最終更新日 2024/11/12

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 第四章 葦原中國の平定

是以 高御產巢日神・天照大御神 亦問諸神等 所遣葦原中國之天菩比神 久不復奏
亦使何神之吉 爾思金神答白 可遣天津國玉神之子 天若日子
故爾 以天之麻迦古弓【自麻下三字以音】・天之波波【此二字以音】矢 賜天若日子而遣 於是
天若日子 降到其國 卽娶大國主神之女 下照比賣 亦慮獲其國 至于八年 不復奏

故爾 天照大御神・高御產巢日神 亦問諸神等 天若日子 久不復奏 又遣曷神以問天若日子
之淹留所由 於是諸神及思金神 答白 可遣雉名鳴女 時 詔之 汝 行問天若日子狀者
汝所以使葦原中國者 言趣和其國之荒振神等之者也 何至于八年不復奏
解読

是を以って、高御產巢日神・天照大御神、亦、諸神等に問う

葦原中國之所に遣わした天菩比神が久しく、不復奏(ふくそうせず)

亦、何(いず)れ之神を使わすが吉

爾(なんじ)、思金神答えて白(もう)す

天津國玉神之子 天若日子遣わす可(べ)き

故爾(ゆえに) 、天之麻迦古弓【自麻下三字以音】・天之波波【此二字以音】矢賜るを以って、
天若日子、而(すなわち)遣わす

於是(これを)、天若日子、其國に到り降りる

卽(すなわ)ち、大國主神之女 下照比賣娶る

亦、其國を慮(おもんぱか)りて獲る

八年于(に)至り、不復奏(ふくそうせず)

故爾(ゆえに)、天照大御神・高御產巢日神、亦、問諸神等に問う

天若日子、久しく不復奏(ふくそうせず)

又、曷(いず)れの神を遣わすを以って、天若日子之淹留所の由を問う

於是(これを)、諸神及思金神、答えて白(もう)す

雉名鳴女を遣わす可(べ)き

之(これ)詔(みことのり)する時、汝、天若日子者(は:短語)行った狀(様子)を問う

汝、葦原中國に使わす所以者(は:短語)、
其の國之荒振神等之和(やわらぎ)者(は:短語)趣(すみや)かに言う也

何(いず)れ、八年于(に)至り不復奏(ふくそうせず)

解説

01

派遣

原文:

亦使何神之吉

解読:

亦、何(いず)れ之神を使わすが吉

「何」を「いずれ」と読ませるのは、今までもあったんですが、少々、気になったので深堀します。

参照86のサイトにある「説文解字」には、「儋也。」とあります。

「儋」は、参照87のサイトには、「二人用肩扛(二人で肩に担ぐ)」や、
参照88のサイトでは、「「儋」は2石」とあります。

これは、「石」は、「古代中国で容量をはかる単位」であり、
「人がかつぐことのできる程度の量の意」だとあります。

さて、ここで疑問です。

参照86のサイトにある「何」の「商甲骨文𠂤組」の字形を見ると、
確かに「担いでいる」と解釈できる字形になっています。

なので、「何」=「儋」と言うのは、一定の説得力があります。

しかし、現代で使っている意味として、「担ぐ」や「担う」といった使い方はしていません。

それに、「いずれ」から遠ざかっています。

そこで、色々と調べると、参照89のサイトにある事が下記になります。

物を担いだ人を象ったもの(甲骨文字の形を参照)。

周代に形声文字「人」+音符「可 /*KAJ/」として再解釈された。

「になう」「かつぐ」を意味する漢語{荷 /*gaajʔ/}を表す字。

のち仮借して疑問詞の{何 /*ɡaaj/}に用いる。

Wiki

ここで、気になるのが「仮借」という言葉で、下記にまとめます。

仮借:

漢字の六書りくしょの一。音はあるが当てるべき漢字のない語に対して、
同音の既成の漢字を意味に関係なく転用するもの。

食物を盛る高い脚の付いた器の意の「豆」の字を、
穀物の「まめ」の意に用いる類。

六書:

漢字の構成ならびに使用に関する6原則。

《周礼(しゆらい)》《漢書》芸文志,《説文解字》等にその名が見える。

この様に、「何」の本来の意味は、「荷(担ぐ、担う)」だったが、
「周礼」で「疑問詞」として使用したので、
それを見た人達が、本来の意味とは違う、無関係な使用したというのが結果の様です。

