでは飢えなどで、全滅する恐れが出たので、
「天之御中主神」をトップとする探索班が結成されて、
南朝鮮を南下した、九州に拠点を作ったのではないか?と考えています。
と書きました。
この場面は、「高天原」に到着して、人物名の記載しか無く、
時代を知るヒントが無いように見えます。
しかし、「於髙天原成神名」で「生神名(神名が生まれる)」ではなく、
「成神名(神名が成る)」と記載があります。
つまり、「高天原」で「新しく」命名されたのではなく、
「高天原」以前に、誰かから命名されたと解釈出来ます。
ここがヒントになりそうです。
そこで、「發」と「成」を深堀しようと思います。
「發」:
「弓」の象形と「上向きの両足」の象形と
OK辞典
「手に木のつえを持つ」象形から
「弓を引きはなつ」を意味する「発」という漢字が成り立ちました。
もう少し、詳しく参照2のサイトが解説しています。
解字
篆文・旧字は發で、「癶(でかける)+弓(ゆみ)+殳(うつ動作)」 の会意。
癶の初形は両足をそろえて出発する形。
「弓+殳」は弓を射る形。
両者を合わせた發は、弓で矢を放って出発する形で、
攻撃に先だってまず矢を放って開戦を告げる意
成り立ちが、「宣戦布告」の意味だとすると、今までのイメージが変わりそうです。
「天なる土地」と考える事が出来、「高天原」とは違う地と解釈出来ます。
「天(あま)一族」は「天帝思想」から、「天=阿麻」にしたと考えているので、
「天なる土地」=「天帝に近い土地」となり、「高地」を連想出来ます。
問題は、古代人が考える「高地」の高さが不明な点です。
現代人とは差異があると思うので、場所の選定に影響してしまいます。
「初めて、宣戦布告する」とすると、それまで、「天なる土地」では、
争いごとが無く、平穏無事な生活をしていた。
しかし、「侵略者」なのか、「敵対者」なのかは不明ですが、
その人達が、「天なる土地」に来た事により、状況が一変した様に受け取れます。
もしくは、「天なる地に来て初めて狩りをした」とも解釈出来ますが、
この時点でが、判断出来るだけの情報がありません。
参照1:漢字・漢和辞典-OK辞典⇒⇒⇒「発/ 發」という漢字
参照2:音符 「発ハツ」 <出発する>
「成」:
「釘を頭から見た」象形と「大きな斧」の象形から、
OK辞典
大きな斧(まさかり)で敵を平定するを意味し、
それが転じて(派生して・新しい意味が分かれ出て)、
ある事柄が「なる・できあがる」を意味する「成」という漢字が成り立ちました。
上記の様に、参照3のサイトでは、
「成」の本来の意味は、「敵を平定する」だと記載があります。
ところが、調べて行くと、
参照3のサイトの様な成り立ちを書くサイトは、調べた限りありませんでした。
『成(ジョウ・セイ)』chéngは、
物事が成就(ジョウジュ)する様子を表わす会意文字です。漢字の足し算では、
戈・戊(ほこ)+丁(打つ・丁寧)=成(ほこで打って作り上げる。成す)です。漢字の部首は『戈・ほこ』、意味は『成(な)す』、『成(な)る』です。
もう一つの解釈が、上記の参照4のサイトになります。
比較して見ると、「「釘を頭から見た」象形と「大きな斧」の象形」、
「戈・戊(ほこ)+丁(打つ・丁寧)」と、似てはいますが異なっています。
いつもは、ヒントにするべき漢字が多いので、深堀しませんが、
今回はヒントとなりそうな漢字が極端に少ないので、「戊」と「丁」について考えます。
参照5のサイトには、下記の様に記載があります。
戉は「鉞」の初文。
「鉞」は古代の斧の頭が生まれ変わった兵器である。
1:先ずそれは征伐用の武器であった。
2:第二に一種の刑具であった。青銅の銘文には鉞を用いて殺人の図がある。
3:第3に一種の権力の象徴であった。
4:常に典礼や出陣の時の儀仗用具であった。
常に高い社会的等級を備えているばかりでなく社会の権力の象徴でもあった。(少々変更しました。)
上記により、「戊」は「鉞(まさかり)」という「斧」となります。
これにより、「戊」の成り立ちを正しく記載しているのは、
参照3のサイトとなります。
参照4のサイトで記述がある「戈・戊(ほこ)」については、
「戉(まさかり)」と「戈(ほこ)」の「甲骨」等を比較すれば、違う事が分かります。
参照5と参照6のサイトに「甲骨」等があり、比較すると、
確かに「甲骨」では似ていますが、「金文」以降では似ていません。
ちなみに、「戉(まさかり)」と「戈(ほこ)」の違いですが、
Wikiには下記の様に載っています。
斧(おの、よき)は、片手、もしくは両手持ちの柄の先に
Wiki
厚くて重い刃を装着した叩き切るための刃物である。
戈(カ、ほこ)は、敵を打ち据える動作によって殺傷するのに適した穂先を持つ、
Wiki
古代東アジアのピッケル状の長柄武器(長兵)である。
この漢字は、参照7のサイトにある解説を見る限り、
参照3のサイトにある「釘を頭から見た」が適切だと思われます。
そこで、思ったのは、「釘」の上から見たという事は、
「片手戉(まさかり)」を敵の頭上から、投擲していた表れではないか?と感じました。
そもそも、「口」の象形を「釘の頭」と思うでしょうか?
なぜ、この様な象形にしたのか、不思議です。
この様に考察すると、
大きな敵(勢力)でも「大きな斧(まさかり)で敵を平定する」事が出来るから、
後世に「ある事柄が「なる・できあがる」を意味」に変化したのではないでしょうか?
つまり、本題の「天地初發之時 於髙天原成神名」は、
それまで、「天なる土地」では、
争いごとが無く、平穏無事な生活をしていた。
しかし、状況が一変し、戦いをする事になり、
戦いに勝ち、非常事態を脱する事は出来た。ただ、また、戦う事を考えると、「天なる土地」では、
戦闘に適した地では無い事が分かり、
今後に備えて、「高天原」という戦闘に対処出来る拠点を作り上げた。
と解釈出来ますが、どこまで、本当なのか情報が無く分かりません。
「初發」で「初めて狩りをした」との解釈をしましたが、
それだと、「高天原」を構築するに繋がらないので、
「外敵」の方が合っていると思います。
やはり、「高天原」以前の情報を知りたいです。
参照4:漢字の覚え方 成
参照6:矛と戈の字に見る武器の変遷