魔法陣の拘束から脱出する為に、魔族は変身を解いて、本来の姿を現す。
「残念だったね。この姿になった僕は、力の制御が出来ないんだ。
だからこそ、人間の姿で終わらそうとしたんだけどね。自分達で望んだのだから、良いよね?」
「もう、わたし達に希望はないの!?」
〈汝、我を求めよ。〉
「え?あくあ、声が聞こえなかった?」
「うん。直接頭の中に聞こえた。〈汝、我を求めよ〉って」
「(壁に持たれながら立ち上がる)あくあ。私達はここで負けるわけには行かない!
この試練に勝てなくちゃ、みんなとの差が広がる一方。
敵の魔力を打ち消すだけの力が欲しい!!!」
「そうだね。敵を翻弄する力が欲しい!!」
〈我を欲するのならば、我をイメージせよ。さすれば、汝の欲する形になろう。〉
「魔族を倒す為、みんなを守る為に力を貸して!」
「強い敵に立ち向かえる力をちょうだい!」
光が輝き2人を包み込み、輝きが収まると自分の思い描いた装備へと進化した。
「すごい!さっきの装備よりも力が湧いて来るよ!」
「ほんとう!傷も癒やしてくれたみたい。これなら、大丈夫!」
その状況を魔族は見ているが、
自分の優位性が覆ることはないと思って、ゆっくりと2人に近付く。
「ふん。新しい装備になったからと言って、僕を倒せるとでも言うの?」
「あくあはちょっと時間稼ぎお願い。」
「分かった!」
「良いだろう!その希望を僕が砕いてあげるよ!」
余裕を見せる魔族だったが、あくあの攻勢に次第に受け身になり、片膝をつく。
「くっ!本気の僕に片膝をつかせるとはね!こうなったら、最大級の攻撃魔法で、
苦しまずに一瞬で影も形もなくしてあげるよ!(魔力を集める。)」
ところが、魔力を集めようにも集まらない。
「なに?なぜだ!?魔力を一点集中出来ないんだ!?」
「簡単だよ?あくあがあなたと戦っている間、内にある魔力を吸収していたんだから。
今のあなたに残った魔力は全力の1割よ。」
そう。魔族がもう少し、周りの変化を感じていたら、リンネ達の作戦は失敗しただろう。
しかし、魔族は人間は自分には勝てないと思い込んでいたために、
あくあとの戦闘中に、リンネの存在を失念し、リンネは魔族の魔力を吸収する事が出来たのだ。
「おのれ!人間め!ふふふ。しかし!お前達を葬るなら1割で十分だ!
死ねぇぇぇー!(リンネ目がけて走り出す。)」
「どんなに強さを装ったところで、私達を倒すのはもう無理よ。皮肉なものね。
私達を痛めつけた事で、自分が倒されるなんて。さよなら。シャイニング・リング発動」
リンネが、魔法を発動すると、魔族に光の輪が包み込む。
「くっ!なんだ!これは!そうか、分かったぞ!俺の魔力だ!
ならば、吸収して、お前達を葬る事も可能だ!残念だったな!」
「そう思うのなら、吸収して見たら?ねえ?お姉ちゃん?」
「ええ。出来るのならね。」
リンネとあくあは、魔族が魔力を吸収する場面を傍観する。
「くくく(笑)よし!吸収出来ているぞ!がはっ!な・なんだ?どうなっているんだ?」
「何も手を加えていないなんて、ありえないでしょう?
あなたが、そうするだろうと、吸収されたら急所攻撃するように書き換えたのよ。」
「ぐっ、がはっ。そんな!俺が負ける・・な・・ん・・て・・・。」
魔族が力尽きてしまうと、身体は消えて極大サイズの魔石だけが残った。
「はぁぁぁぁ〜!なんとか、勝ったよ!お姉ちゃん!」
「ほんとうにギリギリだったけど、なんとか勝てて良かったわ。
早く、他の人の応援に行かないと・・・。」
喜びあって、次に進もうとする二人にセリナがストップをかける。
「待って下さい!疲労があるでしょうから、少し、休んで下さい!」
「セリナさん。でも・・・。」
「皆さんを信じて下さい。疲労困憊で助けに行っても、共倒れしたのでは意味がありません。」
「お姉ちゃん。セリナさんの言う通りだよ。ここは、少し休憩しよう。」
「ふぅ〜。分かりました。セリナさん。ありがとうございます。みんなを信じて休憩します。」
「そうして下さい。大丈夫。コーヤさんがいるんだから、簡単に負けたりはしませんよ。」
ここに、1つの戦いが終わり、魔族の魔王親衛隊の一角が崩れた。