最終更新日 2022/06/05

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33話 親戚の集まり

時間は午後2時近くになっていた。

「そうだ。ユヅキちゃんには、言っておかないとと思っていたんだけど。
僕は、この世界の人間では無いんだ。」

「知っていました。」

ユヅキちゃんは、何を今更と言った感じだった。

「え!?知っていたの?何時から?」

「元からです。

母が、違う世界から来た冒険者と仲良くなった時に、打ち明けて貰ったと言っていました。

だから、小さい時から、その話を聞いていたので、コーヤさんが活躍しているのは、
わたし達とは違うからだろうなぁと思っていたんです。でも、なぜ?今なんですか?」


ほころび

実は、運営の技術者チームは、ユヅキが驚く様にプログラミングしていた。

ところが、驚くのではなく、母から聞いていたと答えた。

この時点では、小さな力だが、未知の力がゲーム世界へ干渉を始めていたのだ。

この事が、将来に大きな事件を引き起こす事になるが、誰も知る由もない。


「そっかぁ。知っていたか。

今になったのは、これから、元の世界に戻る機会が多くなりそうだからなんだ。」

「あの。こちらには戻って来ないんですか!?(うるうる)」

ユヅキちゃんは、今にも泣き出しそうになっている。

「違う!違う!この拠点でもまだまだする事が多いし、今後、鍛冶とか錬金もしたいからね。

でも、元の世界では、僕は学校に通う学生だから、今の様に時間が取れなくなってしまう。
そこで、今のうちに話しておこうと思ったんだ。」

「そうだったんですね。だったら、仕事教えて下さい!
コーヤさんが不在の時は、わたしが出来るところ頑張りますから!」

「うん。それは、お願いしようと思っていたんだ。

それで、時間が取れる間に、互いに連絡を取れる仕組みを作ろうと思っているんだ。
最悪の場合も、指示出しだけは出来るようにしておきたいからさ。」

「はい。確かに、まだ、分からない事が多いので助かります。」

「うん。今日は午後5時半頃に戻るから、
その間に、研磨を覚えて貰って、少しずつで良いから、鉱石磨いておいてくれる?」

「はい!大丈夫です!任せて下さい。」

戻る時間までの3時間で、研磨を覚えて貰って、ユヅキちゃんに任せて、
現実世界に戻って、午後6時10分頃、麻蔵邸に到着した。

麻蔵邸

「こんばんは。あ〜。もう、出来上がっていますね。」

僕が麻蔵邸に到着し、リビングに行くと、既に出来上がった飲ん兵衛が2人いた。

「いらっしゃい。そうなのよ(苦笑)5時頃から始めちゃって。」

飲んでいるだけの大人組とは違って、子供組は元気だ。

「お兄ちゃん!いらっしゃい!こっちこっち!(手招き)」

「美羽ちゃんは相変わらず元気だね。秋穂お姉ちゃん。久しぶり。」

空いている場所に座る。

「お正月は、戻れなかったから、1年ぶりね。高校はどう?」

従姉の秋穂お姉ちゃんは、2歳差で今年から、
隣の市にある大学に通っていて、寮住まいしている。

ここで、簡単に親戚の構成を書くと以下の様になる。

母(水晶沙苗)─水晶光矢

麻蔵香住────美羽・羽衣

橘義隆─────秋穂

橘道之─────歌夜・鷹夜

今回の出席者は、上記の人数だけど、あと数名いとこがいるが、男性は少ない。

ちなみに、父の家の親戚とは、付き合いがなく、ほとんど逢った事がない。

「楽しんでいるよ。話をする仲間もいるし。」

「ねえねえ。お兄ちゃんはVRゲームしていないの?」

美羽ちゃんが、聞きたくてうずうずしていたのか、質問して来た。

「VRゲーム?タイトルは?」

「Infinite Alternative world(インフィニティ オルタナティブ ワールド)だよ。」

「ああ。TVCMで頻繁に流れているゲームね。」

「うん。歌夜(かよ)ちゃんも鷹夜(たかよ)ちゃん達もしているんだって。
お正月の集まりでも話に出ていたから、お兄ちゃんも始めたのかなって。」

「始めてまったり遊んでいるところだよ。」

「でも、光ちゃん、伯母さん達の遺産にも出来るだけ手を付けない様にしていたのに。
私もしているけど、結構高額よ?どうしたの?遺産で買ったの?」

「いや。貰ったんだ。(事情説明)」

「お〜!さすが、お兄ちゃん!」

「ほう。人助けとは、義姉も喜んでいるんじゃないか。(ぐびっ)」

香住(かすみ)叔母さんの旦那さんが、飲みながらそんな事を話す。

「お姉ちゃんも足速かったし、受け継いだのかもね。
それに、今年は、10周忌だし、力を貸してくれたかも知れないわ。」

香住叔母さんも、昔を思い出したのか、昔の母について話し出す。

「え?そうなんですか?」

「そうよ。お姉ちゃん、体育祭のリレー選手でアンカーした事もあるんだから。」

「全然知りませんでした。」

香住叔母さんが、料理を運ぶ為に席を外すと、秋穂お姉ちゃんが聞いて来る。

「光ちゃん。それで?いつから始めたの?」

「準備完了が7月26日で、ゲーム開始したのは次の日の27日から。」

「そっかぁ。光ちゃんの現在地はどこ?あと、パーティーとかクランに入ったりしてるの?」

「ぜんぜん。まだ、フィンテルの街でまったり遊んでいるかな。」

「え!お兄ちゃんあの街にいたの?ぜんぜん、会わなかったけど。」

「まぁ。あの街結構広いし、会わなくても不思議でもないと思うけど?」

「じゃあじゃあ!神殿に出来た魔獣退治とか、スキルアップ出来る修練の間とか経験した?」

美羽ちゃんが立て続けに聞いて来る。

「魔獣退治はダンジョンには潜っていたけど、あんまり、レイドボス戦には参加しないで、
創った魔法の実験で最深部に行ったくらい。修練の間は色々と訳ありだけど体験はしたよ。」

「うん?光ちゃん。魔法創ったの?どんなの?」

「今のところは、3個かな?1つ目は、ドローン飛ばして画面で見る感じのを。
次が、武器にダメージ強化、最後は、後衛の所持魔法のレベルを一時的に上昇だね。」

「へえ。なかなか。良いじゃない。スクロール売らないの?」

「え!?欲しいの?魔力結構使うよ?」

「どのくらい?」

「2番目のダメージブーストと言う魔法は、維持出来る時間が5分で、魔力は300。
3番目のアシストブーストと言う魔法は、維持出来る時間が20分程で、魔力は500。」

