最終更新日 2022/06/05

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1話 ゲームの世界へ!

7月27日(水曜日)

がやがや、がやがや

「(ここが、仮想現実の世界かぁ。)」

光が収まって目を開けると、中世ヨーロッパの都を思わせる景色が入って来た。

チュートリアルでは、草原だった為、気にならなかったけど、
街ともなると、だいぶ違うように感じる。

周りを見れば、夏休みだからか自分と同じく初ログインと思われる人や初心者を
多く見る事が出来て賑やかだ。

街のマップを見ると、現在地である初心者限定のログイン転移場所の噴水広場を中心に、
東西南北へ大通りが伸び石畳が敷かれ、全てではないが、碁盤の目になっていて
迷いにくくなっている。

「さてと、まずは衣食住の確立の為にもギルドに登録しなきゃだな〜。」

そう、つぶやくとすぐ目の前にある冒険者ギルドに向けて歩き、中に入ることにした。

カラン、コロン

冒険者ギルドに入ると、定番の値踏みするような視線を色々な角度から受けるかと思ったが、
そんな事はなく、ギルドはクエストの受注と報告、冒険者登録で混雑していた。

比較的空いていた受付カウンターで、10分程待って順番が回って来た。

「すみません。登録したいのですが・・・」

「はい、いらっしゃいませ。こちらの用紙に必要事項の記載をよろしくお願いします。」

登録名は「コーヤ」、職業は「錬金術師」、性は「男性」と書き込み提出。

「はい、ありがとうございます。次に、こちらの水晶玉に手を置いて下さい。」

その間にも受付の人は作業を進めている。

水晶玉に手を置くと、ちりーんと鈴が鳴るような音が鳴った。

「はい、ありがとうございます。問題もないようですので、ギルドカードを発行します。」

受付の人が、1枚のカードを眼の前に置く。

「こちらが、冒険者ギルドのカードとなります。

冒険の最中に倒した魔物の数、依頼の確認、
称号などの確認などの機能があるので、無くさないように気を付けて下さい。」

「はい、分かりました。」

「注意事項として、生産活動や魔物狩り、ダンジョン探検などでカウントしますが、
冒険者としての活動を3年行わなかった場合は、カードは自動消滅します。

冒険者の活動データは保存していますので、問題があった場合には、報告して下さい。」

「はい」

「では、頑張って下さいね。(にこ)」

冒険者登録が完了し、お礼を言って、冒険者ギルドを出て、ゲームを本格的にスタートさせた。

本来であれば、冒険者と言う職業は、『危険を冒す』のが仕事だから、
試験を行うのが普通だが、ゲームではそこを省略している。

確かに、試験に受かれば問題がないが、落ちた時は魔物討伐が出来ないから、
店でアルバイトをしながら腕を磨く事になる。

ラノベの様に、異世界転移によって現実がファンタジーになれば、それでも問題ないと思うが、
ゲームである以上スタートさせないと言う選択肢は無いのだろう。

今後の方向性を考えようと思ったけど、朝食を食べる為にログアウトする事にした。

現実世界

「ふぅ〜、宣伝していた以上にきれいだし、
本当に異世界に入り込んだように感じるから、すごいなぁ。」

クラスメイトが熱心に推す事だけはあるなと思った。

時間を見ると、午前7時10分だった。

「さて、TVを見ながら朝食にするかな」

今日は、天光暦2100年。世紀末の年で7月27日(水曜日)、夏休みに入って6日経つ。

僕は水晶光矢。

4月に橘学園高等部に入学した一年生で、誕生日が7月8日だから現在は16歳。

先程までしていたのは、
「Infinite Alternative world(インフィニティ・オルタナティブ・ワールド)」と言う、
テレビや雑誌など多方面で取り上げられて話題になっているVRゲーム。

相当、気合を入れて制作されたと言われていて、
「プレイヤーと一緒に成長する異世界を冒険しよう!」を謳い文句に
今年の1月1日の元旦にサービスが開始されたゲームで、自由度がすごいらしい。

