遂に第四エリアと第五エリアが統一寸前まで来た。
他の第二エリアは3勢力、第三エリアも3勢力にまでしぼられた。
「(マップを見て)とうとう、動き出したみたいだ。」
こうなると、自分達の第一エリアの状態も気になるが、
マップを見ると、4分割されていた。
「へぇー。知らない間に、4勢力になっていたんだね。」
アカネさんも驚いている。
そこへ、索敵に引っかかる。
「どうやら、どこかの集団が来たようだから出迎えよう。」
拠点前にみんなで行くと、ちょうど、相手も到着したところだった。
「おっと。既に知られていたか。
僕はクラン≪ダンジョリーズ≫の代表エイウルだ。そちらの代表は?」
僕が名乗りを挙げる。
「僕はクラン≪悠久の水≫の代表コーヤだ。
第一エリアもそろそろ、動く時が来たと思ったから来たんだ。
そこで、対決方式だが、代表同士で魔法なし。制限時間は10分。どうです?」
「問題ない。」
早速、試合が始まり、5分が経過する。
「くっ!速さは得意なようだが、どうした!攻撃して来ないのか!」
「う〜ん。何だったかなぁ。」
「どうしたの?イスカ。」
「うん。相手の男性。あの戦い方どこかで見た事がある気がするのよ。」
「どこで?」
「それが思い出せなくて。もうちょっとで出そうなのに!」
「まぁ。速さを売りにしているプレイヤーは多いからね。
その方が、複数回攻撃出来るメリットもあるし。」
「複数回攻撃・・・。そうだ!思い出した!
数ヶ月前、フィンテルの冒険者ギルドで仕事探ししていた時、
ソルゲンっていう、初心者をいびって楽しむ奴が、
30人の手下を連れて、1人の男性を攻撃している映像を見せて貰ったのよ。」
「へぇー。そんな事があったんだ。わたしも、ソルゲンが、うざかったから、
違う都市に移ったんだけど。それで、どうなったの?」
「うん。その人には攻撃が当っている様に見えて、全然当っていないの。
その時の人なら、どれだけ頑張っても、勝てる相手では無いわ。」
時間は、残り1分まで経過していた。
「はぁ。はぁ。はぁ。ずっと、逃げ回っているつもりか!」
「う〜ん(時間を確認して)そろそろ、良いかなぁ。
ちなみに、1分も経たずに試合終了したら面白くないから、とりあえず、逃げていただけ。」
「なんだと!」
相手は、怒り心頭となり、突進して来た。
隠し技に警戒しながら、瞬動で相手の懐に入り、勢いの乗った肘打ちを出す。
「!?(声も出せずに、後ろへと吹き飛ばされ、見えなくなる。)」
審判役の人が、「はい、時間になったので試合終了です」と宣告する。
僕は、試合した場から、拠点前に移動すると、
相手のメンバーらしき女性二人が近寄って来た。
「あの。あたしは副代表しているアリスと言います(ぺこり)
あなた方の勝ちなので、あたし達を仲間に加えて貰えませんか?」
「代表で無くて良いの?」
「はい。これは、負けた時用の決定事項で、代表がその場にいない場合、
あたしが対応する事になっているので、問題ありません。」
「そうか。それなら良いんだ。仲間の件は問題ないよ。」
「ありがとうございます。(お辞儀)」
「あ・あの。お願いがあるんですが良いですか?」
副代表のアリスさんに付いて来た女性が、話しかけて来た。
「お願いって何ですか?」
「あの!瞬動を教えて下さい(深々と頭を下げる)
(頭を上げて)今まで、100回以上も練習して来たんですが、1回も成功しないんです。」
「分かったよ。じゃぁ。一度見せて貰える。」
相手の代表がなかなか戻らないので、講習がスタートした。
副代表のアリスさんに付いて来た女性の名はレアリアさんと判明。
早速、見せて貰おうとすると、みんな、興味がある様で、その場全員が参加になった。
「はっ!!」
レアリアさんが気合と共に、瞬動を発動するが、途中で失敗した。
「いたたたた・・・。それで、コーヤさん。何が原因か分かりますか?」
「う〜ん。普通のゲームだと意識しないから、致し方ないと思うんだけど。
みんなに質問。瞬動のイメージはどうしていますか?」
色々とみんな話をしているが、なんとなくのようで、答えを出せない中、
レアリアさんが手を挙げる。
「あの。入りと出るをイメージしています。」
「なるほどね。レアリアさんに質問ね。例えば、走り幅跳び。飛んだ距離を瞬動と仮定する。
その時の人間は、飛んだ時に消えて、着地で現れると思う?」
「いいえ。飛んだ軌道も分かるので、消えてはいないです。」
この話で、数人が”なるほど”と小さな声を上げている。
「そう。結局、どんな場合でも、人間は消えない。
仮にワープに変えても、人間がワープ空間を移動しているので、実際は消えない。
つまり、瞬動も同じで、入りと出るをイメージするのではなく、
きちんと、入ってから出るまでの軌道をイメージする事が必要なんだ。」
レアリアさんは考えている。
「なるほど。失敗するのは、入ったは良いけど、どの様な順序で出るか?が不明だから、
システムエラーを出して、失敗するという事ですか。」
「うん。僕も最初、全然上手く行かなくて、どうしたら良いのか?って思ったんだ。
イメージトレーニングしていて、消える問題が起きた。
その後、軌道があると考えて実行すると成功したんだよ。」
「ありがとうございました!(お辞儀)光が見えました!練習します!」
この言葉を合図に、みんな、練習に入った。
10分後、エイウルさんが戻って来た。
「あ。エイウルさん。お帰りなさい。」
「ああ。それでどうなった?今後の事についてだが。」
「問題なく、受け入れて貰えました。」
「そうか。で?(瞬動の練習場を見て)あれは、何をしているんだ?」
「あれは、先程、コーヤさんに瞬動成功の秘訣を教えていただいたので、
自分のものにしようと練習しているんです。」
「瞬動だと?そんな簡単にうまく行くのか?」
「ええ。あたしもびっくりしましたが、数回でコツを掴めば成功しました。
コーヤさんの教え方は面白いですね。」
「それって、僕でも出来そうか?」
「ポイントを理解しつつ、行動すれば確立は高いですよ。
今、練習している人の95%は一度は成功させています。
ただ、成功率を高めるのは以外に難しいですね。」
「なぜ?」
「たぶん、応用が出来るほど、身に付いていないのだと思いますね。」
「なるほど。その秘訣とコツを教えてくれないか?」
「分かりました。」
エイウルさん達のクランは、1時間近く練習に力を入れていた。
「コーヤ君。わたし達はどうしようか?」
「最初の集団の時同様に、手分けして、罠の設置と探索をしよう。
もしかすると、また、何か有用な品が見つかるかも知れない。」
僕はアリスさんに聞いた。
「アリスさん。核は持っていますか?」
「はい。どうぞ。(手渡して来る)」
僕は、アリスさんから貰った”核”が、元々所有していた”核”と融合し、
”核”にある数字が20に増えた。
この後、10区画を手に入れた時と同様の行動をした。
前回2時間かかった区画調査も、今回は1時間程で完了する事が出来た。
しかし、残念ながら、有用な品は出なかった。
ただ、採掘や採集に適した土地があるようで、時間を見つけて調査をするつもりだ。
こうして、第一エリア40区画の内、半分の20区画を手に入れ、
マップを確認すると、他の半分の区画でも争奪戦があり、1つのクランが勝ったようだ。
いつの間にか、第一エリアの統一最終決戦まで、進んで来ていた。