最終更新日 2022/06/05

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31話 修練の間開放

8月13日(土曜日)

ユヅキちゃんの家を、解体出来るように整理して行く。

「おー!1代限りの男爵って話だったから、
家も土地も小さめかなと思っていたけど、大きいね。」

貴族の土地の考えがあるのか、聞いたところだと200坪近くになるようだ。

ユヅキちゃんが住んでいた建物だけで100坪あり、
畑が3面、20坪未満の物置小屋が敷地内に存在する。

「はい。母から聞いた話ですが、国王様は、父を貴族に取り立てたいと考えていたようです。

しかし、父はその話を断りました。そこで、1代男爵としては、例外として、
この土地と建物を無償貸与する事になったと、母から聞いた記憶があります。」

「なるほどね。と言う事は、建物は昔からあったの?」

「たぶん、そうだと思います。」

「ふむ。まぁ、1部屋づつゆっくりと確認しながら整理して行こう。」

建物を鑑定して見ると、どうやら、200年近く前に建てられ、
当時のウィンサーク国王が任命したフィンテル領主が住んでいたようだ。

現在の領主は、住宅や執務室のある公館等を領主専用の土地に建てて住んでいる。

元領主邸宅は、1階に15、2階に20の合計35部屋あり、他に、団らん室・食堂・執務室が1階、
地下に簡易牢獄16、倉庫2(食用・アイテム)がある。

これらの部屋を、順に見て行き、使えそうなベッドなどは無限袋に収納。

部屋数の多さもあり、休憩を挟んでると、すでに、外は薄暗くなっていたので、
残った部屋は明日にして、この家で宿泊する事にした。

8月14日(日曜日)

ログインしようと用意していたら電話がかかって来た。

「はい、もしもし」

「光矢君?麻蔵(あさくら)だけど、今、大丈夫?」

「はい。問題ないですよ。何ですか?」

「明日、お盆の集まりするんだけど、出れそうかな?」

「何時からですか?」

「一応、午後6時頃を予定しているけど、集まり次第だから早くても問題ないわ。」

「分かりました。緊急の用事もないので行きます。
ただ、もしかしたら、多少、遅れる事があるかもですけど。」

「連絡さえ入れてくれれば構わないわ。じゃあ、明日待っているわね。」

その後、ログインして、昨日の続きをお昼頃まで終了させた。

「ふぅ〜。家の中はこんな感じかな。」

「そうですね。でも、宝があるって話でしたけど、それらしいのは無かったですね。」

「確かに。う〜ん。どこかに隠されているのかな?」

「どうなんでしょう?」

「せっかくだから、魔法で解除しよう。
無ければ無いで、良いわけだし。シークレット解除。」

魔法を発動すると、家の6箇所から反応があった。

しかし、調べて行くと、3箇所だけが本物で、3箇所はフェイクで偽物だった。

「さて、2階に隠された部屋から調べて行こうか。」

「子供の頃、遊んだりしてましたけど、隠された部屋があるなんて知りませんでした。」

「簡単に見つかったら意味ないからね。」

中に入ると、机だけの小部屋になっていて、机には、魔法袋と手紙が置かれていた。

「これは、ユヅキちゃんのお母さんが書いた物みたいだ。」

「これは。でも、こんな部屋をいつの間に。えーと(手紙を読む)」

「う〜ん。他には何も無さそうだ。」

僕は、ユヅキちゃんが手紙を読んでいる間に、
部屋の中を鑑定したり、仕掛けがあるか調べてみるが、何も無かった。

「コーヤさん。手紙には、犯人の行動が書かれていて、自分達に危険が迫っている事、
わたしの今後の事を心配する事が書かれていました。
あと、男爵位の返還も考えていたようです。」