学校でも昼休みなどに周りで話をする人も多く、
ゲームの話を耳にする事も多々有り、人気度を伺う事が出来る。

クラスメートからも、執拗に「一緒に遊ばないか。」と誘われている。

興味はあったけど、機器が高額だったり、中学卒業後に一人暮らしを始め、
するべき事が増えた事もあり、遊ぶ事はしなかった。

まぁ、ちょっとした事で、
手に入ったから今日から遊んで見たんだけど、想像以上でびっくりだ。

それもこれも、このシステムを確立してくれた技術者のおかげだが、
亡くなったおじいちゃん達に言わせると、前政権与党の《新しき風党》が台頭して
政権奪取しなければ、《全身(フル)ダイブ技術》がここまで発展を遂げられなかったと
小学生の頃に良く言っていたけど、本当かどうかは分からない。

時間はかかっても最終的に完成したかも知れない。

当時の人からすれば、それだけ、画期的で驚く技術だったんだろうけど。

「おじいちゃんとおばあちゃんにも、体験させてあげたかったなぁ。」

今後の活動内容を考えながら、ふと、そう思った。

僕は幼少期におじいちゃんとおばあちゃんの体験談や流行っていた物とか、
色々と教えて貰った。

そのおじいちゃんとおばあちゃんは、今から6年前に2人共98歳と言う年齢で亡くなった。

死因は老衰で、眠ったまま息を引き取ったと聞いた。

「おじいちゃんとおばあちゃんなら、すごく感動したんだろうなぁ。」

祖父母が生きた時代は、変化の時代と共に停滞の時代とも呼ばれ、
中学校の歴史や高校の選択教科の授業で習った。

2000年からの20年は、震災や不況により、お金の流れが停滞し悪循環が続いた。

政治も平和から戦争へ舵を取る政党が、多数派を形成し、
泥沼化する一歩手前まで進んだと言う。

ところが、20年から状況が一変する。

混乱政治を引き起こした本人が、国会で演説中に痙攣し倒れ、
救急車で運ばれると言う騒ぎが起きた。

その後、緊急搬送される途中で死亡が確認された。

なんと、司法解剖の結果、覚醒剤を使用していた事が判明した事もあり
党内では大混乱に陥った。

話し合いの結果、総選挙をする事で一致。

オリンピックが近づいた5月中旬ではあるが、6月中旬に選挙を行った。

その選挙で、《新しき風党》が衆参で共に単独過半数を占め、
当時の与党が第一党から全体で五位まで転落する事になった。

《新しき風党》が勝利した背景として、一部の技術の開放により、
閉塞感からの脱却に期待が高まったからと伝える。

その一部の技術というのが、『ホログラムシステム』と『全身(フル)ダイブ型VR』だ。

『ホログラムシステム』は、見るだけなら、ある程度完成していたようだが、
日常生活でも使えるようにしたシステムだ。

具体的には、腕輪型端末から呼び出された「キーボード」や「画面」に
手で触れて文字を打ち込んだり、拡大や縮小したりできる。

『全身(フル)ダイブ型VR』は、現在のVR技術は当時の技術を土台として作られている。

《新しき風党》は、これらを実際に体感して貰い、政策に組み込む事で票を獲得したのだ。

選挙で勝利した 《新しき風党》は、政権政党となり、党首は首相となり、
ここから、現在の発展の基礎がスタートした。

《新しき風党》がこの100年で行った政策や活動は、
世界にも波及し多くのところで実を結んでいる。

『全身(フル)ダイブ型VR』の普及により、VR空間で学校を作り授業をする事が可能になり、
いじめ撲滅に役立っている。

また、『医療キット』とVRを合わせたサービスが立ち上がり、
『医療キット』で簡易の血液採取や尿のデータを病院に送ったり、
VR内の病院で診察を受けたり出来るようになって便利になった。

あと、現実の戦争が減り、VR内での戦争が増えた事により、
無関係な人が死ぬ事が少なくなった。

他にも多くの分野で功績があり、上げると切がないほどだ。

そんな感じに、色々と考え事をしていたら、時間は8時半を周っていた。

「ごちそうさまでした(手を合わせる)さて、家事を片付けて昼くらいから活動始めるか。」

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