最終更新日 2022/06/05

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39話 無人島の火災

8月23日(火曜日)

次に日に王宮に来て、連作障害について、国王様に聞いてみた。

「なるほど。同じ土地に同じ作物を植えると連作障害と言う栄養不足に陥ると。」

「はい。生まれ故郷では、違う作物を植えて、収穫量が落ちない様にしていました。」

「しかし、今からでは、もう、間に合わんぞ?どうする?」

「はい。なので、作物がどのような性質を持つかを調べると共に、
寒さに強い作物を植えて行けば、仕事が減りませんし、口減らしも少なくなると思います。」

国王様は、腕を組んで考えている。

「ふむ。確かに、このまま、何もしなければ、ジリ貧になるのは確かじゃな。

ならば、少しでも早く、対策した方が良いか。ソアリスはどう思う?」

「今までは、対策取ろうと思っても、どのようにすれば良いのか分かりませんでした。

しかし、今回は、最低でもコーヤ様からの情報がありますし、
神殿に残されている過去の遺産に、有効な方法があるかも知れません。

失敗しても、進んで見るべきだと思います。」

「よし、分かった。確かに、このままだといつかは食料が枯渇する可能性もある。

しかし、今なら、脱却出来る可能性が高いじゃろう。

ソアリス、特別班を作り有効な方法を探させてくれ。その時の人員は、そなたに任す。」

「はい!分かりました!」

「あと、もう一点。特別班を作るなら、栄養分が足りないと思うので、
土地に適した肥料も考えたほうが良いと思います。」

「なるほど。確かに栄養分の無い土地に作物は育たないですよね。ちなみに・・・。」

ソアリスさんが話している最中に、部屋をノックする音がした。

「うん?何かあったのかの?」

「今、確認して来ます。」

ソアリスさんは、戸まで歩いて行って、報告を聞くが、
どうも、緊迫した状況の様で、足早に戻って来た。

「お父様!大変です!海の街アクセリア管轄の無人島で火災発生し、
島を全焼する勢いで、現在、状況確認作業をしているとの事です。」

「無人島で火災じゃと?人為的なのか?」

「その様で、アクセリアの冒険者ギルド支部も動いたと報告があります。」

「よし。ならば、急ぎ状況を把握してくれ。もし、無人島に人が居れば救助優先でな。」

「はい!」

ソアリスさんは、状況を把握する為に、部屋を出て行った。

「国王様。なぜ、人為的だと?」

「ああ。あの地域は、資源が豊富な為、もし、災害が起きるとその資源も無くなる。

名目上、王宮領地とし、管理をアクセリアに委任しておるが、申請制で誰でも入れる。」

「なるほど。だから、王宮に知らせが来たんですね。
でも、自然の火災の可能性もありますよね?」

「ああ。自然災害で一番怖いのが、火災じゃ。無くなるからの。

だから、古代から伝わる観測機を、アクセリアの担当者が使って、
特に温度が上がる時間に測定し、対応する事にしているのじゃ。

そのおかげで、今までに自然火災で、資源を失った事は無いと歴史書にはある。」

「へぇ〜。そうなんですね。となると、偶発的なのか。それとも、意図的なのかですね。」

「うむ。そこが分からんな。希少な資源地域は王宮直属の採取班でなければ、
手出しが出来ない様に、入場規制しておるし。後は、普通の資源しか無い。」

国王様も分からないといった顔で考え込んでしまった。

「そうですか。でしたら、僕も現地に行って見ます。
現場を見ないと分かりませんし、今だから分かる事もありますし。」

「そうか。それなら、ソアリスに言って、王宮承認の印を貰ってくれ。

それがあれば、一般人では入れない場所にも入れる。

コーヤであれば、色々と気付く事があるかも知れないからな。」

「ありがとうございます。」

僕は、国王様に一礼して、部屋を出た。

海の街アクセリア海岸

僕達が現場付近の海岸に到着した時には、既に無人島は、ほぼ全焼状態で、
辛うじて残存した部分もあるが、最後まで残るかは微妙な状況だった。

「うわぁ。ほぼ、全焼ですね。ソアリスさんは、ここに来た事は?」

「幼少時に来た様ですが、覚えていません。だから、以前の状態も分からないです。」

その時、後ろからアクセリアの騎士団数人が近付いて来た。

「(敬礼)ソアリス王女様、来ていただきありがとうございます!」

「現状を教えて貰えませんか?」

その後の説明によると、火災が発生したのが、約4時間前。

一時間後に第一報があり、現地に到着し、消火を開始するも、
抑え込むのが精一杯で、消火出来ないので、応援を呼ぶのと同時に、
最悪を考えて、王宮に報告したのが、一時間ほど前との事。

