最終更新日 2022/06/05

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16話 フォルセニア国王

僕達は、裁判をしていた部屋から王家のプライベートルームに移動した。

「そうだ。最初に言っておく。
この部屋では、膝をつかなくても、敬礼も必要ない。わしが嫌いだからな。」

「初めまして。私は王妃をさせて貰っているけど、緊張しなくて良いからね。
で、あなたがユヅキちゃんね?ここに座って。(こっちと手招く)」

王妃様がユヅキちゃんに、自分の横に座るように促す

「初めまして。私は王女をしているソアリスと言います。よろしくお願いします。(一礼)」

「初めまして。最近、冒険者ギルドに入ったばかりのコーヤです。」

「そこの2人。自己紹介は座ってからでも構わん。座れ。」

僕達が挨拶しあっていると、国王様から呆れた声で促せられたので、空いている席に座った。

「今回の件は、早めに片付いて良かったのう。」

「確かにそうね。でも、ユヅキちゃんには辛い思いをさせたし複雑ね。」

王妃様は、横のユヅキちゃんを見ながら、複雑な顔をする。

「あの。確かに辛かったですけど、
コーヤさん、セリナさん、ヴィオさんなど優しい人達と出会えました。」

「そう。ユヅキちゃんに良い出会いがあって良かったわ。(にこにこ)」

ユヅキちゃんの言葉に、笑顔で返す。

「そう言えば、ヴィオ団長から聞きましたが、
コーヤ様は、フィンテルですごく活躍しているとか。」

王女様が、僕に様を付けて来たので、びっくりしてしまった。

「ちょっと待って下さい。僕は、王女様に様付される様な人間ではありません。
それに、偶然、フィンテルでの出来事の発端になっただけで、大した事はしていませんし。」

「コーヤ君。あまり謙遜し過ぎもだめだよ。君がフィンテルに来たのが1週間程前だ。

僕達にとって、目の上のタンコブだったソルゲンを負かし、誰もしない清掃の依頼をした。

それによって、封印された魔獣討伐にまで行き着けた。

あとは、カーサスの森に潜んでいた、手配犯を見つけて捕縛もしてくれた。

本来なら、これだけの事を処理しようと思えば、
数年以上の所を約1週間で終わったのは、全て、コーヤ君の功績だ。」

ヴィオさんはハーブティーを飲みながらその様に話す。

ソアリス王女様に至っては、尊敬からか、きらきらした目で僕を見ている。

「ええ。聞けば聞くほど、素晴らしいと感じました。
そのような人に様付けしないと言うのはありえません!」

国王様と王妃様も、うんうんと頷いている。

「最初、聞いた時は裏があるのではないか?と疑ったが、調査するに従って本当だと分かった。
本来は、わし達が対策を練る筈だった事。国を代表してお礼を言わせて欲しい。ありがとう。」

国王様は僕に向かって躊躇なく頭を下げた。

「国王様、頭を上げて下さい。僕は他の冒険者とは違って、戦闘には興味がありません。

それで、フィンテルに住むのなら、道やお店など街の事を知っていた方が、
後に迷わなくて済むだろうと考えたから、清掃の依頼を受けただけです。

つまり、自分の為にしたのであって、みんなの為とは思っていません。
まぁ。ここまで密度の高い1週間を迎えるとは思ってもいませんでしたが(苦笑)」

「なるほどのう。無欲の勝利じゃな。そのおかげで、我が国は先手を打てたのは大きい。

して、コーヤよ。確かに、お主は将来の自分の為にと思っての事なのかも知れん。

しかしじゃ、それによって行われた事の評価は他人がするもので、自分がするものでは無い。

お主の行動の結果、多くの者が救われたのは、これも、また、事実じゃ。」

「そうよ?コーヤさん。そして、助けてくれたから、感謝をしたいのに、
感謝はいらないと言われた側の気持ちも考えて欲しいの。」

ここで、王妃様から野鳥バーディリア会長と同じ言葉を言われる。

「感謝はいらないと言われた側の気持ちですか?」

「そう。普通にこの人は謙遜しているんだと思えば良いわ。

でもね。世の中には色々な人がいて、もしかすると、過去の人が感謝はいらないと言ったから、
助けて貰っても、感謝しない。助けて貰って当たり前だと思うようになるかも知れないわ。

