午前10時に、自動でイベントサーバーへと移動し、
運営の人が開会宣言を始め、5分後に開始を告げる。
5分後、イベントが開始された。
僕は、すぐさま、ドローンを10台飛ばし、マップ作りを急ぐ。
その間、拠点から見ていると、やはり、第一エリアで活動している人は、
フィンテルを落とそうとしている。
「ねぇねぇ、コーヤ君。第一エリアに、100人近くのクランあったかな?」
アカネさんが疑問を口にすると、ミリスさんが答えてくれた。
「アカネ。あれは、掲示板で募集していた、〈イベント楽しみ隊〉だと思うわ。」
「ミリス。何それ?」
「今回のイベントで、どんなクランが参加するのか、気になったから調べたの。
そうしたら、少数クランやソロなど、イベントを楽しみたいけど、
すぐに敗退するのが目に見えていて、迷っていた人達にイベント限定のクランを作りませんか?
って、募集していたのよ。
確かに、初期から遊んでいる人や、途中でもコーヤさんの様に運が良い人とかは、
自分なりの遊び方が出来ているけど、それ以外は中途半端になりがちだから、
イベント限定というのも、面白いと思うわね。」
「なるほどねぇ。じゃぁ、あの集団は、フィンテル保持が次の目標かな?」
「どうでしょうね。意外と、攻めて来るかもね。」
「ちょっ!ミリス!フラグは止めてよ!」
「アカネ。ごめんごめん。(苦笑)」
「いや。ミリスさんが言った通り、攻めてくるかも知れないよ。」
僕は拠点のユグドラシルから見ていると、フィンテルを攻めている集団は、
この周辺で活動するほとんどの人の様に思えたからだ。
「もし、敵対する集団が無いと知っていれば、
全員で攻略した方が、一人分の負担が少なくて済むしね。」
こうして、話をしている間に、
どうやら、防衛部隊を倒して「核」を手に入れた様で、賑わっている。
「さて、念の為、準備しておくか。」
しかし、皆の期待は外れて、拠点まで攻めて来る気配はない。
「う〜ん。これは、ポイント稼ぎやすい村とかに行ったようだ。」
「じゃぁ。どうしようか?こちらから攻め込んでみる?」
「アカネ。1つのエリアは40に分割しているのよ?
他の地域がどうなっているか分からないし、とりあえず、静観が良いわ。」
「僕も、シェーラさんの意見に賛成かな。1日目は探り合いになると思うしね。
ドローンに見張って貰うよ。それよりも、皆の感想を聞きたい物があるんだ。」
僕は、ライリーさんに出会った時に感じた、危機感を打破する為に、
指輪の製作に力を入れていた。
「なに?そう言えば、コーヤ君。最近、色々と本を読んだり、試行錯誤していたよね?」
「うん。大まかなイメージは固まったんだけど、適した素材が無くて探していたんだ。
結局、見つからなかったけど、試作品としては良いかなって。(指輪を見せる)」
「コーヤさん。それは指輪?デザインは無いんですか?」
ハヅキさんが、指輪を持って見ながら感想を言う。
「ははは(苦笑)デザインにはあまり、興味が無いんだ。
まぁ、正規品の時は誰かに任せるよ。」
「コーヤ君。指輪の効果は?」
「そこは、実演した方が理解できると思う。(指輪を装着して)ユヅキ、僕に技を放って」
「え!?コーヤさん!どう言う事ですか!?」
ユヅキは狼狽していた。
「簡単だよ。この指輪は、攻撃と防御の特性があるんだ。
だから、誰かに、攻撃をしてくれないと無理なんだ。」
「なるほど。今の話で指輪の効果がなんとなく分かったわ。」
ミリスさんは、イメージ出来たみたいだ。
「わ・わかりました!行きます!!」
ユヅキが技を放ち、コーヤに接近するとバリアが展開される。
「(攻撃に手を伸ばし)吸収」
僕が吸収を発動させると、ユヅキの技が指輪に吸収されてしまう。
「(全員)これは!?」
「もう一つあるんだ。カード具現化!(カードが現れる)」
僕が技をカード化すると、どよめく。
「すごい!水晶(コーヤ)君、こんな事も出来るなんて!それで、この発想はなんで?」
リンネさんが聞いて来た。
「ライリーさんには、会ったよね?1人でも、龍族が存在しているのなら、
今後、他の龍が活動するかも知れない。
実際に、アカネさん達が持っていた”鱗”、
そして、アクセリアまでの道中で龍族らしき飛行物体が目撃されている。
でも、現実問題、今の装備で、戦えるかというと厳しいと思う。」
アカネさんが話を引き継ぐ。
「確かにね。魔族にもなんとか勝てたのに、龍族が出て来たらきついよね。
それで、対抗手段を急いだんだ。まぁ、相手の攻撃を利用するのは定番だよね。」
「コーヤさんは、試作品と言いましたけど、何が足りないんですか?」
ユヅキが聞いて来る。
「この指輪には、3つのパーツを付与しているんだ。
でも、これだと、余りが1つになってしまう。」
「そういう事ね。〈吸収〉と〈カード化〉が固定になるから、
他のパーツの選択が厳しくなるわけね。」
シェーラさんが問題点に気が付いた様だ。
「そう。以前に入手した、大きな魔石や大きな宝石で、穴が5個だったけど、
指輪サイズに加工すると、3個に減ってしまったんだ。」
「う〜ん。イオなら、採掘しているだろうし、何か持っていないかな?」
そんな風に、噂をしていると、イオさんから連絡が入る。