最終更新日 2022/06/05

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5話 初戦闘

7月28日(木曜日)

翌日、ログインして、冒険者ギルドに行くと、
僕の事を犯罪者扱いする男達3人と、騎士団の様な装備をしている数人がいた。

「騎士団の皆さん!こいつです!無抵抗な俺達を襲ったのは!」

騎士団と思われる先頭の男性が僕に話かけて来た。

「君、申し訳無いが騎士団の詰め所まで来て貰うよ。」

「その前に、状況説明して貰えませんか?」

「ああ。先程、我々の詰め所にそこに居る3人が、無抵抗な状態で襲われたと来たんだ。」

昨日、ソルゲンが良い事を思い付いたと言っていたが、どうやら、この事のようだ。

「なるほど。当然、3人には証明して貰えたんですよね?
証拠も無いのに、まさか、騎士団の皆さんも僕を犯人だなんて言わないですよね?」

騎士団の人達も、お互いの顔を見て、不思議がっている。

「そう言えば。我々とした事が。君の言う通り、その点を確認していなかった。
(3人組に向いて)さて、君達、証拠を出してくれないか?」

3人組は、予定とは違う流れにパニクっているようだ。

「(おいおい!魅了のアイテム、確か3時間は持つって言っていなかったか?!)」

「(ああ。俺もその様に聞いたぞ。まさか、不良品だったのか!?)」

しかし、騎士団も待ってはくれない。

「どうした?我々もそこまで暇ではないんだ。
証拠もなく証明も出来ないのであれば、事件として取り扱わないが?」

その時、昨日逢ったヴィオさんが入って来た。

「(カランコロン)お!?良い場面だったようだ。おはよう♪コーヤ君。」

「おはようございます。ヴィオさん。」

騎士団の人達は、団長であるヴィオさんが来た事に驚いている。

「団長!何かありましたか?」

「実はね、昨日の夜、この3人が襲われたと主張している場に、僕もいたんだ。」

「え!?団長、そうなんですか?」

「ああ。それに、この件は決着がついているんだ。
そうだろ?そこの3人。ちなみに、ソルゲンはどこだい?」

ヴィオさんはそう言いながら、冒険者ギルド内を見渡す。

「違う!あいつが俺達を襲ったのは変わらない!」

3人組は未だに、僕が犯人だと言って来る。

「うーん、困ったねぇ。コーヤ君、何か良い手は無いかな?」

「はぁ。なんで、僕に聞くんですか。
水掛け論では時間の無駄ですし、実際の映像を見て貰った方が 早そうですよ。
ディスプレイ。展開。映像再生。」

昨日、作ったオリジナル魔法〈ディスプレイ〉を出現させて、
みんなが見やすい場所に画面を出して、昨日の襲撃の一部始終を見て貰う事にした。

「ほう。面白い魔法だなぁ。オリジナルかな?」

突然、気配を感じさせないで、後ろから声をかけられた。

「(え!?警戒していたのに、気配を感じなかった)えーと、どちら様ですか?」

僕が聞くと、前へ移動して来た。

「びっくりさせてしまって、すまんすまん。
俺は冒険者ギルドフィンテル支部のマスターのルクウェルだ。
ところで、先程の質問だけど、オリジナルなのかい?」

「はい。戦闘に使うだけでなくて、
一般にも使える様な魔法を研究していて、その過程で出来たものです。」

〈創造〉と〈創作〉

僕がこのゲームで一番好きな点が、
発想と運さえあればオリジナル魔法を創作出来るところだ。

昨日のドローンの様な創造スキルも、ディスプレイで映像を出力させる創作魔法も、
レベル制限やスキル開放関係なしに創作する事が出来てしまうが、運は必要。

〈創造〉と〈創作〉は、チュートリアル終了後、付与されるので、
素材やイメージ力があれば、初心者でも作る事は可能となっている。

自作した魔法は、自動で運営側へ送られて審査を受ける。

審査に合格すると、販売が可能になり、販売方法を自由に選択する事が出来、
仮に審査に合格しなくても販売出来ないだけで、製作者本人が使用するのは可能だ。

その場合、5人までなら販売も可能だけど、買った人の権利に「売却」が付与しない。

ちなみに、自作の仕方は簡単で、1500個以上のパーツが用意されているので、
それらをイメージ通りになるように、パーツを組み合わせて行くだけ。

パーツには今回使用した〈映す〉、〈撮る〉などがあり、
こちらもプレイヤーが自作が可能になっている。

運営が用意したのは基本的な600個程度で、後はプレイヤーが創り出した物だけど、
マニアックなパーツもあり、主に使われているパーツは1000個くらいだと思う。

料金に関しては、自作はパーツの多少、パーツが複雑か簡素かでも変化するから、
金額が高いから強かったり、有効だったりするわけではないので、買う時は悩む。

僕の場合、「ドローン」と「ディスプレイ」は、
運営から審査に合格したとメールが来ていて、今後、販売が可能となる。

さて、本題に戻ると、昨日の岩壁の上の景色を見ると、スクリーンショットだけでは
物足りなかったから創ったんだけど、ギルドマスターの驚きようから、どうやら、
今までに僕のような発想に至った人はいないらしい。

