8月11日(木曜日)
「さて。魔獣退治も終わったし、今後の事を考えよう。」
現在頼まれている仕事は、ユヅキちゃんの家の整理、王宮図書室の整理。
ちなみに、土砂撤去は現在、全体の半分近くまでに到達。
「どちらを先に片付けるか。」
「図書室の方で良いと思いますよ?」
「う〜ん。そうだね。とりあえず、王宮の図書室を見てから考えよう。」
出迎えてくれたソアリスさんの案内で、図書室に到着した。
「ここが、図書室になります。」
小ぢんまりした部屋をイメージしていたけど、
中に入ると、読書スペースや書くスペースも充実していた。
「この図書室は、私達の誇りの1つです。
防犯、防火、防水などの魔法がかけられていて、建国時に作られたと云われています。」
「はい。すごく立派な図書室だと思います。それで、僕達が見る図書は?」
「コーヤさん達にお願いしたいのは、一般の場所ではありません。」
図書室の管理人が、ソアリスさんに鍵を渡す。
「ソアリス王女様。こちらが、書庫の鍵です。」
「ありがとう。では、入りましょう。」
書庫に入ると、先程の一般向けとは違って、
古さや図書以外の物があるなど大きく異なっていた。
「ここには、建国当時の本など、貴重な資料が多く保管されているので、
お父様に認められた人物以外入れないようになっています。」
「なるほど。それで、僕達に整理して欲しいとの事でしたけど。」
「そうです。でも、厳密には少々異なっていて、この本を見て下さい。」
「あれ?これって、現在使われている言語ではないですよね?」
そう。近くにある本のタイトルを見ると、読む事が出来ない別の言語で書かれていた。
「はい。どうやら、過去には他にも言語が存在し、交流もあったようです。
しかし、現在は多言語を知る術がありません。それをどうするか?と言う事と、
特別室の品物を調べる事が出来ないか?の2点です。」
特別室と言う部屋に入ると、古めかしい品物がところ狭しと置かれている。
「多いですね。王家で見つけた物ですか?」
「そのようです。話によれば、建国時に見つけた品もあるらしいですが。
使える状態にしようと、色々な方法を、使ったけれどダメだったと聞いています。」
そこで、ふと、思う・・・。
「あれ?でも、これらの事って、神殿の遺産を使えば解決しませんか?」
「(苦笑)ところがそう上手くは行かないようです。
どうも、派遣された人達は、鑑定に携わった人間が少なく、
中身を知る事が出来ず、時間をかけてしまっているようです。」
「あ〜〜。解読する事が多かったから重心をそちらにしていた弊害ですね。」
「はい。まぁ、いきなり有益な資料が出て来たので、致し方ないとは思いますが。」
「でも、今後の事を考えると困りますよね?」
「そうなんです。今後、他の街でも過去の遺産が見つかるかも知れない。
その時に、すぐに内容を知る事が出来ないと。」
「難しいですよね。アイテム作ったりしても、向上心のある人間じゃないと、意味ないですし。
1番は有能な人材を募集して、今、働いている人を配置転換するとかが良さそうですが。」
「その件は、議論にはなっているんですが、スパイ等の可能性を考えると、なかなか。」
僕はある事を思いつく。
「いや。公開する範囲を明確にして、非公開の資料などは盗まれる前提で対応すれば、
なんとかなりそうです。」
「でも、あまり、お金をかけるのは・・・。」
「簡単ですよ。図書室全体の品物を全て複製する。
その後、公開範囲の品に、悪意を感知する魔法とかを付与する。
重要な品は、魔法の袋に入れて保管すれば良いんですよ。」
「ちょっと、待って下さい!複製するには、それなりに技術力がないと無理です。」
「その点は大丈夫です。(複製機を出す)これがあれば問題ないです。」
「それは、なんですか?」
「これは、複製機です。
拠点を買って、今後の事を考えると、量産したい素材をどうするか?を考えた時に、
複製すれば?と思い付いたんです。
ただ、質の低下が起きてしまいます。
しかし、本であれば、問題では無いと思います。微調整は必要だと思いますが。」
「あの!でしたら、お父様と話し合った方が良さそうなので、一緒に来て貰えますか?」