まぁ。今のは、極端な例だけど、結果を出した人の義務として、感謝を受け入れた方が
双方にとって良いと思うの?どうかしら?」

「そうですね。以前に別の人物にも同じ様な事を言われたのを、今、思い出しました。

今後は、感謝を受け入れる様にします。」

「うむうむ。そうした方が良いじゃろ。」

国王様も王妃様も、僕の言葉に満足したように笑顔になった。

その後、話題が魔獣の話に移る。

「それにしても、フィンテルに封印された魔物がいるなんて、考えた事も無かったわ。」

「神魔戦争前後の文献で、書かれていなかったからの。
このまま、冒険者達が討伐してくれれば良いんじゃがな。」

「お父様、お母様。ユヅキさんの対処を。」

ユヅキちゃんの対処を、話していないのに気付いたソアリス王女様が、話を軌道修正する。

「おお!そうじゃった。ユヅキの生まれた土地は国の貸し出しだから、
土地と建物を返還してもらわねばならない。

しかし、状況が状況だから、先程、3人で相談した結果。

土地と建物内にある全ての物を、ユヅキの物にする事を許そう。」

「えーと、コーヤさん、どうゆう事ですか?」

ユヅキちゃんは、理解出来ない様で僕に聞いて来る。

「カルス達が言っていた宝があれば、私物として扱っても良いと言う事ですよね?国王様?」

「ああ。報告通りなら、ユヅキの両親が、建物内か土地に残している可能性がある。

しかし、今の法では、ユヅキには何も残らない。

さすがにわし達の本意ではないからのう。

とは言え、建物の解体には金もかかる。頭が痛い問題じゃな。(ちら)」

国王様は、どうやら、僕に建物の解体をしろと言っているようだ。

「(心の中でため息をつく)確かに大きい家でしょうから、解体にはお金がかかるでしょうね。

でも、僕の知り合いに建築する人がいますから、
その人に頼めば、廃材の譲渡を条件にすれば、タダで解体してくれると思いますよ。」

「そうか!それは素晴らしい!コーヤよ。そなたから頼んでくれ。」

「分かりました。」

「さて。これで、ユヅキの話は終わりだが、もう少し話に付き合ってもらおう。
今度は、コーヤ、そなたへのお礼の件じゃ。」

「いやいや。先程、お礼を言って貰いましたから十分です。」

「本人がそうは言っても、皆が皆、そのように受け取るかは分からないし、
痛くもない腹を探られるよりかは、今の時点で、対処しておいた方が得策でな。
何か、希望があれば聞くぞ?」

「う〜ん。そう言われても。(少し考える)
では、フィンテルの北西にある小高い丘の土地を手に入れたので、
周りを拡張する権利を貰えませんか?」

「確か、話によれば、長い間放置されていた場所と聞いた記憶があるが、
ヴィオよ。どうなっている?」

「そうですね。コーヤ君が買った土地は、フィンテルがまだ、規模が大きかった頃の場所です。

街の外と言う事もあり、なかなか、買う人が現れずに放置されていた場所ですね。

噂では、地下には大迷宮があって、大賢者が守護する為に作った建物とか言われていましたが、
まぁ、実際に確認した人はいないようですね。」

「えー、ヴィオさん。そんなに曰く付きの物件だったんですか。
説明を受けた時は、全然、そのような事は言っていなかったですけど。」

「今のは、噂でしかないからね。確か、300年前に建築された建物だから、
下に何かが埋まっている可能性があるけど、土砂撤去すれば分かるんじゃないかな。」

僕は、思っていたよりも、厄介な建物と土地を手に入れたのだと気付かされた。

「了解した。拡張する権利を与えよう。

周りに迷惑がかからない程度に拡張して好きに使ってくれ。
眠らせて置くのは勿体無いからのう。」

話が終わったと思ったが、ソアリス王女様から重要な話が残っていた。

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