この時になって、ソルゲンが冒険者ギルドに入って来た。

「(カランコロン)おい、お前たちどうなっ・・、なんだ、これは?!」

ギルド内では、昨日の戦闘シーンがディスプレイに映されていて、
多くの人が見ている。

「や〜、ソルゲン。良いところに来た。
今、君達がコーヤ君に30人で襲いかかった場面を見ていたんだ。(にこ)」

ヴィオさんが、笑顔でソルゲンに話をする。

「ふん!何かの間違いだろ?その映像が本物だと言う証拠はどこにもないぜ?」

言い逃れ出来ないと思いつつ、ソルゲンは証拠が無いと言い放つ。

「いやはや。ここまで、見苦しい言い訳をするとはね。(呆れ)」

ソルゲンは、ヴィオさんの言葉に大笑いで返した。

「くくく。笑わせてくれる!
なぜ、C級冒険者の俺達が、ひよっこに30人がかりで襲わなければ行けない?」

「なるほど。じゃあ、君達は襲っていないと言うんだね?」

「もちろんだ!!」

どうやら、ヴィオさんは良い案が見つかったのか、ルクウェルさんに提案する。

「ルクウェル。僕に提案があるんだが・・・。」

「ああ、最後まで言わなくて良い。
ソルゲン?映像に映っていた30人を至急連れて来てくれないか?」

「ギルマス!貴様!」

「おおっと。そこまでだ。せっかく、観客のいる前で再現をさせてあげるんだから、
連れて来てくれないかな?それとも、不戦敗として騎士団の詰め所に連行されるか?」

「ふん!良いだろう!そこまで言うなら、連れて来てやろう!
ひよっこがどうなっても文句は言わせねーぞ!!」

捨て台詞を残して、ギルドからソルゲンと子分3人は出て行くが、
ルクウェルさんの言葉に簡単に乗せられて、自分達が犯人だと自白する。

僕は、観客に聞いて、映像は止め、ディスプレイを消した。

「コーヤ君ごめん。勝手な事をしてしまって。」

ヴィオさんは申し訳無いといった顔で謝って来た。

「いえ。別に構いませんよ。どのみち、また、襲撃するつもりだったと思いますしね。」

「ちょっと良いかな?
先程の映像だけど、君にはダメージが入っている様には見えなかったのだが。」

「ああ。あれは、僕が速さを得意としているので、
高速移動の残像を相手が攻撃しているだけです。」

「しかし、残像を出す為には相当速く移動しなければだめだった筈だが・・・。」

ルクウェルさんは、あの速さの秘密はなんだろうと考え込んでいる。

「あの、2人に相談なんですが、僕としては、この戦いに勝っても得がありません。
なので、勝ったら相手の装備品とアイテムを全て貰う事にしたいのですが。」

「(少し考えて)ふむ。騎士団長としてどう思う?」

「まぁ。騎士団としては問題無いかな。なにより、昨日の襲撃は僕も見ているからね。
ソルゲン達もコーヤ君の所持品全てを奪うつもりだったようだから、文句は言わせないさ。」