「分かりました。」
国王様のいる部屋に移動。
「国王様。こんにちは。」
「ああ。良く来た。それで、図書室の事で話があると聞いたが?」
「話があると言う訳ではなくて、
ソアリスさんの質問に答えていたら、連れて来られたと言うか。」
「ソアリス?話が見えんぞ?」
「先程、コーヤ様と図書室でのお願い事について話ししていたんです。
その中で、図書室に保管している品物を複製して、魔法の袋に保管すれば?と言う案を、
頂いたので、お父様とすぐにでも、話しをした方がいいと思ったんです。」
「ふむ。確かに、複製に何か問題が起きても、本物さえ存在していれば安心出来る。
しかし、複製するには、高い能力を必要すると聞く。そこは、どうするのじゃ?」
「コーヤ様。お願いします。」
複製機を取り出す。
「これはなんじゃ?」
「これは、僕が必要になったので作った複製機です。書物であれば問題なく出来ると思います。
ただ、現存しない魔法とかがあった場合は、分かりませんけど。」
「ほー。何で使ったのだ?」
国王様は興味を持ったようだ。
「素材の量産化を考えていて、試しに作ってみた物です。
合成した魔法袋や植物の種なども、複製機で問題無く稼働出来ました。」
「え!?コーヤ様?魔法袋って合成出来るんですか?お父様は知っていましたか?」
魔法袋の合成について、知らなかったようで、2人はびっくりしている。
「あれ?王家であれば知っていて、有効利用しているのだと。」
「いや。わしも初めて聞いた。コーヤよ。どこの情報か?」
「僕は、神殿の遺産の中にあったレシピです。
慣れるまでが大変でしたけど、空間系に得意な人だとスムーズに出来ると思いますよ。」
「それは、そのレシピには、合成での作り方が書かれていたのか?」
魔法袋(無限)のレシピを見せる。
「ええ。これがレシピです。」
「お父様!すごいですよ!魔法の袋(大)も発掘された品を使っていますが、
これがあれば、遠征などで困りません!」
「コーヤよ。良くぞ、見つけた!他に有用なものは無かったか?」
「すみません。最近まで、魔獣の事で色々と忙しかったので、まだ、確認していません。
でも、王家にとって有用なものも、まだ、あると思うので、とりあえず、複製して、
王宮で調べて見た方が良いと思いますよ。」
「確かにな。ところで、この複製機はもう1つ無いのか?」
「自分以外に必要とする人もいないだろうと考えていたので、これだけです。
複製機に関しては、僕が操作するので、国王様には素材の用意をお願いします。」
「分かった。ソアリスよ。
コーヤと一緒に神殿の遺物と王宮図書室の複製品を作り、解析準備をしてくれ。
必要な素材は国庫から出して構わん。」
「分かりました!」
僕達は、王家の馬車でフィンテルに戻り、神殿の部屋を借りて、複製作業を開始。
8月12日(金曜日)
神殿に遺されていた過去の遺産の複製を始めて、
2日目で全ての複製を完了する事が出来た。
複製の過程で、解読や鑑定に必要な知識が書かれた本も見つかり、
今後、研究が捗ると思われる。
「ふぅ。やっと、終わりました。
コーヤ様のおかげで、他国に負けない国作りが出来そうです。」
「僕は、見つけるのを手助けしただけですよ。
お礼なら、これらを残してくれた人々にしましょう。」
「もちろんです。コーヤ様は、今後、どうするんですか?」
「ユヅキちゃんの家の整理と家の土砂撤去と設備の再建を、頑張って行くつもりです。
あ!?でも、図書室の件はどうしますか?」
そう。複製はしたけど、根本的な解決には至っていない。
「そうですね。とりあえず、神殿での複製品を調査します。
今後、また、アイデアを出して貰うかも知れません。
その時は、時間を作って訪問させて貰いますね。では。」
「はい。お待ちしています。」
ソアリスさんは、馬車で王宮へと向かった。
神殿の分は1日で完了したが、王宮図書室の複製分に1日を費やした。
王宮図書室の特別室には莫大な量があり、流石に複製機1台では時間がかかると思ったので、
複製機を5台作製し、同時に稼働させた結果、1日で終了できた。
ただ、結局、2日目も夕方近くまで時間がかかってしまい、ログアウトする事にした。