「確かに、多くの魔力を使うかも知れないけど。でもさ。別に常時使うわけじゃないし、
切り札的に使えれば有効だと思うよ。値段は?それと、最初のは?」

「最初のは、回りの魔力を吸収する様に改造したから、使用者の負担はほぼゼロ。
あと、値段は良く分からないんだよね。」

「最初のなんて、偵察にもってこいだよねぇ。」

「わたし達も、安ければ買いたい!」

歌夜(かよ)ちゃんと鷹夜(たかよ)ちゃんも話に入って来る。

「値段としては、1番目がアイテム込みで金1枚、2番目と3番目は金2枚でどう?」

「秋穂お姉ちゃんので、悪くないと思う。歌夜ちゃん達の財力は?」

羽衣ちゃんは妥当と思ったようで、歌夜ちゃん達に財力を聞く。

「う〜ん。わたし達は、
1日4時間しかさせて貰えないから、使えるお金は2人で金2枚だと思う。」

「なに、言ってるの!?制限かけなきゃ、宿題せずに遊んでいるんでしょ?」

ここで話を聞きつけた、
歌夜ちゃんと鷹夜ちゃんのお母さんの矢宵(やよい)叔母さんが口を挟んで来る。

「まぁ。体験していない人からしたら、遊びとしか思わないよなぁ。(苦笑)」

「本当ね。理解していない人もいるからね(苦笑)」

僕と秋穂お姉ちゃんが苦笑した事に、矢宵(やよい)叔母さんが抗議するように口にした。

「な〜に?あなた達は、娘の味方するの?」

「そう言うのじゃなくて、叔母さん、意外に社会勉強になるのよ?ねぇ?光ちゃん?」

「宿題しないのは感心しないけど。

このゲームのAIは素晴らしくて、プレイヤーと同じ動きが出来るんです。

だから、店の人を怒らせたりすると出禁になるだろうし、
店を経営すれば、税金が取られるから、計算力が鍛えられます。

つまり、現実世界と同じ事を体験出来るんです。

ゲーム世界で経験した事は、現実世界で役立つので、無意味ではないですよ?」

「本当かしら?」

どうやら、矢宵叔母さんは、
ゲームを好ましく思っていないようで、疑心暗鬼になっている。

「矢宵(やよい)さん、光矢君達の言っている事は本当よ。」

「香住お義姉さん。」

「私もね。昔からゲームが好きでね。

子育てとかあって離れていたんだけど、TVCMで心躍って、
出水(いずみ)の使っている本体に、自分用のヘッドギアを買って、
ゲーム内に入ると、全く違っていたわ。

現実世界との違いは、作られた世界だと言うだけで、
特技があるなら伸ばしても良いし、逆に進路に悩んでいるなら、将来が見つかるかも知れない。

だからね?制限も大事だけど、子供に責任を持たせるのも親の務めだとと思うわ。」

「う〜ん。でもねぇ。」

どうやら、香住叔母さんの言葉でも、まだ、完全に納得出来ていないようだ。

ちなみに、出水(いずみ)ちゃんは、美羽・羽衣ちゃんの2歳下の13歳(中学二年生)で、
昨日から学校主催の臨海学校に行っているので、親戚の集まりは欠席。

「まぁ。こういうのは、実際に自分の目で見ないとダメだろうから。」

僕は、ゲームサイトにアクセスして、
自分のフォルダーにある、映像や写真をテレビ画面に出力する。

「まずは一枚目。フィンテルの東地区から行ける岩壁からの映像。」

「きれいな夕焼けね。そんな所があったのね。光ちゃん、どうやって見つけたの?」

秋穂お姉ちゃんは、どうやって見つけたか、気になったようだ。

「うん?ああ。これは。初日に冒険者ギルドで登録して、持ち物の確認の為に
静かな所が無いかって思って、西門の門番の人に聞いたら、普通に教えてくれたよ。」

「う〜ん、その考えは無かったわね(苦笑)」

次にエリシアさん救出作戦の時の映像を流す。

「お兄ちゃん。これって、東地区だよね?」

美羽ちゃんは行った事があるようだ。

「そう。

