冒険者ギルドに入り、街の探索途中で、
一緒に完了出来そうな依頼を探したが見つからなかった。
そこで、空いていた受付の人に聞いて見る事にした。
「すみません。これから、この街を探索しようと思っているのですが、
ついでに完了出来る依頼は無いですか?」
受付の女性が、依頼の紙を一枚ずつ確認していく。
「う〜ん、そうですね。街の中の依頼ですと配達・採取・清掃の3つあります。
ただ、報酬は少ないですが。」
「(少し考えて)一応、内容を聞いても良いですか?」
「はい。
配達は、先程、受理された依頼で、
いつも来ている配達人が来ないので、指定の場所までの配達。
次に、ポーションの材料である薬草や毒消し草などの採取。
最後に、清掃ですが、最近、この街も冒険者が多くなり活性化したのは良いんですが、
徐々にゴミとかも目立つようになりました。(苦笑)
今までは有志を募って対応していましたが、なかなか、それも、難しくなって来ましたので、
私達有志で依頼を出しました。」
「なるほど。その採取と清掃は期限はあるんですか?」
「いえ、無いです。採取は常に受け付けてますし、清掃も緊急ではないですから。」
「そういう事であれば、3つの依頼を受けさせて下さい。」
「ありがとうございます。」
3つの依頼を受けて、配達の依頼者の場所まで急いだ。
「(カランコロン)いらっしゃいませ。」
「え〜と、配達の依頼を受けたんですが。」
「依頼受けてくれたんですね!ありがとうございます!」
店主は笑顔で近付いて来た。
「はい。それで、届け物と届け先を教えて貰えますか?」
「この商人専用魔法袋を東地区の屑屋に届けて欲しいんです。」
「屑屋ですか。初めて聞くお店ですね。どんな仕事をしているんですか?」
「最近、街で試験的に始めた商売で、
主に廃材から有効活用出来る資材を抽出する作業をしています。
ただ、3ヶ月くらい前に始動したので、
正式にまだ商売として成立するかは確定していないんです。」
「なるほど。確かに端材などには捨てるには勿体無い部分も多々ありますし、
良いと思いますね。でも、配達人は用意していないんですか?」
店主は困った顔をする。
「いえ。通常は、この試みに参加しているお店を1〜2週間で回って回収して、
屑屋で再生するので、報酬は低いのですが、募集して配達人を決めました。
システムは順調に回っていたのですが、先週の回収が来なく、
また、今週も来ないので、困ってしまって、冒険者ギルドにお願いする事にしました。
本当であれぱ、私達が届ければ良いんですが、忙しくてなかなか出来ないんです。」
「そうでしたか。分かりました。では、屑屋の場所を教えて下さい。
僕としては、来たばかりなので、この街の事を知りたかったので助かりました。
今度、木材必要になったら買いに来るので、その時は、よろしくお願いします。(一礼)」
「もちろんです!その時は、値引きさせて貰いますね。(にこ)」
その後、屑屋に無事に配達を完了。
次に、清掃と薬草採取に取り掛かった。
ここ、〈始まりの街フィンテル〉は、
新米冒険者が多く集まる事もあり、技術者見習いが腕を磨く絶好の場所としても有名だ。
主に東は工房、西は商人、北は街の統括者、南は孤児院など貧困層と、
各地区は分けられている。
これらの地区は、ギルドで聞いたら、入り組んでいるらしいので、マッピングが必要そうだ。
とりあえず、今日は昼食を挟みつつ午後6時までの時間を東地区の探索する事に決めた。
「へー、武器・防具・アクセサリーとか種類が豊富だな。」
あとで知ったけど、清掃依頼には「マッピング」スキルが報酬として付いていて、
清掃依頼完了の条件で、パッシブスキルに自動で付与されるようだ。
嬉しい誤算で、歩くだけでマッピングされるのは大いに助かる。
ちなみに、最初の街である、ここフィンテルの地図は、チュートリアル終了後貰えるが、
ダンジョンや他の街などについては、自分で地図を作るか、もしくは他人に依頼するかになる。