「そうですか。それで、結局、消火できずにほぼ全焼したと言う事ですね?」

「はい。大切な資源を無駄にしてしまい、申し訳ありません。(深々と頭を下げる)」

「その事は、致し方ありませんが、人的被害は無いのですか?」

「はい。・・・あ。いえ。1人被害者がいます。
エルフの女性で、海岸に全身やけどで気絶している所を発見され、
現在は、意識を取り戻し、治療も終えていますが、医務室で安静にして貰っています。」

「ありがとうございます。その方に会わせて貰えますか?」

「分かりました。こちらです。」

騎士団の人達の先導で、医務室に到着し、エルフの女性と面会した。

医務室

僕達が医務室に入ると、エルフの女性は、すごくビクビクしている印象を受けた。

「初めまして。この国の王女であるソアリスと言います。名を聞かせて貰っても良いですか?」

「はい。ここから山を1つ越えた先にある、セトライ集落から来たアシーナと言います。」

「アシーナさん。なぜ、ビクビクしているんですか?」

ソアリスさんが、その様に話すと、アシーナさんが謝罪を始めた。

「申し訳ございません!(深々と頭を下げる)」

「アシーナさん。何で謝るんですか?」

「火災の原因は私だからです。」

なるほど。アシーナさんが原因だったのか。

でも、僕としては、原因不明よりかは、原因が判明している方が、対処しやすいので助かる。

ソアリスさんも、同じ様に考えたのか、アシーナさんを責めずに、
状況の把握をするべく、アシーナさんに聞く。

「そうだったんですね。では、その時の状況を話して貰えませんか?」

アシーナさんは、経緯を話しだした。

「はい。私の住んでいた村が、オークジェネラルの襲撃を受けて壊滅して、
海に入って逃げている途中で、流されてしまい、気が付いたらあの島に着いていました。

とりあえず、服を乾かす為にも、焚き火をしようと、木の枝を集めました。

その最中、土の色が黒っぽいと思ったんですが、
詮索は後にしようと思って、木の枝に魔法で火を付けました。

最初は普通の小さい火だったのが、徐々に大きくなり、
これは、大変な事になりそうだと、海の水で消火しようとしたんですが、
逆に火の勢いが激しくなって、呆然と見守る事しか出来ませんでした。」

