恭(うやうや)しく惟(おも)うに
日祖の名、阿乃沄翅報と云う
辰乎(お)澡(あら)って靈(よい)戞(ほこ)で明けると云う
奈(からなし)は、珥(みみだま)の素(もと)になり、(病気を)煩ったので佐(たす)ける
氣を凝(こご)らせて悠(はるか)から清める所
日孫の内から生まれる
第二章
「神領 契丹古伝 著:浜名寛祐」において、
「日祖名阿乃沄翅報云戞靈明」と区切っています。
しかし、「云」を「万葉仮名」で調べても、「雲」は「う」となっていますが、
「云」が「う」にはなっていません。
また、「契丹古伝」は漢文で書かれているので、
「〜と云う」の形式なのではないか?と思っています。
そのため、「日祖名阿乃沄翅報云」で区切りました。
「阿乃沄翅報」を「日祖名」としていますが、人名なのかは不明です。
読みに関しては、契丹族がどの様に読んでいたのか?が不明なので、
ここでは、漢字の意味から考察して行きます。
「神領 契丹古伝 著:浜名寛祐」では、
「阿乃沄翅報云戞靈明」を「あめうしふうかるめ」としています。
参照1のサイトでは、「あのうしふうかるめ」と「め」→「の」に変えています。
「阿麻(あま)」の例と同じく、「良い」の意味があると思います。
「阿、乃(すなわ)ち」なのかと最初考えましたが、「契丹 名 阿」で検索すると、
「阿」を使っている名があったので、「阿乃」だと思います。
「阿乃」の読みは、「あの」が正しいと考えています。
さすがに、「乃=め」というのは、根拠が乏しく、本の解説で、「阿乃=あめ」とすることで、
「古代日本の事を書いている」と思わせたいという思惑が隠れていません。
もちろん、「契丹」という集団に「天(あま)」を名乗る人達が居た可能性はあります。
しかし、「天照大御神」は「あま」であるのに、他の「天」は「あめ」とするのは、
「訓高下天 云阿麻 下效此」の「此れ下も效(なら)う。」の注釈を無視している事になり、
間違っています。
もし、「あめ」が正しいと思うのならば、「あまてらす」ではなく「あめてらす」とするべきです。
仮に、契丹と古代日本(九州)との繋がりがあって、「契丹古伝」に影響を与えたとするならば、
憶測ではなく、きちんと調べた上で文書とするのが正しいと思います。
解説を読む限り、憶測から出ていません。
この漢字、調べてみましたが、
どうやら、日本国内で使うことはほぼ無く、中国国内で使われているようです。
万葉仮名を探してみましたが、見つけられませんでした。
これにより、「う」と読ませるのは間違いの可能性が高そうです。
そして、万葉仮名を使った読みが違う可能性が高いです。
ちなみに、漢字の意味は参照21のサイトには、「めぐる。水が巡り流れるさま。」とあります。
参照21:「沄」の部首・画 数・読み方・意味など - 漢字辞典
この漢字は、万葉集でも「つばさ」だったり、他に「はね」や「は」と読まれています。
ところが、本でも、参照1のサイトでも、なぜか、「し」としています。
「し」は「音読み」からだと思いますが、なぜ、音読みから持ってきたのでしょうか?