「そうか。あの男達は、返還されたら困るから凶行に出たわけだ。」

「はい。そのようです。」

「僕は、1階の隠された部屋に行くけど。ユヅキちゃんはここで手紙読んでる?」

「いいえ。手紙はあとでも読めますから。下に行きましょう。」

次の部屋は、1階に降りて正面玄関真向かいの壁に隠されていた。

「いや〜。この扉は立派だね。」

「本当ですね。これは、元領主邸宅時代のですよね。」

扉を開けて中に入ると、壁には武器が飾られていて、武器の下には防具が置かれ、
木の棚にはアクセサリー系、机には、魔法の袋があり、凄いとしか言いようが無かった。

「扉もすごいけど、部屋の中もすごいね。」

「本当ですね。この部屋はなんで隠したんでしょうか?」

「う〜ん。この場所からすると、緊急事態の時に、ここから持ち出す為に作ったのかな。
解除されていなかったから、戻って来る事が出来なかったのかも知れない。
しかし、これを放置して置くと面倒事が起きそうだから、回収しよう。」

ヴィオさん達に見て貰うた為に、ドローンで撮影し、部屋の物を全て回収した。

元フィンテル領主邸宅で見つけた品は以下の通り。

地下室アイテム倉庫:

ポーション類460本、魔石(中2が45個、中5が62個、大2が30個、極10個)計147個


地下室食材倉庫:食材1500キロ

※時間停止の魔法がかかった各魔法袋(大)に収納されていた。


元フィンテル領主邸宅の団らん室・食堂の家具・設置物、執務室の設置物


玄関正面にある隠された部屋:

