最終更新日 2022/06/05

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17話 誘拐事件

ソアリスさんが手を挙げる。

「次に私からコーヤ様へお願いがあります。知恵を貸して欲しいのです。」

「知恵?どういう事ですか?」

「ヴィオ団長に、相談する機会があって、その時に、コーヤ様を推薦して貰いました。
コーヤ様なら、アイデアが豊富だからヒントを貰えるかも知れないと。」

「ちょっと!ヴィオさん!」

「本当の事だろ?僕達が考える事よりも、斜め上を行っている。
この問題の突破口を開けるのではないかと、期待しているんだ。」

ヴィオさんは涼しい顔をしている。

「はぁ。それで?どんな問題なんですか?」

「今から、2年前に私の従妹(いとこ)であるエリシアが誘拐されました。

多くの人員を使って、潜んでいられる場所を探しましたが見つかりませんでした。

ただ、1週間程前に私達が着けている王家の指輪が反応したんです。」

「反応?どのように?」

「王家の指輪は、持ち主以外の人が触ると反応する様に作られています。

誘拐などの犯罪を、いち早く知り、対処出来るようにと教えて貰いましたが、
自分達が考えているよりも、不完全な物だったようです。

話を戻しますと、2年間、指輪も一緒に探しましたが、見つかりませんでした。

ところが、1週間程前にフィンテルへ用事で打ち合わせに行った際に、
微量ですが反応があり、ヴィオ団長に相談しました。」

「なるほど。その時にヴィオさんが僕を紹介したと。」

「別にね。僕は意味もなくコーヤ君を紹介しないさ。街の清掃する依頼を受けていただろ?
もしかして、その回収品の中にあるんじゃないかと思ったんだ。」

「あー。なるほど。ちょっと、調べますね。(指輪・・・指輪・・・)うん?
もしかして、これですか?(エメラルドの指輪を出す。)」

「あ!これです!(指輪を見ながら)でも、エリシアのかどうかまでは、分かりませんね。」

「これは、どこで、手に入れたのじゃ?」

「多分ですが、フィンテルの東地区でだと思います。」

「ふむ。東地区は工房や素材倉庫があるし、隠れ蓑にはちょうど良いかも知れないね。

商人の地区にも倉庫はあるけど、出し入れが激しいし、確認作業があるから、
潜伏先には向いていなさそうだ。」

ヴィオさんは、東地区を思い浮かべながら話をする。

「(確認する)反応していたのは、この指輪ですね。

仮にエリシアのだとすると、
まだ、フィンテルに監禁されていると言う事でしょうか?」

ソアリス王女様が質問して来た。

「そもそも、エリシアさんは、なぜ?誘拐されたのですか?」

「エリシアは、予知能力を生まれながらに有しています。」

「そうでしたか。

であれば、エリシアさんは、誘拐される前に、
この国にとって重大な危機を予知したのかも知れませんね。

その事を知った犯人は、対処されては困るから誘拐した。

仮説が正しいとすると、
もし、エリシアさんがフィンテルにいるなら理由は、そこにありそうです。」

「ソアリス王女様、エリシア様が何を予知したのか分かりますか?」

ヴィオさんが、ソアリス王女様に質問をした。

「いえ。エリシアは出来るだけ正確性を持たせる為に、紙に記録しておき、
確実だと思われる情報だけを、私達に伝えて来ています。

あの時は、その様な事は無かったと思います。」

「わしも聞いてはいないぞ。王妃はどうだ?」

「ええ。私も聞いていないわ。」

「あの。エリシアさんのご両親に先にとはならないんですか?」

疑問に思っていた事を聞いてみた。

「そうじゃ。予知に関しては、まず、わし達に伝える事になっている。

国王が、緊急事態の情報をいかに早く入手し、対策を練る事が出来るかで、
国の運命が左右されると言っても過言では無い。

王宮にある図書館に残る歴史書にも、対応の遅れから国を滅亡させた例が書かれておる。

その様な事が無いように、重要な情報は、王家に先に伝えるルールになったのじゃ。」

この国は、過去の教訓を活かして、現在のシステムを作ったようだ。

「この国を混乱させたい団体が、スパイや内通者を使って王家より先に情報を入手し、
エリシアさんを誘拐して撹乱する。

危機に陥る情報を知った時には、手遅れになっているのを、犯人達は狙った様に思えます。」

「確かに、筋が通っていますね。
と言う事は、エリシアが見た予知は、魔獣に関してなのでしょうか?」

「可能性は高いと思いますが、他の可能性もあるかも知れません。

まずは、フィンテルの東地区を捜索して、エリシアさんを見つけて確認する事です。

まぁ、もし、魔獣の事であれば、現在の状況は、犯人側にとって願ったり叶ったりなので、
相当、油断していると思いますね。」

国王様は心配そうに聞いて来る。

「魔獣討伐は、上手く行っていないのか?」

「そのようですね。だいぶ、挑戦者が減っているようです。」

「そうか。そちらも気になるが、まずは、エリシアの方じゃ。

フィンテル騎士団長ヴィオ、コーヤの方が地理にも通じているだろうから、
そなた達に任せる。」

「はい。(はっ!)」

「あの!お父様!私にも何か手伝いをさせて下さい!」

「分かった。良いじゃろう。ただ、危険な事は極力回避し、2人の邪魔はしないように。」

「お父様。ありがとうございます。」

「では、国王様。僕達はフィンテルに戻ります。

まだ明るいので、情報を集められそうですから。
ソアリス王女様は、エリシアさんの部屋に、犯人の足跡が無いかを探して下さい。」

「えーと、犯人の足跡と言うのは?」

「そうですね。例えば、当日の日程や手紙を調べるだけでも、日常の動きとは違う
動きが分かると思います。おかしいな?と感じた事を書いて教えて下さい。」

「分かりました!お役に立てるように頑張ります!」

この後、馬車に乗ってフィンテルに戻って来た頃には暗くなっていた。

「う〜ん(伸びをする)動くのは明日からになりそうですね。」

「そうなりそうだね。コーヤ君は明日、どのように動くつもりだい?」

「一応、カメラを飛ばそうかと考えています。」

「カメラって、ソルゲンが闇討ちした時のかい?」

「ええ。まずは、上から確認して、
当たりを付けたら張り込んで偵察と言う方法を取ろうかと。」

「僕達、騎士団がする事は?」

「今のところは、犯人を探していると思わせない方が良いですね。

だから、騎士団は通常の仕事をして下さい。
働いて貰うのは、相手が動いてからですので。」

「分かったよ。明日の情報は、僕にも貰えるんだろ?」

「もちろんですよ。情報の共有をしないと問題が起きますから。
では、おやすみなさい。」

「ああ。2人共、おやすみ。」

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