「ありがとうございます。」

他にも聞きたい事を質問したりしていると、ソルゲンが戻って来た。

「さて。ひよっこ。負ける準備は出来たか?」

ソルゲンは勝つ気満々で、にやりと笑った。

「まぁ。何事もやって見ないと分からないですよ?」

地下練習場

決闘の舞台は、冒険者ギルドの地下にある練習場になった。

「さて、準備は良いか?ギルドマスターとして、この決闘を許可する!
しかし、殺しは許可しない!相手を殺した場合は負けとする!では、始め!」

合図と同時にアイテムによる石化攻撃をして来た。

「昨日のようなあやしい術は使わせないぜ!石化(スクロールの力を開放する)!!」

「(足から徐々に石化していく)へぇー、石化ってこんな感じなのか。」

「どうだ!これで、下半身を動かせまい!これで、昨日の様にちょこまかと動かなければ、
大した事はない。昨日の分も含めてお礼してやる!!お前たち行け!!」

「はぁ。そもそもがおかしいんだよね。(ぴきぴき)
冒険者ギルドの新米だからって、なんで、自分より下だと思うんだろうなぁ。(ぴきぴき)」

「ほう?お前は俺よりも上だと言うのか?ふざけた事を!お前たち!
あと、1分で効力が切れる。そのタイミングで、こいつに特大魔法を食らわす!」

「(子分全員)了解!!!!」

観客のみんなが熱狂していると、
ヴィオ騎士団長とルクウェルギルドマスターの所に、1人の人間が歩いて行く。

「ギルドマスター。これは、訓練ですか?」

ルクウェルは、その人物を見てビックリする。

「え!?あなたは!?なぜ、ここに?」

「ちょっと、頼みたい事があったので寄ったら、
面白いものが見れると上で教えて貰ったんです。」

舞台では、コーヤをソルゲンが石化させて、その間に、子分が攻撃するが、
有効になる攻撃が入った様には見えない。

「攻めてのC級冒険者が、受けての新米冒険者を襲ったら、逆に撃退されて、
逆恨みから、この戦いが始まったんですよ。」

「なるほど。騎士団長、説明ありがとうございます。
でも、大丈夫なのですか?守っている少年が圧倒的に不利に見えますが。」

そこで、ヴィオはくすっと笑う。

「安心して見ていて下さい。これからが1番面白い場面ですから。」

ヴィオにその様に言われて、頼み事をしに来た人物は、
椅子に座って、じっくりと見る事にした。

「そうですか。分かりました。騎士団長を信じて見させて貰います。」

1分後、石化の効力が切れた。

「みんな!!!攻撃を止めて、タイミングを合わせろ!!!!
グラビティシノワ!!!潰れろ!!!!!!」

ソルゲンの手には、宝箱か、それとも奪ったのかは分からないけど、杖を握っている。

重力魔法を重ねがけする為に、ソルゲンを含めた四方から杖による魔法を放っている。

他の子分は、高みの見物のようだ。

僕はと言うと、次の動作に入ろうと思った時に、足の違和感に気づき見ると、
石化から完全に解放されていなかった。

しかし、動けない程ではないし、子分の攻撃は魔法(初歩) の風の膜を張っていたので、
実害が無く、今回は、魔法(初歩)の掘る(土属性)を使って逃げ道を作っていく。

どうやら、じわじわと押しつぶす作戦のようだ。

ただ、中にいて気づいたが、この魔法は舞台一面に黒いバリアの様なものを展開するらしく、
作業をする場面を見られずにすみ、おかげで、作業は滞りなく完成し、脱出に成功した。

「はぁ、はぁ、はぁ。どうだ!!!!!今のは避けられまい!!!!!」

グラビティシノワの重ねかけをした事により、指定範囲が暗くなり中を見る事が出来ない。

2分後、魔法の影響力が下がって来て、
中が見えるようになったが、コーヤの姿が見当たらない。

「はぁ、はぁ。さすがに立っていられなかったみたいだな。
くくく(笑い)。さて、押し潰されたあいつを見てみるか。」

重力魔法の影響が無くなった事を確認し、中を確認するが、しかし、
どこにも、コーヤの姿を見つける事が出来なかった。

「な・なんだと!?なぜ、どこにもいない!?どこに消えやがった!」

「別に、消えていないですよ?」

その時、僕が背後からソルゲンに話しかけると、振り向いた顔は、恐怖で引きつっていた。

「(ゾワッ)な!?ど・どこから出やがった!?」

「宿題にしておきますよ。どうです?満足しましたよね?
本当は、遊んでいる暇はないので、終わりにしましょう。おやすみなさい。スリープ」

「ふざけるんじゃねぇ!まだ・・・お前を・・・。」

魔法(初歩)のスリープで、2分程で次々と対戦相手を眠らせて一件落着となった。

「ふぅ。ルクウェルさん、僕の勝ちで良いですよね?」

「ああ。君の勝ちだ。それにしても、良く、脱出出来たものだな。
後、スリープってあんなに簡単に効果が無いはずだが、どうしたんだ?」

「何を言っているんですか?
ヴィオさんやルクウェルさんも、ある事に気が付けば簡単に出来ますよ。

スリープは、手に魔法を集中させて、ゼロ距離から発動させるんです。」

「(呆れ)コーヤ君。それが出来るのは君ぐらいだろうね。

ただ、魔法を1箇所に集中させると、威力が上がるなら、他の魔法に応用出来るね。

今後、僕達の騎士団でも試して見るよ。

それで、これが、眠っている奴らの荷物だ。
勝利の報酬としてどうかと思うが、君なら有効活用してくれるだろう。」

ヴィオさんは呆れながらも、
今後、騎士団の戦力増強へ光が見えたと感じたのか、イキイキしていた。

「(荷物を受け取り)ありがとうございます。
今後、物作りしたいと思っているので、材料として使う予定です。」

「コーヤ。君はこれから旅立つ準備が揃ったら、旅に出るのか?」

「いいえ。
まだ、この街では依頼が終わっていないですし、先程も言った物作りもしてみたいので、
当分は、この街を基点にして活動しようと思っています。」

「そうか。分かった。ソルゲンも君に負けて改めてくれると良いのだがね。」

僕としても、この様な面倒な事態はしたくないので、ルクウェルさんの意見に同意した。

ただ、今回の戦闘で、魔法(初歩)を多用した為か、レベルが3上がって4になっていた。

こうして、僕にとって初めての戦闘は終わり、今後の事を考えていると、
一人の女性から話しかけられた。

「お話の最中すみません。よろしいですか?」

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