其の嶋而(に)於いて天之御柱と見立て、八尋殿と見立てて天より降り坐る
是於(これお)其の妹伊邪那美命に問いて曰く
汝の身者(は:短語)如何に(いかに)成る
答て曰く
吾の身成る者(は:短語)合不成處(あいならないところ)が、
一處(ひとところ)在る成り
爾(なんじ)伊邪那岐命に詔(みことのり)す
我の身成る者(は:短語)餘(あま)る處(ところ)而(に)成りて成り、
一處(ひとところ)在る成り
故、此れを以て吾の身、餘(あま)る處(ところ)成りて、
汝の身、合不成處(あいならないところ)而(に)刺して塞いだ為、
國土生みて成り て奈何(いかん)に生む(生の訓は宇牟と云う)
伊邪那美命答て曰く、然りて善く
爾(なんじ)伊邪那岐命を詔(みことのり)す
然り者(は:短語)吾と與(ともに)汝、天之御柱而(に)行き、是(これ)を
廻りて逢うを美斗能麻具波比(此の七字は音を以てす。みとのまぐはひ)と為す
此の期の如く、乃(なんじ)詔(みことのり)す
汝者(は:短語)右自(より)廻り逢い、我者(は:短語)左自(より)廻り逢おう
約を以て廻って竟(おわ)る時
伊邪那美命が、阿那邇夜志愛袁登古袁(あなにやしあいおんとくおん)を先に言い、
後に伊邪那岐命が阿那邇夜志愛袁登賣袁(あなにやしあいおんとめおん)と言う
各言い竟(おわ)り之後
其の妹告げて曰く
先に女の人が言うのは不良(よくない)と雖(いえど)も、
然し久美度邇(此の四字、音を以ってす。くみどに)興る
而(なんじ)が生む子は水蛭子
此の子者(は:短語)葦船而(に)入れて流されて去る
次に淡嶋が生まれる
是、亦、不入(はいら)ずの子の例
見立
最初に「於其嶋天降坐而 見立天之御柱 見立八尋殿」と「見立」が2つ出て来ます。
普通に「見立て」とするなら、
Wikiにある「対象を、他のものになぞらえて表現すること」と考える事が出来て、
嶋にある「何か」を「天之御柱」と「八尋殿」と捉えて行動したと言えます。
しかし、見立てた場所がはっきりしません。
話の場面が異なるのだから、「淤能碁呂嶋」としても問題ないと思いますが、
その様に書いていないという事は、別の嶋の可能性も考えておく必要がありそうです。
「淤能碁呂嶋」の範囲(「碁(整然と線の引かれた)」「呂(長い)」)が狭く、
作業が出来ないので、近くの広い嶋に移動したと思われます。
天之御柱に見立てるという事は、「天(あま)なる一族」の住む地域には
存在しているだろうと推測する事が出来ます。
また、「天(あま)之」とある事から、「御柱」は一つだけしか無いのではなく、
複数個存在していた為、「天(あま)一族の」という意味であると考えています。
「柱」と言うと、建築物の柱を一番に考えますが、「八尋殿の天之御柱」と言う表現を
していないので、単独で立つ柱とすると、「オリベスク」の様なものかも知れません。
あと、「柱状節理」で柱の代用とする事が出来る、きれいな部分が、
残っていたと考える事も出来ます。
では、「八尋殿」に擬える事が出来る場所とはどこでしょうか?
