コーヤに前衛強化魔法のテストに選ばれたのは、
プレイヤーのシエルだった。
そのシエルは、宿屋に戻っても浮かない顔をしていた。
「なぁ〜に?シエル、難しい顔をして?」
「そうそう。大金星を上げたんだから喜んだら?」
メンバーから喜べと言われるけど、私は素直に喜べなかった。
「むぅ。だって。あれはおかしい。
今まで、同じ武器で攻撃しても、あんな簡単に、斬れなかったのに。」
「そうは言っても、実際に斬って、たくさんのポイントゲット出来たんだし。」
「そうなんだけど、首に剣を刺すタイミングで、
後ろから支援魔法が飛んで来たように思うんだけど。」
「私も、シエルの話している通りだと思うんだけど、
最深部の一番後ろから支援魔法が来たように感じたんだよね。
シエルの動きに集中していたから、正しいかは分からないけど。」
ミスリが気が付いていたようだけど、人物を特定できる情報を持っていなかった。
「でもさ。確か補助や支援魔法は有効距離短くなかった?
最深部の部屋の後ろから、前線のシエルまで相当距離あるよね?」
シルファが疑問を口にする。
「とりあえず、みんな。ログアウトしようよ?疲れているし、
現実の世界でお風呂に入れば、良い考えも出て来るんじゃない?」
コトハによる提案で、ログアウトする事にする。
「うん。ごめん。ログアウトしよう。」
ログアウトし、シエルはお風呂でも、部屋でも、1人で考えていた。
「(かちゃ)羽衣〜。ご飯だって。まだ、考えていたの?」
「うん。別に、支援して貰ったからじゃなくて、あの魔法があれば、
今のギリギリの状態から脱却出来るんじゃないかって。」
「ああ。確かにね。ダメージ量を増やす魔法があれば、もう少し、ダメージ入りそうだしね。
でも、ネットでもそんな魔法発見されていないから、誰かが創ったのかな?」
「そうかも知れない。魔法をかけてくれた人は、相当、敏捷な動きが出来ないと、
あのタイミングで、魔法をかけるのは出来ないと思うし。」
「まぁ。とりあえずは魔獣退治の期間はあと3日しかないんだから、集中して行こうよ!」
レイドイベントも、あと、3日となっていた。