「う〜ん。イオなら、採掘しているだろうし、何か持っていないかな?」
そんな風に、噂をしていると、イオさんから連絡が入る。
「イオさん、何かありました?」
「ええ。面白い鉱石を見つけたわ。」
「鉱石?」
「鑑定すると、魔宝石という新しいカテゴリーが開放されたの。
それで、色々と調べてみると、通常の宝石の上位互換らしいわ。」
「ちなみに、パーツを埋め込む穴は何個ありますか?」
「ちょっと待って。(調査中)え〜と、掘り出したのは、6個ね。
あと、先程、メンバーが宝箱発見して、中に”凝縮された魔宝石”があって、7個だったわ。」
「あの、魔宝石は、どれだけ、採掘しました?」
「そうね。鉱脈だった様で、大き目に掘って来て、今加工しているから、
正しい個数は分からないけど、報告では中程度が200程、小程度が1000程の様ね」
「少し、分けて貰えませんか?」
「別に問題ないわ。何に使うの?」
事情を説明する。
「へぇー。面白いわね。ツルハシとかをカードに収める事は出来るのかしら?」
「嵩張るからですか?」
「そうよ。商人専用の大容量袋はあるんだけど、個人のは中だから。」
「なるほど。一応、装備品の収納は問題なかったので、
パーツを間違わなければ大丈夫ですよ。」
「その言い方だと、問題があったようね。」
「ええ(苦笑)試行錯誤している間に、色々ありました。
僕の情報は渡せますが、パーツの組み合わせが多いので、注意喚起と言ったところです。」
その後、取引内容を詰め、皆にも説明。
「へぇー、そんな素材もあるんだ。でも、元々あったのかな?」
「でも、これって、金属の鉱石にも上位互換があるんでは?」
アカネさん達はメンバー内で話をしている。
「ユヅキ、僕は魔宝石を受け取って来るから、よろしく。」
「え!?コーヤさん、距離もあるし大変なんじゃ。」
「まぁ。実は、転移札の実証実験を含んでいるんだ。」
「あれ?そんな札、作っていましたか?」
「うん。発想は魔王襲来の時にあったんだけど、研究に忙しかったから、
後回しになっていて、今回、パーツの利用方法も分かって来たからね。」
「コーヤ君!転移札ってなに!」
アカネさんが食いついて来た。
「その名の通りだよ。座標登録すれば、その場所に転移する。」
「魔法陣には、”転移”のパーツってあるんですか?」
コノミさんが聞いて来た。
「僕達が自由に使える、基本パーツ・魔法パーツ・魔法陣パーツ全て調べたけど、
類するパーツは存在しなかった。だから、自作したんだ。」
「え!水晶(コーヤ)君、自作したの!」
「うん。そもそも、パーツの自作は禁止されていないからね。
色々なパーツを考えてみたんだけど、良いのが無かったんだ。
で、最近、ふとした瞬間に、良い案が浮かんで来て、作ったら出来たんだ。」
「あ〜、そう言えば、コーヤ君。昼休みの話中もうわの空な感じだったよね。」
アカネさんが、思い出しながら話す。
「(苦笑)まぁ、そんな感じで完成したんだけど、
安心・安全にする為にも実証実験しないとね。」
「じゃぁ!わたしも一緒に行く!」
アカネさんは、メンバーから説得されるも、「行く!」の一点張りだったため、
同行を許可し、注意事項も伝えた。
「さて、行って来る。(転移札を持ち)目的地はクラン≪翆の泉≫、発動」
転移札を発動させると、数秒後にはクラン≪翆の泉≫の拠点前に着いていた。
「おー!すごい!」
アカネさんが初めての転移で、はしゃいでいると、イオさんが拠点から出て来た。
「アカネ、うるさいわよ。」
「あ。ははは(苦笑)ごめん。」
イオさんの誘導で拠点内に入り、応接室に通される。
「転移札、なかなかに素晴らしいわね。コーヤさん量産しないのですか?」
「今のは、3つのパーツで作っているけど、
魔宝石で強化してからなら問題ないと思いますけどね。」
「その作業、私達に委任して貰えませんか?」
「う〜ん。そんなに皆、買いますかね。」
「ねぇ。コーヤ君。今まで、戦闘の帰りとか疲労の中、帰らなくて良いのはすごい事だよ!」
「コーヤさんは、転移頼りになるのを危惧しているんでしょ?
分からなくはないわ。何かを頼れば、その存在に不具合が出た時に対応出来なくなる。
でも、魔宝石が定期的に確保出来れば、色々と制限を付ける事も可能になるわ。」
「なるほど。だったら、遠距離限定が良いかも。」
「今ので気付いたんだけど、タクシーや飛行機の様に、転移屋みたいな職業を作れば、
目的地が近距離なら高めに、遠距離なら安めに設定のはどう?」
「なるほど。アカネの提案にしては面白いわ。」
「ちょっと!イオ!どういう事!」
「だって、今まで、アカネの提案で良いのは少なかったじゃない?」
「ぐっ・・・。」
イオさんとアカネさんが話をしている横で考えていた。
「でもさ。転移屋という仕事にするなら、冒険者だけでなく、商人、一般人などがいるし、
どうしても、人が多くなって、渋滞する可能性が出てきそうだね。
もし、するんなら、転移門みたいな大人数用も作らないとダメかも。」
イオさんは、僕の話を聞いて、感想を言って来た。
「そうね。同じ方面の人が、一緒に門をくぐるとかしないと効率は悪いわね。
コーヤさん、転移門作れそう?」
「今、アイディアが出て来たし、うまく行けば、
クリスマス頃には、安定版の試験運用出来るかな。」
「そう。その時は、教えて頂戴。」
この後、魔宝石を受け取り、イオさんに転移札10枚とレシピを渡して、僕達は帰還。
帰還後は、他のクランの状況を考慮しつつ作業を行う。
ある程度、一段落すると今度は、鍛冶場地下に採掘に潜った。
これは、イオさんから「拠点でも、通常サーバーと異なっている可能性がある」との、
話を聞いたので、試しに降りてみた。
「あれ?通常サーバーでは掘り尽くされていたのに。」
地下に降りてみると、なぜか、岩は復活し、作業通路のみが存在した。
「う〜ん。これは、掘れば良い物が出るんでしょうか?」
ユヅキが鑑定で調べている。
「そうかもね。もしかしたら、地上の拠点部分は、コピーしただけで、
地下の部分は、イベントサーバーの地下なのかも知れない。」
僕達は時間一杯、採掘作業をした。
2階まで掘り進めた結果、
鉄・銅・亜鉛・錫(すず)・チタン・ニッケル・マンガン・宝石が見つかった。
今までは、鉄・銅・宝石は採掘出来ていたが、
どうやら、新しく亜鉛・錫(すず)・チタン・ニッケル・マンガンが追加されたようだ。
面白い物が出来そうだ。
こうして、1日目は平穏無事に終了。