最終更新日 2022/06/05

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36話 露天販売と囮

8月20日(土曜日)

明日の露天での値段設定に困ったので、市場価格の調査の為に、市場にやって来た。

「へ〜。結構、繁盛しているんだ。」

閑散としているかと思っていたけど、多くの人で溢れていた。

色々な店を見ながら、歩いていると、声を掛けてくる人がいた。

「ねぇ。そこのお兄さん。見て行かない?」

その店では、主に、装備品と言うよりは、ポーションなどの消耗品を売っていた。

「あ。状態異常回復ポーション初めて見ました。」

売り子のお姉さんは、苦笑いを浮かべながら話し始めた。

「そう?まぁ、この初心者エリアでは、本来必要ないんだけどねぇ。
神殿の地下ダンジョンが残ったから、売れたら良いなぁってね。」

鑑定すると、この店で売っている状態異常回復ポーションは、
ダンジョン産ではなく、手作りなようだ。

「なるほど。僕もダンジョン行って見ましたけど、状態異常系の攻撃があるようなので、
需要はあると思いますよ。」

「ありがとう。わたしは初期からいるけど、あなたは、見た事ないわ。後発組?」

「ええ。夏休みに入って、偶然手に入ったので始めたんです。
マイペースに楽しんでいるところですよ。(にっこり)」

「それは、ラッキーだったわね。見たところ生産系かしら?
もし、そうなら、良い物が出来たら、持って来てくれれば、買ってあげるわ。」

「本当ですか?すごく、助かります。
最近慌ただしくて、ゆっくり出来なかったんですが、
これから、生産系の作業で出る品も2人で消費するのは大変なので。」

そんな事を話しながら、お姉さんから価格の付け方とかを聞いたり、
他の店で情報収集した後は、拠点に戻り、明日の準備をしてログアウトした。

8月21日(日曜日)

午前10時

今日はいつもよりは早めにログインして、噴水広場に露店を出す準備をする。

準備中の立て札がある為か、チラチラとこちらを見ている人が多くいる。

看板には、

『ダンジョン産装備品使用しない物を売ります。670個限定!売り切れ御免!』

と書く。

「ユヅキちゃん。そろそろ、10時だから始めようか?」

「はい!」

時間が過ぎて、現在、2時間経過して12時でお昼時。

午後12時

売れ行きは順調で、このまま行けば、2時頃には完売しそうだ。

「コーヤ君。お疲れ様。」

「ヴィオさんもお疲れ様です。どうですか?」

「ああ。さっき団員から集会を開いていると言う情報が入った。
上手く僕達の作戦通りに行っているようだよ。」

「では。あと、もうひと押しですね。」

「ああ。それじゃ。頑張って。」

午後2時半

そして、午後2時半頃になると、徐々に人通りが少なくなって来た。

「コーヤさん。そろそろ閉めましょうか。」

そんな時に、チンピラ5人が絡んで来た。

「おうおう。兄ちゃん。誰の許可でここで商売してるんだ!?」

「なんですか?ちゃんと、国王様の許可書もありますよ?」

「ははは(大笑い)おいおい、お前みたいな小僧に許可書なんて出すわけ無いだろ!
お前の言った許可書を出して見ろ!俺達が調べてやる。」

「意味の分からない事を。これですよ(許可書を差し出す)」

「(受け取った許可証を見て)ボス!やっぱり、こいつ、嘘ついてやがった!」

「そうだろうよ!(ビリビリに破く)これで、お前が証明する物は無くなったぜ。
売上金全て渡すんなら、今回は国王様へ報告しないで置くぞ。」

どうも、このチンピラ達は、本当に新許可証を知らないようで、
躊躇なく新許可証を破り捨ててしまった。

「なぜ?証明する物が無い事と、あなた達に売上金を渡す事はイコールでないですよ?
もし、差し出すんなら、フィンテルの領主に対してですよ。」

許可証を破くという脅しで、僕が怯むと思っていたようだが、
僕が怯まずに言い返したので、逆ギレした。

「てめぇ。ふざけた事を!」

そこへ、ヴィオさんが到着する。

「はいはい。そこまでだ。噴水広場が騒がしいと通報を受けて来たんだ。何があったんだ?」

「あんたは、フィンテル騎士団長。こいつが国王様の名を使って証明書を偽造していたんだ。
だから、俺達が調べていたんだよ。」

「へぇ〜。偽造をね。君達の足元に散らばっているのが、それかい?見せてくれ。」

団員に破かれた新許可証を集めて貰い、手にとって確認する。

「なぜだ?調べなくても分かるだろ?」

「確かに調べなくても分かるさ。しかしね、何事にも証拠が必要なのさ。」

「(破かれた新許可証を見て)なるほどね。
ちなみに、君達は国王様の印を知っているかい?」

「ああ。当然だろ。ほら、ここに正しい証明書がある。」

チンピラ達は、平然と旧許可証を見せる。

「もう1つ聞いて良いかな?
数日前に、各街の商売主に通達があった筈なんだが知らないかな?」

「ああ。何か、来ていたようだが、まだ、見ていないなぁ。なぁ?」

「ええ!」

これで、自分達の不正を告白したので、騎士団がチンピラ5人を捕縛する。

「じゃあ。自己責任だから、どうしょうもないね。この5人を捕縛して。」

「(騎士団員)はっ!」

「ちょっと待て!なんで俺達が捕まるんだ!!不正は小僧の方だ!!」

どうも、チンピラ達は自分達がした事を理解していないようだ。

「残念ながら違うね。国王様は商売する人への許可印を変更したんだよ。6日前にね。
緊急通知として発送し、昨日までに王宮に行って手続きしなければ無効だったんだ。
つまり、君達が破いたのは、正真正銘の本物なのさ。分かったかな?」

「そんなバカな!」

「まぁ。別に理解しなくても構わないよ?君達は、国王様が発行した許可証を破いた。
当然、その様な事をした場合の罰則を知っているよね?」

「知らん!」

「じゃあ。教えて上げるよ?侮辱罪で強制労働だ。
どこの場所になるかは、国王様次第だけどね。 詰め所に連行して。」

「はっ!キリキリ歩け!」

「ふぅ。なんとか上手く行ったみたいだねぇ。」

僕は、気になった質問をする。

「他の地域の人達はどうなったんですか?」

「その点は問題ないよ。王宮または近くの領主で、新しい許可書の手続きをすれば良い。」

「なるほど。あとは、先程のチンピラを雇った店がどう出るか。」

「一応は、正面と裏を張り込みさせている。」

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