8月20日(土曜日)
明日の露天での値段設定に困ったので、市場価格の調査の為に、市場にやって来た。
「へ〜。結構、繁盛しているんだ。」
閑散としているかと思っていたけど、多くの人で溢れていた。
色々な店を見ながら、歩いていると、声を掛けてくる人がいた。
「ねぇ。そこのお兄さん。見て行かない?」
その店では、主に、装備品と言うよりは、ポーションなどの消耗品を売っていた。
「あ。状態異常回復ポーション初めて見ました。」
売り子のお姉さんは、苦笑いを浮かべながら話し始めた。
「そう?まぁ、この初心者エリアでは、本来必要ないんだけどねぇ。
神殿の地下ダンジョンが残ったから、売れたら良いなぁってね。」
鑑定すると、この店で売っている状態異常回復ポーションは、
ダンジョン産ではなく、手作りなようだ。
「なるほど。僕もダンジョン行って見ましたけど、状態異常系の攻撃があるようなので、
需要はあると思いますよ。」
「ありがとう。わたしは初期からいるけど、あなたは、見た事ないわ。後発組?」
「ええ。夏休みに入って、偶然手に入ったので始めたんです。
マイペースに楽しんでいるところですよ。(にっこり)」
「それは、ラッキーだったわね。見たところ生産系かしら?
もし、そうなら、良い物が出来たら、持って来てくれれば、買ってあげるわ。」
「本当ですか?すごく、助かります。
最近慌ただしくて、ゆっくり出来なかったんですが、
これから、生産系の作業で出る品も2人で消費するのは大変なので。」
そんな事を話しながら、お姉さんから価格の付け方とかを聞いたり、
他の店で情報収集した後は、拠点に戻り、明日の準備をしてログアウトした。
8月21日(日曜日)
今日はいつもよりは早めにログインして、噴水広場に露店を出す準備をする。
準備中の立て札がある為か、チラチラとこちらを見ている人が多くいる。
看板には、
『ダンジョン産装備品使用しない物を売ります。670個限定!売り切れ御免!』
と書く。
「ユヅキちゃん。そろそろ、10時だから始めようか?」
「はい!」
時間が過ぎて、現在、2時間経過して12時でお昼時。
売れ行きは順調で、このまま行けば、2時頃には完売しそうだ。
「コーヤ君。お疲れ様。」
「ヴィオさんもお疲れ様です。どうですか?」
「ああ。さっき団員から集会を開いていると言う情報が入った。
上手く僕達の作戦通りに行っているようだよ。」
「では。あと、もうひと押しですね。」
「ああ。それじゃ。頑張って。」
そして、午後2時半頃になると、徐々に人通りが少なくなって来た。
「コーヤさん。そろそろ閉めましょうか。」
そんな時に、チンピラ5人が絡んで来た。
「おうおう。兄ちゃん。誰の許可でここで商売してるんだ!?」
「なんですか?ちゃんと、国王様の許可書もありますよ?」
「ははは(大笑い)おいおい、お前みたいな小僧に許可書なんて出すわけ無いだろ!
お前の言った許可書を出して見ろ!俺達が調べてやる。」
「意味の分からない事を。これですよ(許可書を差し出す)」
「(受け取った許可証を見て)ボス!やっぱり、こいつ、嘘ついてやがった!」
「そうだろうよ!(ビリビリに破く)これで、お前が証明する物は無くなったぜ。
売上金全て渡すんなら、今回は国王様へ報告しないで置くぞ。」
どうも、このチンピラ達は、本当に新許可証を知らないようで、
躊躇なく新許可証を破り捨ててしまった。
「なぜ?証明する物が無い事と、あなた達に売上金を渡す事はイコールでないですよ?
もし、差し出すんなら、フィンテルの領主に対してですよ。」
許可証を破くという脅しで、僕が怯むと思っていたようだが、
僕が怯まずに言い返したので、逆ギレした。
「てめぇ。ふざけた事を!」
そこへ、ヴィオさんが到着する。
「はいはい。そこまでだ。噴水広場が騒がしいと通報を受けて来たんだ。何があったんだ?」
「あんたは、フィンテル騎士団長。こいつが国王様の名を使って証明書を偽造していたんだ。
だから、俺達が調べていたんだよ。」
「へぇ〜。偽造をね。君達の足元に散らばっているのが、それかい?見せてくれ。」
団員に破かれた新許可証を集めて貰い、手にとって確認する。
「なぜだ?調べなくても分かるだろ?」
「確かに調べなくても分かるさ。しかしね、何事にも証拠が必要なのさ。」
「(破かれた新許可証を見て)なるほどね。
ちなみに、君達は国王様の印を知っているかい?」
「ああ。当然だろ。ほら、ここに正しい証明書がある。」
チンピラ達は、平然と旧許可証を見せる。
「もう1つ聞いて良いかな?
数日前に、各街の商売主に通達があった筈なんだが知らないかな?」
「ああ。何か、来ていたようだが、まだ、見ていないなぁ。なぁ?」
「ええ!」
これで、自分達の不正を告白したので、騎士団がチンピラ5人を捕縛する。
「じゃあ。自己責任だから、どうしょうもないね。この5人を捕縛して。」
「(騎士団員)はっ!」
「ちょっと待て!なんで俺達が捕まるんだ!!不正は小僧の方だ!!」
どうも、チンピラ達は自分達がした事を理解していないようだ。
「残念ながら違うね。国王様は商売する人への許可印を変更したんだよ。6日前にね。
緊急通知として発送し、昨日までに王宮に行って手続きしなければ無効だったんだ。
つまり、君達が破いたのは、正真正銘の本物なのさ。分かったかな?」
「そんなバカな!」
「まぁ。別に理解しなくても構わないよ?君達は、国王様が発行した許可証を破いた。
当然、その様な事をした場合の罰則を知っているよね?」
「知らん!」
「じゃあ。教えて上げるよ?侮辱罪で強制労働だ。
どこの場所になるかは、国王様次第だけどね。 詰め所に連行して。」
「はっ!キリキリ歩け!」
「ふぅ。なんとか上手く行ったみたいだねぇ。」
僕は、気になった質問をする。
「他の地域の人達はどうなったんですか?」
「その点は問題ないよ。王宮または近くの領主で、新しい許可書の手続きをすれば良い。」
「なるほど。あとは、先程のチンピラを雇った店がどう出るか。」
「一応は、正面と裏を張り込みさせている。」