事件解決しているから言うけど、ゲーム時間で2年前に、王族のエリシアさんが
誘拐されて行方が分からなかったんだ。

偶然手に入れたアイテムから推測して、
東地区に監禁されているのでは?って話になってね。それで、ドローンを飛ばしたんだ。」

「なるほど。

見張りとしてドローンを飛ばして、犯人を特定し、お兄ちゃんが事件を解決したんだ。」

羽衣ちゃんは、納得した顔でうんうんと頷いている。

「はぁぁ。なるほどね。この映像を見ると、本当にゲーム世界かって思うわね。

私の親がゲーム大嫌いな人で、自分の収入でゲームを買いなさいって言われていたのよ。

結局、ほとんどゲームする機会が無かったけど、すごい進化しているのね。」

そこで、2人の娘に向き直る。

「あなた達が熱中するのが分かったわ。

しかし、今している勉強は今後活きて来るのも、また事実よ。

だから、ちゃんと夏休みの宿題片付けて、
今後、成績を現状維持以上に出来ると約束するなら、
夏休みと休日は、8時間まで。平日は10時まで。どう?出来る?」

「(2人)はい!やります!(敬礼!びしっ!)」

「分かったわ。やって見なさい。ただ、冬休みの成績次第では元に戻すからね。」

「(2人)頑張る!!!」

話が一区切り付いたと思ったのか、秋穂お姉ちゃんが話題の軌道修正をした。

「さて。話を戻そうか。光ちゃんは、これからも魔法創っていくの?」

「う〜ん。別にそれだけをしようとは思っていないけど。
鍛冶・錬金・調薬とかもして見たいし。」

「光矢お兄ちゃん。さっき、修練の間を訳ありで体験したって言っていたけど、なあに?」

鷹夜ちゃんが質問して来た。

「ああ。実は(事情説明)って訳で、偶然見つけたんだ。」

「へぇ〜。お兄ちゃん良く見つけたね。わたし達なら見逃してそうだね。羽衣。」

「うん。そう言う考えが無いしね。ユヅキって娘はお兄ちゃんと行動を一緒にしているの?」

「そうだよ。なんか、懐かれちゃってね。」

「光ちゃんらしいね。でも、NPCの娘を助けると良い事あるんだね。
と言うか。そんな、サブクエストあるなんて考えてもいなかったよ。」

「わたし達も。羽衣、サブクエスト探しながらにしようか。」

「うん。もしかしたら、手助けを待っている人がいるかもしれないし、
これからは、頭に入れて行動しよう。」

次の話題に移った。

「あとは、体力と魔力どのくらい?1ヶ月くらいなら1000超えた辺りかな?」

「いや?確か、体力が28000、魔力が30000だった筈。
ちなみに、ユヅキちゃんも体力35000、魔力20000だったと思うよ。」

「ちょ!ど・ど・どう言う事!?」

ゲーム組はびっくりしている。

「お兄ちゃん!どんな方法使ったの!」

「まさか。データ改ざん・・・。」

羽衣ちゃんが、とんでも無い事を言い出す。

「違うから!私利私欲の限りを尽くした老人党とは違うから!
当然の事をして、上げただけだよ。」

「じゃあ。光ちゃん?どんな方法を使ったの?」

「どんな方法もなにも、神殿のダンジョンを1階から100階まで、
休憩も混じえて行き来しただけ。」

「え。ちょっと待って。あのダンジョンって50階で終わりじゃないの?」

どうやら、50階で終わりって認識だったようだ。

「わたし達も50階まで行って、レイドボス部屋に行っていたけど。ねえ?羽衣?」

「うん。みんな、そう言う方法でしかボス部屋に行っていなかったから、
51階より下の事なんて考えた事も無かった。」

「みんな良いなぁ。わたし達は、イベントに参加出来なかったんだよねえ。
ネットではすごく良い装備品を手に入れたってあったけど。」

そんな中、ダンジョン産の装備品を手に入れられなかった
歌夜ちゃん鷹夜ちゃんが美羽ちゃん達を羨ましく思っていた。