各種防具、一式防具、武器(メジャーな10種)、アクセサリー(通常・特化)、
ポーション(体力・魔力・状態異常)、食料(魔法袋(大)に収納)、各種素材、その他

そして、最後の場所である正面玄関に開いた地下への階段前に戻って来た。

「これは、2つとは違うようだけど、地下には何があるのか。」

「まさか、また、何かが封印されていたりとかは・・・。」

ユヅキちゃんは心配そうな顔をしている。

「考えたくはないけど、可能性はあるかも知れない。慎重に進んで行こう。」

地下へと続く階段に足を踏み入れると、暗闇だったのが明るくなった。

「これは、壁に細工でもしているのか?」

「でも、不思議ですね。なんだか、嫌な感じがしません。」

修練の間

2階分程の階段を降りると、重厚な扉があり、開けると中は明るくなっていた。

中に入り見渡すと、部屋の中心部には装置があり、
近くには楕円形の形をした物が置かれていた。

僕達が物珍しさに驚いていると、1人の女性が現れた。

「ようこそ。修練の間へ。」

「え?修練の間?」

「そうです。ここは、スキル全般を修練し、多くの経験をして貰う場所となっています。」

「そんな場所があったなんて・・・。」

「とは言え、必要とされなくなって久しいですが。」

女性は、寂しそうに話す。

「えっと。名前を教えて貰えますか?」

「私は、キシアと言います。」

「キシアさんは、外の事、どれだけ知っているんですか?」

「外の事は分かりません。来客があれば知らせが来ますし、
長期間来なければスリープモードに移行します。」

「そうですか。でも、これから、多くの人がここにやって来ますから、忙しくなりますよ。」

「本当ですか?それは良かったです。お2人は設備を使って行きますか?」

キシアさんは、寂しそうな顔から嬉しそうな顔へと変わった。

「ユヅキちゃん、せっかくだから使っていこうか?」

「はい。何のスキルが良いでしょうか?」

「建築にしよう。これから、色々と使いそうだし。」

僕達は、試しに〈建築〉の簡単で修練して見た。

システム

システムは簡単で、取得もしくはレベル上げしたいスキルを選択し、
簡単・普通・難しいのランクを選んで、修練場に移動するだけ。

ちなみに、所要時間は、簡単は3時間、普通は7時間、難しいは12時間。

この修練の間では、中断する事が可能になっている。

中断したら、次回は続きから再スタートする事が出来るが、
中断時間が長ければ長いほど、隠れメーターの〈慣れ〉の数値が下がる。

〈慣れ〉の数値が上がれば、クリティカル(経験値2倍)になる確率も当然上がる。

他に、スキップや自動設定も可能。

スキップは、残り時間の平均経験値の8割を取得出来るが
〈慣れ〉メーターは初期化される。

自動は、変更前のクリティカル率が50%未満は、10%加算、
〈慣れ〉メーターは、変更前数値を1時間は固定、その後は緩やかに下がる。

修練場では時の流れを変化させているようで、所要時間は3時間だが、
修練場では3日だった。

僕達は、無事に建築スキルを取得出来て、レベルも5に上がっていた。

クリティカルが多かったのと、発見者ボーナスが加算されていた為みたいだ。

後になって知った事だけど、
スキル使用時にクリティカルになると、経験値が2倍になるらしい。

ただ、報告書で分かるだけで、その場で知る事が出来ないから、対策は出来なさそう。

この後、修練の間から出て、建物をスキルで解体したが、
さすがに修練の間を吹きさらしにしておくのは問題なので、平屋の建物を建築。

野菜などの収穫品を魔法袋に入れて、
薄暗くなりかけていたから、まず、ヴィオさんに連絡。

「いや〜。コーヤ君の行くところで色々見つかるね。」

ヴィオさんが到着し、状況説明すると、このように言われた。

「別に狙っているわけではないんですけど(苦笑)」

「まぁ。そう言う星の下に生まれたんだろうね。しかし、スキルの修練か。
僕達騎士団でも可能なんだろうか?」

「そこは、確認して見ないと分かりませんけど。」

話をしていると、ルクウェルさんが到着した。

「おー!これは、面白い!この様な所が隠されていたとは。」

「や〜。ルクウェル早かったね。」

「話を聞いたら面白そうだったからな。コーヤ。説明を頼む。」

状況説明と録画した正面玄関真向かいの部屋を見せる。

「なんと。これは素晴らしい。青白い光を放っている装備が多いから、
なにかしらの魔法がかかっていそうだ。」

「はぁ。僕達にもこれだけの装備があれば、もう少し、色々な訓練が出来るんだが。」

「じゃあ。騎士団にダンジョン産とか、他にも手に入れた装備で、
使わないのがあるので、差し上げますよ。」

「コーヤ君?本当に良いのかい?」

「ええ。フィンテル騎士団が強くなれば、結果的に多くの人が助かりますし、
何より、倉庫に眠らせて置くのは勿体ないので、皆さんに、使ってもらえれば。」

「ありがとう。とは言え、コーヤ君の事だから、数は相当だろう。今度、相談しよう。」

「コーヤ。冒険者ギルドでも高く買い取るから持って来てくれ。っと、
さて、修練の間に行って見るか。」

僕達は、2人を案内して、修練の間に入った。

「ようこそ。修練の間へ。」

「キシアさん。今後、お得意様になりそうな人達を連れて来ましたよ。」

「ありがとうございます。」

「キシアさん。初めまして。僕はフィンテル騎士団団長のヴィオと言います。
僕達でも、問題無く修練出来ますか?」

「はい。大丈夫です。」

「早速、ヴィオさんもルクウェルさんも試して見たらどうですか?
今日はお試しですぐにスキップすれば、時間はそんなにはかからないと思いますよ。」

「そうだね。団員に説明する時に困るし。」

「俺も、問題ない。」

2人は、スキルを選び、修練場に入って行った。

10分位で出て来たが、2人は興奮したようにはしゃいでいた。

国王様へ知らせるのは明日にして、僕達は解散した。

隠し部屋の品物は、後日の話し合いにより、
装備類(魔法付き)とポーション(玄関正面)は冒険者ギルドが、
ポーション(地下室)は騎士団に分配され、
その他の食料や素材などは、僕がそのまま貰う事になった。

その後の調査で、装備類の強さは、
黒装備とダンジョン産の間で、魔法で強化された装備も超える事は無かった。

《プレイヤーの皆さんへお知らせです。
只今、フィンテルにて修練の間が明後日より開放されます。
スキルを修練する場となっていますので、多くの方のご利用お待ちしています。》

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