最終更新日 2022/06/05

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25話 予知能力者エリシア

8月7日(日曜日)

「おはようございます。」

「や〜。おはよう。エリシア様、こちらが事件解決に尽力してくれたコーヤ君です。」

ヴィオさんが、エリシアさんに僕を紹介する。

「あの。助けてくれてありがとうございました。(お辞儀)もう、ダメかと。」

「いいえ。エリシアさんの運が良かったからです。僕は、ちょっと手助けしただけですよ。」

「それでもです。わたしが予知した時には、コーヤさんの存在が全くありませんでした。
少しずつ、わたしの予知が変わってしまっているのかも知れません。」

「まぁ。僕がこの街に来たのは、
2週間近く前ですし、分からないのは不思議ではないと思いますけど?」

「違うんです。通常、予知した時、未来で出会う人達が出て来ます。
なのに、今回はそれがありませんでした。」

予知能力について、なんとなく分かったので、お節介かと思ったけど話す事にした。

「それは、ちょっと違いますね。予知とは、現在の未来の姿でしかありません。

過去に何も行動しなかった時の未来であって、過去に、予知した未来を回避しようと
人々が行動すれば、未来は自ずと変化するものだと考えています。

今回、行動していた人達の歯車が噛み合っていなかったのを、
僕はそれを噛み合うようにした、 それだけの事です。」

エリシアさんは考えながら・・・。

「なるほど。その考えはありませんでした。
予知で見た未来は、確定しているものだと思っていました。

そうだ。話は変わりますが、お礼をさせて下さい。何か、欲しい物はありませんか?」

「う〜ん。数日前に、王宮で、国王様に同じ事を言われて困ったんですよ。」

「え?そうなんですか?でも、それだと、私の気が済みませんし。」

「あ!神殿から過去の遺産が出て来た事、聞きましたか?
結構、莫大な数なので、国で研究して国の発展に役立てるのはどうですか?」

「その話は聞きましたが、そんなにすごいのですか?しかし、お礼では無いですよね?」

「うっ!確かに、直接的ではないですけど、今後、魔物の氾濫などがあった時に、
発展出来ていれば、僕達、冒険者の負担も減りますし、探索とかでも助かりますし。

あ〜、でも、僕が決めて良い事ではありませんね。セリナさんの許可も必要ですね。」

「確かに、王都周辺とフィンテルな街では、
発展度が違うようですし。国王様と相談しますね。」

話に区切りが付いた時に、1人の女性が入って来た。

「話は終わりましたか?エリシア、無事で良かったわ。」

「お母様!」

「ミヤカ様。ようこそ。」

「話は聞いているわ。陣頭指揮をしてくれたんでしょう?ありがとうございます。」

ヴィオさんに労いの言葉をかける。

「ええ。でも、こちらにいるコーヤ君が、
大変な所を助けてくれたので、それほど、難しくはなかったですよ。」

「あなたがコーヤさんね?娘も国も私達の知らない間に、手を尽くしてくれたみたいで、
すごく、感謝しています。ありがとう(頭を下げる)」

「いえ。あの。頭を上げて下さい。
自分のしたい事をしていたら、上手く行っただけですから。」

「ふふふ。普通の人だったら、そのようには言わないわ。兄に聞いていた通りの人ね。」

「お母様。お礼をしたいと言ったのですが・・・。」

「困ると言われたのでしょう?コーヤさん。
兄とも話して、王宮の図書室を使う権利をお礼にしようと言う事になりました。」

「いやいや!それは、余計に受け入れられないですよ!」

「コーヤさんへのお願い事も含めての話ですから。」

「お願い事ですか?」

「はい。王宮の図書室にある本は、過去の大戦で焼失を免れた物と言われています。

しかし、本は置いてありますが、解読の知識を持っている人が少ない事もあって進みません。

そこで、コーヤさんに、ある程度の区分けをして欲しいのです。
危険な本以外は、出来れば、今後、公開して行こうと考えているので。」

「なるほど。分かりました。
僕にどこまで出来るか分かりませんが、依頼を受けたいと思います。
ただ、魔獣討伐や自宅の改修など、するべき事があるので、当分先になると思いますが。」

「ええ。構わないわ。別段、急いでいるわけではないですしね。

私達は、各地を発展させるチャンスだと思っています。

神殿に遺された過去の遺産と王宮の図書室にある本を活用して、
住みよい国にして行こうと、思ってはいますが、アイデアがありません。」

「アイデアの部分を僕に出して欲しいと?」

ここで、ミヤカさんから、ヴィオさんが話を引き継ぐ。

「そう。これは、僕達フィンテル騎士団としての要望でもあるんだ。

僕の先代の団長時代から、装備品製作技術が上がっていなくて困っていてね。

各街は、素材こそ異なるけど、品質は最低だ。

ダンジョン産を見ただろ?
本来なら、あの辺りの品質が欲しいんだ。そうすれば、僕達も、活動出来る。」

「なんで、そんなに悪いんですか?故意にそうしているとか?」

ミヤカさんが、神妙な面持ちで答えてくれる。

「その可能性も否定し切れないわ。
他国が我が国の発展を阻害しているとも考えられるのだけど、
どうにも、決定的な情報が無かったから、引き伸ばしされていたのよ。

でも、今回の魔獣が封印されていて、
冒険者に頼る他ない現状は、早い内に打開したいと思っています。」

「あれですね。信頼した人間に、調査をして貰いたいと。
まぁ、なんで、僕が信頼されたのか不思議ですが。」

「あと、もう1つコーヤ君に頼みたい事がある。(紙を出す)
これは、昨日、捕まえた犯人の所持品にあった紙なんだけど、逃亡先のようなんだ。
時間が出来てからで良いから、様子を確認して欲しいんだ。」

「確か、海の街アクセリアの近くって言っていましたよね?」

「ああ。あの辺りは、昔から観光地だったから、森とかに別荘があったりするんだ。
で、この隠れ家もそうだとは思うね。」

「色々とする事があるから、どうにか出来ないか考えて見ますね。」

「お願いするよ。」

「エリシア。私達は、そろそろ戻りましょうか。みんなを安心させてあげましょう。」

「はい。コーヤさん。ユヅキさん。ヴィオ団長。
他の皆さん。助けてくれて、ありがとうございました。(深々と頭を下げる)」

2人は、馬車で王宮に帰って行った。

「僕達もする事があるので、これで帰らせて貰いますね。」

「ああ。色々とありがとう。あと、捕まえた犯人の所持品と籠もっていた場所を調べて見たが、
重要な品が無かったよ。逃亡先に集中させている可能性がありそうだ。」

「そうですか。ならば、仲間がいる可能性が強そうですね。」

「ああ。だから、気を付けて。」

騎士団詰め所を後にして、本拠地に戻って来た。

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