「うん。ダンジョン産の装備品のおかげでポイント稼ぐ事が出来た。」

「う〜〜。良いなぁ。売ってないかな?」

そこへ、秋穂お姉ちゃんが助け舟を出す。

「2人共、そんなに悲観する事無いわ。今なら、ダンジョンでランダムBOX手に入るし、
店でも多くの人が売った装備品売っているだろうし、まだまだ、挽回出来るわ。」

「そうなんだぁ。鷹夜!頑張ろう!追いつけ追い越せだよ!」

「うん!」

2人はまだ、挽回出来る事を知って、元気になった。

秋穂お姉ちゃんは、他の人の会話中、
51階への入り口を考えていたようだけど、分からないみたいだ。

「光ちゃん〜。それで、51階の入口ってどこにあるの?」

「あれ?見えていなかった?転送機より奥にあるんだけど。」

「えー。そんなのあったかなぁ。まぁ。いいや。
じゃあ、51階以下は魔石の大きさが大きくなるのね?」

「うん。今も同じかどうかは分からないけど、僕達が潜っていた時はそうだったよ。

戦った感覚では、50階までが初心者、51階〜70階までが中級者、71階〜99階が
上級者って感じかな。99階の敵はアースドラゴンだったよ。」

「え!?お兄ちゃん!ドラゴンが出るの!?素材は!?」

美羽ちゃんが勢い良く聞いて来る。

「レアは出なかったよ。ドラゴンとはいっても、鑑定すると弱だったから、
運営としたら、ケルベロスに向けての簡単な模擬戦をして貰う感覚かも知れないけど。」

秋穂お姉ちゃんが、何か考えながら聞いて来た。

「光ちゃん。そのドラゴンは体力や強さとか、教えて貰って良い?」

「う〜ん。本来なら自分でなんとかして貰いたいんだけど(苦笑)
特別でヒントを教えるよ。(アースドラゴン戦の映像をテレビ画面に流す)」

「(画面を見ながら)なるほど。
地味に嫌な攻撃もして来るんだ。お兄ちゃんは何回で勝ったの?」

羽衣ちゃんは、自分達が戦う時をイメージしているようだ。

「2回目だったかな。映像では分からないと思うけど、違和感があって、
対策の為に考えつく方法を試したら、その方法を使えば勝てたよ。」

「(映像を見ながら)鷹夜。これ。わたし達2人で勝てると思う?」

「無理な気がする(落胆)あ!でも、光矢お兄ちゃんが作った、
オリジナル魔法使えば、可能性があるんじゃない!?」

「光ちゃん。そこの所はどうなの?」

「う〜ん。実は各一回しか、他のプレイヤーに試していないんだよね(苦笑)」

「!?お、おにいちゃん!それって、私達かも!」

羽衣ちゃんは、何かに気付いたようで、前のめりになって聞いて来た。

「羽衣、落ち着いて(苦笑)お兄ちゃん。
ケルベロスの一つの首を切り落とす手伝いしていない?」

「(少し、考えて)ああ(ぽん)ユヅキちゃんと一緒にテストするプレイヤーを
探していたんだけど、その時、首に乗って攻撃しているのを発見して使ったんだ。
なるほど。あれは羽衣ちゃんだったのか。」

「やっぱり。色々と考えて、もしかしたらお兄ちゃんかもって思っていたから。」

「羽衣は、ずっと考え込んでいたからね(苦笑)
じゃあ。わたし達の後衛組に魔法かけたのもお兄ちゃん?」

「(当時を思い出しながら)あれは、多くの人が撤退する中、
首を切り落とす為に苦戦していたから使ったんだ。」

「それなら、2つとも私達のクランの可能性が高い。
掲示板とかでも話題になっていないし。」

「うん。今日来ようか考えていたんだけど、重要な情報が光ちゃんから聞けたから良かったわ。
早速、明日から試して見るわね。」

そうして、お互いに情報交換して、時間は過ぎて、お盆の集まりはお開きになった。

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