まず、「尋」とは、参照1のサイトには、
「ひろ(両手を左右に伸ばした長さ。周の時代では、八尺(約1.8メートル)」とあり、
「八尋」は8倍なので、1.8m×8=14.4mとなり、約15mになります。
ただ、縦と横のどちらの長さなのかは不明です。
次に「殿」は、「大きな建物」以外にはなさそうです。
上記の様に考えて行くと、「八尋殿」の代用とするという事は、
最低でも雨や風を防ぐ事の出来る場所となります。
となると、「洞窟」が当てはまりそうです。
「淤能碁呂嶋」の近くで、「岩塩(鹽)掘り」をしていたと仮定すると、
岩塩を採取した後には、大きな洞窟も出来上がっていた可能性があります。
その場所を、うまく利用したと考える事が出来そうです。
爾(なんじ)とは
「天之御柱」と「八尋殿」の代わりを見つけて、爾(なんじ)という人物と、
妹伊邪那美命、伊邪那岐命が移動して来ます。
是於(これお)其の妹伊邪那美命に問いて曰く
汝の身者(は:短語)如何に(いかに)成る
答て曰く
吾の身成る者(は:短語)合不成處(あいならないところ)が、
一處(ひとところ)在る成り爾(なんじ)伊邪那岐命に詔(みことのり)す
我の身成る者(は:短語)餘(あま)る處(ところ)而(に)
成りて成り、一處(ひとところ)在る成り故、此れを以て吾の身、餘(あま)る處(ところ)成りて、
汝の身、合不成處(あいならないところ)而(に)刺して塞いだ為、
國土生みて成り て奈何(いかん)に生む(生の訓は宇牟と云う)
今までは問題ないと思っていましたが、
改めて読んで見ると、不自然な箇所が見えて来ました。
まず、妹伊邪那美命と伊邪那岐命の会話かと考えていましたが、
「其の嶋而(に)於いて天之御柱と見立て、八尋殿と見立てて天より降り坐る」
の部分で、妹伊邪那美命と伊邪那岐命が移動して来た事が書いていません。
たぶん、上司に付いて来る形だったのではないだろうか?
もし、そうであるなら、この嶋は「淤能碁呂嶋」ではなく違う嶋となります。
そして、「詔(みことのり)」とある事からも、
最低でも、伊邪那岐命に命令出来る立場の人間と推測出来ます。
逆に、妹伊邪那美命には「問う」とはありますが、「詔(みことのり)」が無いので、
「爾(なんじ)」という人物の直属の部下は「伊邪那岐命」で、
「妹伊邪那美命」はお客様的な立場だったのではないか?と考えています。
この箇所も噛み合っていないように感じています。
確認ですが、妹伊邪那美命は「吾」、伊邪那岐命は「我」と、自分の事を指しています。
ところが、最後の文では、「吾の身、餘(あま)る處(ところ)成りて」とあり、
妹伊邪那美命に「餘(あま)る處(ところ)」がある事になっています。
また、「刺して塞いだ為、国土生みて」ともあり、人間は国土を生めないので、
男女の営みではなく、別の意味がありそうに見えます。
そこで、色々と調べていたら、「塞」に重要な意味が含まれていました。
「屋根の象形と握る所のあるのみ、または、
OK辞典
さしがねの象形と両手の象形」(「詰め込みふさぐ」の意味)と
「土地の神を祭る為に柱状に固めた土」の象形(「土」の意味)から、
「土でふさぐ」、「ふさがる」、「外敵の侵入を遮るとりで(要塞)」を
意味する「塞」という漢字が成り立ちました。
意味の場所にも、「とりで」、「国境」、「辺境」、「険しい土地」、
「要害の地(防御・戦闘性に富んでいること)」と書かれていて、
文章の意味が分かって来ました。
「国境」の意味で考えると、妹伊邪那美命の國では、要塞などの設備がない場所があり、
伊邪那岐命の國では、外敵の侵入がない場所にも要塞などの設備があった。
だから、「双方が設備の設置を見直して、改めた為に
安全になり、安心出来るようになった」と言う事だと、おおまかに解釈しています。
ただ、「刺」の漢字があるので、国境の主張に何かを刺していたと思いますが、
何でしょうか?
そこで、成り立ちを調べてみました。
「とげ」の象形と「刀」の象形から、
OK辞典
刀でとげのように「さす」を意味する「刺」という漢字が成り立ちました。
意味を見ると、「船をこぐ」や「探る(様子を見る)」もあり、
「刺して塞ぐ」とは「見張り棟」など「刀」に例える事が出来る施設と言えそうです。
なおかつ、「朿(とげ)」があるので、
ゲーム「7days tp die」にある「ウッドスパイク」の様な
「朿(とげ)」に例える事が出来る防衛網を持つ施設と考える事が出来ます。
つまり、
「刺して」:「朿(とげ)」の様な防衛網を有する「見張り棟」などの施設
「塞ぐ」:「見張り棟」などで情報収集し、他の領地でない事を確認し、
国境を主張する為に「要塞」の様な防衛設備を設置
「国土生む」:無人の領地を獲得し、領土を拡張
と、推察しています。
今後、自国の領地にする際に必要な情報収集をする施設と考える事が出来そうです。
ちなみに、現代でも、土地の境界確定後、目視で認識出来るように、
「境界標」というものが設置されているので
古代でも、木などで「境界標」を設置している可能性が高いと思います。