この漢字は、万葉仮名では「ほ」になります。
こちらも、なぜか、「ほ」を使わずに「ふ」としていて不思議です。
意味としては、Wikiの「「刑罰を下す」「むくいる」を意味する漢語」があってそうに思います。
上記の考察により、万葉仮名と音読みを混合したり、
万葉仮名があるのに関わらず、違う読みを使ったりと統一されていません。
もし、一字一音として読むのならば、「あの(う)はほ」となりそうです。
この五文字は、契丹人の発音を漢字に当てはめたと思うので、
どの様に読んでいたのか気になります。
意味としては、「沄」の「水が巡り流れるさま」=「船乗り」、
「翅」と「報」で相手が危機的状況の際に「はね」が生えたかの如くに現れて、
恩に「報いた」とすると解釈が出来ます。
「阿乃」に関しては、例えば、「天之御中主神」の様に、
「阿」という一族や集団から出たという意味とも解釈できますが、情報が少ないです。
「澡乎辰云」は「辰乎(お)澡(あら)うと云う」で合っていると思われますが、
問題は「戞靈明」で、単語なのか、それとも、漢文の様にバラバラに読むのか考察します。
本と参照1のサイトでは「戞靈明」を「かるめ」と読んでいますが、
万葉仮名では、「靈」は「め(甲類)」に入るので、「かるめ」とはなりません。
「明」も「め(乙類)」なので、仮に万葉仮名で読むとするならば「かめめ」となります。
「辰乎(お)澡(あら)って靈(よい)戞(ほこ)で明けると云う」と解釈できそうです。
ただ、「辰」には色々な意味があり、どれを指しているのか不明です。
象形。土地を耕すのに用いる農具を象る[字源 1]。
「はまぐり」を意味する漢語{蜃 /*dənʔ/}を表す字。
この文字が農具を象っているのは、
はまぐりの貝殻を加工して農具とすることがあったため[字源 2]。のち仮借して十二支の5番目を意味する漢語{辰 /*dən/}に用いる。
Wiki
「2枚貝が殻から足を出している」象形から、
OK辞典
「蜃(しん-蜃気楼を作り出す伝説の生物)」の意味だが、
借りて(同じ読みの部分に当て字として使って)、
十二支の5番目「たつ」を意味する「辰」という漢字が成り立ちました。
「辰」の字源について2つのサイトを取り上げます。
Wikiにある「はまぐりの貝殻を使った農具」が本体の意味であるならば、
「辰乎(お)澡(あら)って靈(よい)戞(ほこ)で明けると云う」という解釈も、
強ち間違っていないように思えます。
「はまぐりの貝殻を使った農具」である「辰」とありますが、
この場面は農具を指すので無く、
Wikiの字源にあるように「はまぐり」を指すのだと思っています。
ちなみに、「振」と「辰」では、字形が完全に異なるので、利用しているわけでは無いです。
参照22:辰 - ウィクショナリー日本語版
「奈(からなし)は、珥(みみだま)の素(もと)になり、(病気を)煩ったので佐(たす)ける」
と解読しました。
「奈(からなし)」は、参照24のサイトには下記のようにあります。
「木の名前。ベニリンゴ(からなし)。」
※ベニリンゴとは、バラ科の落葉高木。
太く短い花柄の先に白色または淡紅色の花を上向きに開く。
楕円形のリンゴに似た果実が垂れ下がる。
OK辞典
解読が正しいとすると、
「珥(耳飾り)」の素材として「奈(からなし)」の木を使っていたのかも知れません。
「煩」が、からなしの木が病気になった事を指すのだとすると、どの様な病気だったのでしょう?
参照24:漢字・漢和辞典-OK辞典⇒⇒⇒「奈/柰」という漢字
「氣を凝(こご)らせて悠(はるか)から清める所」と解読しました。
「氣」についてWikiには下記のようにあります。
「米」+音符「气 /*KƏT/」。
「食べ物を贈る」を意味する漢語{餼 /*hrəts/}を表す字。
のち仮借して「ガス」を意味する漢語{氣 /*khəts/}に用いる。
Wiki
上記によると、本来の意味は「食べ物を贈る」だとありますが、
「氣(贈られた食べ物)」と「氣(ガス)」どちらの意味でも通じるように思います。
ただ、「氣(ガス)」を清めるというのは、技術力が無い時代では無理ですし、
「凝(こご)らせて」を「固める」や「停滞させる」の意味と考えると、
「氣(贈られた食べ物)」を保存する貯蔵庫の事を書いたと解釈できます。
「清める」は、参照26のサイトに「にごりやけがれを取り去る」の意味が掲載されています。
これにより、
「「贈られた食べ物」を留めて、検査し、傷んでいたり、腐っている箇所を取り除く場所」
と解釈することが出来ますが、処理を、
貯蔵庫の施設内で行っていたのか、それとも別の場所なのかは不明です。
参照25:氣 - ウィクショナリー日本語版