「西周」の時代であれば、古事記の情報源の時代と合うので、
「周礼」を見て、利用したと考えられます。

参照86: 何: zi.tools

参照87: 儋的解释|儋的意思|汉典 “儋”字的基本解释

参照88: 儋 石(タンセキ)とは? 意味や使い方

参照89: 何 - ウィクショナリー日本語版

使

「亦使何神之吉」の解読を、「亦、何(いず)れ之神を使わすが吉」とした場合、
今まで、「遣」を使っていたのに、なぜか、ここでは「使」を使っています。

意味が異なるのは、知っているからこそ、この様に書き分けたと思います。

参照90のサイトにある「説文解字」には、「縱也」とあったので、
「縱」を見ると「緩也」とあり、「緩」には、「繛也」とあり、「繛」には「素+爰」とありました。

「遣」の意味が「縱」というのは、すごくびっくりしました。

「縱」の意味を調べると、Wikiに「縦とは、糸をゆるめる」とありました。

Wikiには続きがあり、「のち仮借して「たて」を意味する漢語」になったとあり、
多分に、「遣」の意味が、「軍隊」なので、「縦社会」と考えると、間違って無さそうです。

色々なサイトを見ましたが、「遣」=「軍隊を派遣」は、共通認識だと思いました。

ただ、「辶(しんにょう)」は、「甲骨文字」段階では、存在しないので、
原意が「軍隊」かは、微妙です。

また、「甲骨文字」や「金文」が本当に「又(手)」なのかも、
字形を見ると、微妙と思ってしまいます。

この辺りは、字源辞典で、もう少し、深堀したいと思います。

参照90: 遣: zi.tools

使

参照91のサイトに、字形が載っていますが、「甲骨文字」や「西周の金文」が無く、
「楚(戰國)簡帛上博」から始まっています。

参照92のサイトでは、「史」について、下記の様に書いています。

史官を象徴するある種の道具を手に持ったさまを象る
(具体的な由来は明らかではなく、さまざまな説があるが定説はない)。
「書記」を意味する漢語{史 /*srəʔ/}を表す字。もと「吏」「事」と同一字。

Wiki

上記のように書いていますので、「諸説」が多いのだろうと思います。

そうとなると、「もと「吏」「事」と同一字。」も怪しくなり、
「同じに見えた」、もしくは、「字源が異なるが、字形が同じだった」のどちらかになりそうです。

漢字の字形は、「線一本」、「点1つ」を製作者が、色々と考えて作った字形だと思うので、
基本的に、「字形が同じ」になることはあっても、字形を作った経緯などが異なると思います。

「史」の字源が不詳だと言う事は、「吏」の字源も不詳の可能性があります。

参照91のサイトにある「説文解字」には、「令也」とあります。

参照93のサイトでは、「亼(逆さまの口)」+「卩(人の跪く姿)」、
逆さまの口がひざまずいた人に話す、お告げを聞くこと。」が「令」の字源とあります。

ここからも、「命令されて、目的地に移動して、行動する」のが「使」だと思われます。

参照91: 使: zi.tools

参照92: 史 - ウィクショナリー日本語版

参照93: 令 - ウィクショナリー日本語版

まとめ

この様に、考察しました。

本題の「亦、何(いず)れ之神を使わすが吉」ですが、
もしかしたら、「使うが吉」なのかもと思いましたが、
「天菩比神」は「遣」なので、「使」ではなく、「遣」で良いはずです。

しかし、「遣」ではなく、「使」を使っているのは、少々違和感があります。

そこで、「神」について調べると、色々と異なっていました。

参照94のサイトにある「西周金文西周早期」の字形を見ると、「示」があるように思いますが、
参照95のサイトにある「商金文商」の字形は、「下向きの吹き出し」の様な形に見えます。

これは、場合によっては、「神」の字形ではない可能性があります。

Wikiには、「示」の字源を「先祖の神主(位牌)を象る。」とあり、
今まで考えてきた「生贄(動物)の台」とは、違う字源が出てきました。

でも、この「位牌」を「下向きの吹き出し」の様な形に表したと言われれば、
違和感はありません。

とは言え、多分に、「示」を表しているで問題は無いはずです。

問題は、「申」の字形です。

参照96のサイトにある「西周金文西周早期」の字形と、
参照94のサイトにある「西周金文西周早期」の字形を比較すると、
似て非なるものの印象になります。

なにより、同じ時代で比較しても、異なっているのは、違和感しかありません。

これが単に、書いた人の個人差なのか、それとも、別の字形なのかは、真偽不明です。

多分に解決できませんが、字源辞典で考察します。

参照94: 神: zi.tools

参照95: 示: zi.tools

参照96: 申: zi.tools

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