そんなわけで、現在は、初歩魔法にある風属性の「ウィンド」の力加減を微調整しつつ、
塵や埃を回収し、大きめなゴミと思われる物は手で回収して集めながら、魔法袋に収納。
最初はコントロールの加減に苦労したが、慣れてくると、ながらで、対応できるようになり、
今では、東地区を散策しながら清掃をしている。
あと、見つけた工房にも話をして、不用品の回収も同時に行う。
薬草採取は、東地区の地上には、ほとんど、無かったけど、
岩壁の上には群生地があり、100枚程採取出来た。
この時、東地区の工房で買った鉄塊(1キロ、小銅貨1枚(10円))を使って、
ドローンを創造スキルで創作し、創作魔法で〈ディスプレイ〉も作製しておく。
せっかくなので、ドローンを飛ばして、始まりの街フィンテルを上空から撮影して録画した。
時間を確認すると午後6時近くになっていた。
「あ!もうこんな時間か。結局終わらなかったか。東地区もう少しだったんだけどなぁ。
しょうがない。今日の分をギルドに報告に行くか。」
ギルドに入ると、報告が一段落したのか、受け付けは空いていた。
「薬草採取の依頼で、今日、採って来た分を精算したいんですが。」
「薬草採取ですね。冒険者カードと共にお願いします。」
冒険者カードと採取して来た薬草を渡す。
受付の男性は、薬草を確認して感心している。
「へぇー、採取上手なんですね。ここまで、良い状態で採取する人はなかなかいませんよ。」
「そうなんですか?」
「ええ。乱暴に千切ってくる人や保存が雑な人とかが多いので、低料金になってしまうんです。
その為なのか、薬草採取の依頼を受注する人は少ないですね。(苦笑)」
「なるほど。僕の場合、両親が土いじりが好きだった事もあって、教えて貰えたので。」
「どうりで、採取方法と保存状態が良いわけですね。
さて、報酬ですが、通常、薬草の最低基本価格が1枚小銅貨3枚となっています。」
「はい。」
「しかし、コーヤさんが採取した薬草はランク2なので、基本価格は中銅貨1枚になります。
それから、鑑定の結果、ランク2の薬草が80枚、ランク1の薬草が27枚ありました。
合計大銅貨8枚、中銅貨8枚、小銅貨1枚となります。」
「え!?そんなに?」
どうやら、ランク2の薬草が多かったようで、受付の男性は話を続けた。
「はい。先程の金額に採取方法と保存状態を加味して銀貨1枚になります。
そこでお願いなのですが、今後は治癒させる薬草だけでなく、
状態異常を回復させる薬草も採取して欲しいのです。薬草不足なんです。」
「分かりました。どこで見つかるかは知りませんが、見つけたら一緒に採取しておきます。」
「ありがとうございます。では、こちらが報酬となります。」
銀貨1枚を受け取って袋にしまい、ギルドを出て宿屋を目指す。
「時間も時間だし、宿屋に行ってログアウトするか。でも、その前に・・・。」
付き纏う十数人を無視すると、明日以降面倒になりそうだったので、
人気のない場所で叩く為に、気配を消して隠れる。
それを見ていた謎の集団の見張りは、急いで報告する。
「ソルゲン様!!!相手が突然姿を消しました。」
「なんだと!?良く探せ!逃げ足は速いようだが、俺から逃げられると思うなよ。(にやり)」
相手に誘導されている事を分からせないように、時々、姿を現しては、
また気配を消してを繰り返して、東地区の岩壁近くにある広場に到着した。
「ほう?とうとう、逃げられなくなったか?
どうだ?今なら、身ぐるみ置いていけば許してやるぞ。」
その男は、そう言うと、ニヤリと笑った。
「そう思う?
別にギルド近くで迎え撃っても良かったんだけど、
障害物があったから負けたなんて言われても嫌だからね。
せっかくだから、広い場所で言い訳出来ないようにと思ったんだ。」
「なんだ?俺たちに勝つつもりか?ははは!逆に負けても言い訳にするなよ?お前たち行け!」
ボスと思われる男が指示を出すと、
回りに潜伏していた人も合わせて30人程が一斉に攻撃して来た。
「くくく!こんなに人数が多いとは思わなかっただろう!しかし、もう遅い!