「そんな事が。でも、今までにも報告を貰っていますが、
その様な状態になったという話は聞かなかったですね。

コーヤ様は、今の話、どう思います?」

「そうですね。オークジェネラルについては、ここでは後回しにするとして、
とりあえず、現場に行って鑑定しないとなんとも言えないですね。

ただ、話を聞く限り、アシーナさんは、タイミングが悪かったのだと思いますね。」

「という事は、コーヤ様には心当たりが?」

「ええ。」

「でしたら、現場に行きましょう。アシーナさんの処遇は後ほど決めますが、
悪いようにはしませんので、安心して下さいね(にこ)」

「ありがとうございます。(頭を下げる)」

ほぼ全焼した無人島

騎士団の人達が出してくれた船に乗って、現場の無人島に到着した。

「うわぁ。けほ。けほ。すごく、煙たいです。」

ユヅキちゃんは、色々な混じった匂いに悪戦苦闘している。

「ソアリスさんは大丈夫なんですか?」

「はい。魔法の鍛錬では、火を使いますし、他にも火事の現場にも行きますので、
ある程度は慣れていますね。ただ、この島の匂いは少し違う様に思いますが。」

足元を鑑定すると、土に原油が含んでいる事が表示される。

「そうですね。思っていた通りでした。これは、原油という液体です。
火に原油をかければ、火の勢いを強めるだけです。」

「その存在は初めて知りました。
という事は、この島の地下には原油が眠っているという事ですか?」

本当に初めて知ったらしく、ソアリスさんは原油について考えている様だ。

「調べてみないと分かりませんが、そうだと思います。
多分、過去の大地震で基盤に割れ目が出来て、少しずつ染み出したのだと思います。」

そこで、ユヅキちゃんが原油の利用法について聞いて来る。

「コーヤさん。どんな事に使えるんですか?」

「主に動力源かな。例えば、機械の動力源や灯りだったり、
魔法と組み合わせる事で、範囲攻撃出来る武器になるかもね。」

ソアリスさんは、僕達の会話を聞いて、分離方法を考えている様だ。

「そうなると、今後の国の発展のた為にも、是非、欲しいですね。
ただ、土と原油をどの様に分離すれば良いのでしょうか。」

「神殿の遺産にあるかも知れませんよ?今より高度な文明だった様ですし。」

「そうですね。探してみます。あと、何かありそうですか?」

「う〜ん。そうですね。土が焼けた事によって、肥料にも使えそうですね。
あとは・・・。うん?あれは・・・」

鑑定の範囲を、見晴らしが良くなった島全体にすると、中心地付近(海岸より)に
人工物の地下へと続く階段を発見し、その場所まで行き、気配を調べてみる。

「う〜ん。ここには、魔物が居そうですね。」

ユヅキちゃんは気配を読み取れる様になったようだ。

「気配を読み取れる様になったみたいだね。
戦闘型の魔物というよりは、森に住んでいた魔物が逃げたみたいだけど。」

「はい!苦労しましたけど、分かる様になりました!
ただ、精度が低いので、コーヤさんに追いつくにはまだまだですが。(苦笑)」

「まぁ。僕も、今の状態になるまで、二年以上かかっているから、
少しずつ、慣れていくしか無いよ。

さて、ソアリスさん、入ってみますか?」

「そうですね。報告する為に、確認しないとダメですから、行きましょう。」

ソアリスさんは決断し、僕達は慎重に地下に降りて行く。

ただ、見られている気配はあるが、戦闘を仕掛け来るわけでも無く、
最下層である10階まで、ピリピリムードが続いた。

最下層(10階)

最下層の扉を開けると、大きな部屋に300体程の魔物(動物)がいて、
中心にいた獣人の人が、僕達に向けて話しだした。

「人間よ。良く来ました。私は、猫獣人族の元長セレサと言います。

あなた方からは、嫌な力を感じません。そこでお願いがあります。

私が抱いている九尾狐の子供に、負の首輪を取り付け重体にさせた者がいます。

裁きたいので、その者を探し出し、私の前に連れて来て下さい。

この願いを叶えてくれたら、相応の報酬を出そうと思います。」

苦しそうにしている九尾狐の子供を鑑定すると、重体と表示され、
「体力回復高級ポーション」であれば完治可能とある。

「分かりました。とりあえず、この体力回復高級ポーションで完治させましょう。
その後に、解析させて貰えれば、見つける事も出来るでしょう。」

「本当ですか?では、そのポーションを渡して下さい。」

僕がポーションを渡すと、セレサさんが九尾狐の子供にポーションを飲ます。

すぐに効果が現れて、光が九尾狐の子供を包み込み、光が収まると完治していた。

「おおぉぉぉぉ!素晴らしい!この様なポーションがあるとは。」

セレサさんは、興奮しながら、九尾狐の子供を見た。

そのすぐ後に、再び光が九尾狐の子供を包み込み、
光が収まると、1段階成長した姿に変身していた。

「お兄さん、ありがとうございます。傷を治す事が出来ました(ぺこり)」

なんと、成長した事により、人の言葉を話す事が可能になっていた。

「すごぉぉぉぉぉい!!!!」

ユヅキちゃんはびっくりしているが、僕もびっくりしている。

完治可能と表示があったが、まさか、人語を話す事まで出来るとは。

「いやはや。人間よりは長い時間生きていますが、1段階成長するだけでも、
人間の生涯と同じ程の時間を要すのに、ポーションだけで達成してしまうとは。」

その点は不思議に思っていたので聞いてみた。

「その子の経験値が、成長する近くまで溜まっていたからでは?」

ところが、セレサさんは首を横にふる。

「それは違いますね。この子は、半年前に生まれて、ほとんど経験値が溜まっていません。」

「そうですか。う〜ん。まぁ、今はいいか。
それじゃぁ、解析させて貰って、犯人をさがしましょう。」

この後、鑑定と分析スキルを使って解析すると、
どうやら、前線組の人間の様で、人体実験の如くに使っていたと表示された。

この情報を基に、国王様に報告し、指名手配され、
翌日には前線組の人達の手で捕獲され、王宮に突き出された。

話を聞くと、前線組の間でも不況を買い、煙たい存在となっていたようだった。

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