最終更新日 2025/07/29

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 第六章 海佐知毘古と山佐知毘古

故火照命者 爲海佐知毘古【此四字以音 下效此】而取鰭廣物・鰭狹物 火遠理命者
爲山佐知毘古而 取毛麤物・毛柔物 爾火遠理命 謂其兄火照命 各相易佐知欲用 三度雖乞 不許
然遂纔得相易 爾火遠理命 以海佐知釣魚 都不得一魚 亦其鉤失海 於是 其兄火照命 乞其鉤曰
山佐知母 己之佐知佐知 海佐知母 己之佐知佐知 今各謂返佐知 之時【佐知二字以音】
其弟火遠理命答曰 汝鉤者 釣魚不得一魚 遂失海 然其兄強乞徵 故其弟 破御佩之十拳劒
作五百鉤 雖償不取 亦作一千鉤 雖償不受 云 猶欲得其正本鉤
解読

故、火照命者(は:短語)海佐知毘古【此四字以音 下效此】と爲す

而(すなわち)、鰭廣物と鰭狹物を取る

火遠理命者(は:短語)、山佐知毘古と爲す

而(すなわち)毛麤物と毛柔物を取る

爾(なんじ)火遠理命、其の兄火照命と各(おのおの)相に佐知を易く欲して用いると謂う

三度と雖(いえども)乞うを不許(ゆるさず)

然し、遂に纔(わずかに)得易しと相(たすける)

爾(なんじ)火遠理命、海佐知を以って魚釣りし 、都一つの魚も不得(えず)

亦、其の海で失った鉤(かぎ)、是於(これにおいて)、
其の兄火照命は其の鉤(かぎ)を乞うて曰く

山佐知の母 己之佐知佐知 海佐知の母 己之佐知佐知
今、各(おのおの)佐知を返すと謂う之(これ)の時【佐知二字以音】
其の弟火遠理命答えて曰く

汝の鉤(かぎ)者(は:短語)、魚釣で一つの魚も不得(えず)

遂に海で失う

然し、其の兄が強く徵(しるし)を乞う

故、其の弟、破御佩之十拳劒で作った五百の鉤(かぎ)
と雖(いえども)償(つぐない)不取(とらず)

亦、一千の鉤(かぎ)を作る償(つぐない)と雖(いえども)不受(うけず)と云う

猶(なお)、其の正しい本の鉤(かぎ)を得るを欲す

解説

01

佐知毘古


海佐知毘古

「此四字以音 下效此」と注記があるので、「音読み」指定となります。

「佐」:呉音・漢音:サ

「知」:呉音・漢音:チ、唐音:シ

「毘」:呉音:ビ、漢音:ヒ

「古」:呉音:ク、漢音:コ

上記により、呉音「さちびく」、漢音「さちひこ」となりそうです。

意味

「佐知毘古」が「さちびく」なら、「びく」は「魚籠」の事を指していると思われます。

そうなると、日本書紀にある「海幸彦」というのは、間違いという事になりそうです。

次に「さち」は、必ずしも「幸」を指すわけではない様で、goo辞書で調べると、
「つまずくこと。また、失敗すること。」を「蹉躓」と表記する様です。

今回の場合は、「幸」で良いと思います。

問題は、「びく」=「魚籠」だとすると、
「山佐知毘古」での「びく」は何を指しているのでしょうか?

調べると、こちらも、「山菜採り」に時に腰に付ける籠を「びく」と呼んでいる様です。

三度雖乞 不許

「三度と雖(いえども)乞うを不許(ゆるさず)」と解読できますが、
前文との差が大きいです。

「爾(なんじ)火遠理命、
其の兄火照命と各(おのおの)相に佐知を易く欲して用いると謂う」
と前文では、物々交換している様に解釈できます。

ところが、次の文では、上記の様にあり、何があったのでしょうか?

「三度と雖(いえども)」から考えて、なにか問題を二度起こしていると考えられます。

海佐知

「爾(なんじ)火遠理命、海佐知を以って魚釣りし 、都、一つの魚も不得(えず)」の
一部分ですが、もしかすると「海佐知」とは「竿」の事では無いか?と考えています。

そうでなければ、「海佐知を以って魚釣りし」という事にはならないと思います。

あと、ここでは「鉤(かぎ)」を失ったという話は無いのに関わらず、
次の文では「亦、其の海で失った鉤(かぎ)、是於(これにおいて)、
其の兄火照命は其の鉤(かぎ)を乞うて曰く」とあり、
そんなに、取れやすい「釣り針」だったのだろうか。

「山佐知の母 己之佐知佐知 海佐知の母 己之佐知佐知
今、各(おのおの)佐知を返すと謂う之(これ)の時【佐知二字以音】
其の、弟火遠理命答えて曰く」も不思議な話です。

「 己之佐知佐知」とは何でしょうか?

それに【佐知二字以音】とありますが、
「海佐知毘古」の注記に「此四字以音 下效此」とあり、
必然的に「佐知」は「音読み」になるはずです。

なので、ここでわざわざ、「音読み」指定するって事は、
前文との間で「佐知」を「音読み」以外で読んでいた事になります。

しかし、その部分は無いので、消去したのだと思われます。

それにしても、「佐知」を「音読み」以外で読むとは、どの様な風に読んだのでしょうか。

遂失海

「汝の鉤(かぎ)者(は:短語)、魚釣で一つの魚も不得(えず)」の後に
「遂に海で失う」となりますが、「亦、其の海で失った鉤(かぎ)」とあり、
どちらも「山佐知毘古(やまさちびく)」である「火遠理命」がしたのだと思います。

すでに、「鉤(かぎ)」を失っているのに、「遂に」とはどういう事なのでしょうか?

もしかして、「鉤(かぎ)」以外の物でしょうか?

それらしい物は登場していません。

其の兄

「遂に海で失う」の後の文が「然し、其の兄が強く徵(しるし)を乞う」ですが、
今までに一度「其の兄火照命」と書いていますが、
なぜ、今回は「其の兄」としたのか、気になります。

この後に、「其の弟」とありますが、名が無いという事は、
誰を指しているのか不明だという意味でもあります。

なので、あまり、この様な表記は信用できません。

なにより、この場面に、他に「兄弟」がいた可能性もありますので、
名が無いのは、おかしいと思います。

「故、其の弟、破御佩之十拳劒で作った五百の鉤(かぎ)
と雖(いえども)償(つぐない)不取(とらず)

亦、一千の鉤(かぎ)を作ると雖(いえども)償(つぐない)不受(うけず)と云う

猶(なお)、其の正しい本の鉤(かぎ)を得と欲す」の文ですが、
「五百の鉤(かぎ)と雖(いえども)償(つぐない)不取(とらず)」と
「一千の鉤(かぎ)を作ると雖(いえども)償(つぐない)不受(うけず)」は
どちらが正しいのでしょうか?

多分に、「不取(とらず)」は「被害者」、
「不受(うけず)」は「加害者」だと思いますが、
内容的には、「亦」ともあるので、別の話の可能性もあるように思います。

そして、「猶(なお)、其の正しい本の鉤(かぎ)を得と欲す」の文が、
「故、其の弟〜」の文の後であるならば、「不取(とらず)」からして、
「正しい本の鉤(かぎ)」ではなかったから、受け取らなかったとも解釈できます。

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