12月8日(日曜日)
イベント準備の為に早めにログインすると、既にイオさんが定位置で本を読んでいた。
「あれ?イオさん?早いですね。自分のクランは良いんですか?」
「(本を閉じる)コーヤさん、おはようございます。
今日は、お願いがあって来たんです。」
イオさんは本を閉じて、
僕が座っているガーデンテーブルのイスの真向かいに座った。
「今後を考えると、そろそろ、ダンジョン産では限界まで来ています。
そこで、魔法陣の技術を少しずつ、製品に練り込みながら、
最終的には、魔法陣初級編にあるパーツを全て使えたらと思っています。
しかし、魔法陣を見つけたのは、コーヤさんなので許可を貰いたいのです。」
「なるほど。確かにダンジョン産が見つかって4ヶ月。
そろそろ、次のステージに入っても不思議では無いか。
でも、別に僕の許可は必要無いと思うけど?」
「いいえ(首を横に振る)私が知る限り、魔法陣を使っているのはコーヤさんだけです。
でも、今後、二人目、三人目が出てきた場合、騒動の種になりかねません。」
「ふむ。確かに、問題も出て来るか。
まぁ、イオさんであれば、適切に対応すると思うから、構わないですよ。」
「ありがとうございます。(頭を下げる)
それと、私達のクランと提携して貰えませんか?」
「良いですよ。」
僕とイオさんで、提携手続きを完了させる。
「ああ。そうそう。イオさんに聞こうと思っていた事があったんです。」
「なんですか?」
「ゲーム始めた当初は、適当に遊ぶつもりだったんですが、
魔法陣を見つけてから、嵌ってしまって、最近、農業が手付かずになっているんです。
それと、≪ユグドラシル≫にある果実も、袋には入れていますけど、
何も使わないのは勿体無いので、農業のクランやギルドを知っていれば、
教えて貰って、余剰分をお任せしようと思って。」
「なるほど。確かに、コーヤさんは色々と忙しいから、宝の持ち腐れになりますよね。
だったら、私の従姉妹が、リアルで出来ないから、ゲームでしたいと言って、
作業していますので、教える事は出来ますね。
それに、最近、同じ種類の種しか扱っていないから面白くない!って言っていましたから、
丁度良いかも知れません。」
イオさんは、すぐに従姉妹宛にメールを作っている。
「よし。送信。これで、近い内に、私の所に連絡来るので、コーヤさんにもお知らせします。」
「ええ。よろしくお願いします。」
「あれ?イオ?どうしたの?」
アカネさんがログインしたようだ。
「アカネおはよう。提携の件と、魔法陣の取扱の件で早くに来たの。」
「ああ。そういえば、言っていたね。
コーヤ君、40分程でイベント開始するけど、わたし達はどうすれば良い?」
この後、2つのクラン、〈天使の光〉と〈疾風雷〉に、
オンラインで繋いで、とりあえずの作戦を伝えておく。
そして、自分達はと言うと・・・。
「つまり、わたし達は遊撃隊という事ね?」
「そう。予想だと、まず、フィンテルを全力で落とし、人を集結させて、
多方面に人員を配置させるだろうと思っている。
その過程で、この拠点は場所的にも、狙われやすい位置にあると思う。」
「なるほどね。確かに、木を植えるまでは、普通に見えていたし、
ここなら、多方面に移動も出来て、有利に動くもんね。」
シェーラさんが感想を言う。
「でも、防衛だけですか?攻めには行かないんですか?」
ここでミリスさんが聞いて来る。
「そこなんだけど、アカネさん達のパーティーには、誘導して、一箇所に集めて欲しいんだ。」
「ふむ。なるほど。一網打尽ですか。確かに、籠られるとルールによる制限がかかるけど、
フィールドであれば、自由ですしね。」
ミリスさんも納得したようだ。
「でも、あまり急がなくても良いよ。他の人達で潰しあいして、
ある程度、固まってくれたほうが、僕としては戦略が立てやすいし。
だから、1日目は、様子見と一緒に、ドローンを飛ばして、
全地域のマップを完成させる事を目標とするよ。
本格的に動くのは、明日以降になるかな。」
話をしていると、開始時刻が10分前となり、空から天使が降りて来て、
改めて、イベントの詳細を知らせて来る。
その10分後に、僕達はイベントサーバーへと移動した。