お前たち!殺しても構わん!徹底的にブチのめせ!」
「(さて、気配を消して隠れている人が、どんな人か分からないから、
出来るだけ力を最小限にするのは良いとして、どのように偶然勝ったと思わせようかなぁ。)」
思考している間も攻撃して来るがコーヤには当たらない。
敵側には、ただ立っているように見えるが、コーヤは高速移動を駆使しているからだ。
しかも、高速移動の間に敵の装備品の連結金具に少しずつ傷を付けていく。
「おい、お前ら!そんなガキにいつまで時間かけているんだ!」
「ソ・ソルゲン・・・、こいつは化け物だ。」
疲労が蓄積し、そう言い残すと倒れ、その後には、次々と倒れていく。
「な・なんだ!これは!お前!何をしやがった!」
「まさかぁ。あなたも見ていたでしょ?僕は何もせずに只々、立っていただけですよ?」
「ちっ!得体の知れない術を使いやがって!まぁ、良いさ。良い事を考えついた。
明日には、俺たちに歯向かった事を後悔させてやるからな。」
「あれ?あなたが次の対戦相手ではないんですか?」
「ふん!お前を倒す為の道具が足りねぇからな。残念だが今日は退却だ。くくく(にやり)」
ボスの後に仲間が、互いに庇い合いながらふらふらと撤退して行った。
その時に、皮の鎧が落ちたりするが、気にせず行ってしまった。
「ふぅ。なんとか、上手く言ったみたいだ。
(人が隠れている方を向き)で?隠れているあなたを敵認定して良いんですか?」
岩壁の近くにある木々から、見た目20歳くらいと思われる青年が姿を現した。
それなりに鍛えているのか、
中肉中背タイプで、剣を腰に帯びてはいるが、防具は付けていない。
見つかったからか、軽い足取りで近付いて来た。
「これは驚いた。僕の存在に気が付いていたとはね。ショックだよ。
これでも気配を消すのは上手い方なんだけど。いつから、気が付いていた?」
「最初からです。
誘導の最中に誰か分からない気配が着かず離れずなので、放置でも良いかと。」
相手の人は、少し考えていたが、僕の方を向く。
「う〜ん。もっと練習しないとなぁ。
あー、そうそう!僕はこの街の騎士団の団長をしているヴィオだ。よろしく!」
「騎士団長だったんですか。僕はコーヤと言います。よろしくお願いします。(一礼)」
「いやー、ちょうど夕食を摂って詰め所に戻ろうとしたら、
怪しい奴らが東地区に移動しているのが見えたから、偵察しておこうと思ってね。
それにしても、あれだけの人数をどうやって切り抜けたんだい?」
「あれは、残像が残る様に高速移動をしつつ、相手の装備品の連結金具に少しずつダメージを
与えておいたんです。広場に落ちている装備品を見て貰えば分かりますよ。」
「コーヤ君。どうだい?騎士・・」
「入りません。」
ヴィオさんが何かを言い出すタイミングで、質問を予想して先回りして答える。
「う〜ん、即答か(苦笑)まぁ、しょうが無い。
ちなみに君も多くの冒険者の様に、前線に行くのかい?」
「いいえ。行くつもりはないですね。
主に生産関連に興味があるので、ゆったりとそれらをしていく予定なので。」
「へぇー。珍しいね。あれだけ、戦闘が出来るのに。
僕の知っている冒険者は戦う事が大好きな人が多かったから、君の様な人は新鮮だ。」
「確かに変わり者かも知れません。
あの、聞きたいのですが、広場に落ちている装備品、回収しても良いですか?」
「(広場を見て)あー、うん。他の人に悪用されるよりはコーヤ君が持っていた方が安全だね。
お願い出来る?」
広場をきれいにして、ヴィオ騎士団長と別れて宿屋に向った。
部屋を確保して宿屋の食堂で遅い夕食を摂ったんだけど、
味が微妙で物足りなさしか感じなかった。
明日以降、料理をなんとかしようと考えた後、部屋で今日の清掃で手に入れた物の確認。
「おー!意外と良い物が♪」
鉄500g、黒鉄50g、水晶の欠片5個、10本の鍵束、初級回復薬のカラ容器3個、
ルビーのイヤリング(片方)、サファイアの壊れたネックレス、小銅貨5枚、
王家の紋章があるエメラルドの指輪、ランダムBOX2個、木の欠片50個、鉄の欠片70個
以上が魔法の袋に入れて仕分けした物で、
プラスして、東地区の工房で不用品回収したので、1日で大きな収穫があった。
ただ、面倒事に巻き込まれそうな品もあって、どうしようか処分方法に悩む。
明日、ギルドで相談する事にしよう。