7月31日(日曜日)
ログインして、宿屋を出るとログアウトする時よりも賑わっていた。
「おお〜!すごい、賑わっているな〜。」
神殿に歩いて行くと、長蛇の列が出来ていて、列を整理する人が大変そうだった。
「コーヤ君おはよう。」
「ヴィオさん。おはようございます。すごく、賑わっていますね。」
「うん。すごい数だ。ダンジョンに入れる人より、並ぶ人の方が多くてね。この通りの状態だ。
コーヤ君は今日はどうするんだい?」
「そうですね。完了していない東地区で、
不用品回収しながら清掃して、西地区の商人街を清掃します。」
「気を付けて。いつもなら問題なくても、
今回は色々な人がいるから問題が起きる可能性もある。」
「分かりました。行って来ます。」
西地区は、商人の住宅や倉庫が多く立ち並んでいる地区となっている。
その為か、スッキリしているしきれいだ。
一回りして見たが、ゴミと言われる物は無かったし、不用品も無かった。
近くの人に聞いて見ると、有志の会の人達も仕事がある為に、清掃日を設けて清掃するが、
フィンテルも広いので、全てに行き届かない。
そこで、西地区は持ち回りで、地区の見回りをしていたようだ。
ちなみに、東地区もそうだが、基本、仕事場などは自ら清掃をしているが、
それ以外の共有スペースや路地などの、公共に関して取り決めが、以前は無かったが、
徐々に、自治意識が芽生えている。
するべき仕事がないので、北地区に来て見たが、
西地区と同様、きれいなので散策して、南地区に移動。
北地区は、領主の館や役所などの公的機関が集中している区域だけど、
上手く、緑地を配置して、考えられた設計になっていた。
あと残すは南地区。
この地区は、学校や図書館など学問を学ぶ地区と言う表の顔と、学校があった事から、
元から15歳以下の子供が多かった所に、10年前、魔物の氾濫が突然発生し、
親を失った孤児が増えて、現在では孤児院が増えている裏の顔を持つ。
中心部に近い地域は、それなりにきれいになっている。
しかし、中心地から離れるとゴミが散乱していたり、ドアや窓が壊れていたりと極端。
最初、掃除をしようと考えたが、地区全体を考える必要があり、
意味がなさそうだと思い止めた。
ここの事は、冒険者ギルドで一緒に報告しようと思い、
帰ろうと思ったその時、小さい声で苦しんでいる声が聞こえて来た。
声がした薄暗い路地に行くと、未成年と思われる女の子が、
脇腹を押さえて苦しんでいるのを見つけた。
地面に倒れ込んでいる為に、遠くから見ると大きな袋がある程度にしか見えないので、
多くの人は気づかずに、今も、路地の前を行き来している。
しかし、コーヤは小さい音で敵か味方かを判別出来る能力があった事により、
苦しんでいる声と地面と服が擦れる音から、女の子に気づく事が出来た。
女の子からしても奇跡な出会いとなった。
「(あ!見つけた!)大丈夫?・・・じゃないね。名前は言える?」
「はぁ・・はぁ・・ぐっ!・・ゆ・・づ・・き・・(気絶)」
「これは、まずいな。セリナさんに診て貰わないと・・・。」
女の子を抱っこしながら急いで、神殿へと駆け込み、セリナさんに診て貰った。
「コーヤさん、良く見つけましたね。あと10分程遅かったら、助からなかったかも知れません。
それだけ、傷が深いし、血も多く出ていました。生きているのが不思議なくらいです。」
「そこまででしたか。それにしても、服もボロボロでしたし、どうして、こんな事に。」
「身体は回復させたので、
あとは、目を覚ましてから、本人に説明して貰わないと分かりませんね。」
「連れてくる時に少し見えたんですが、脇腹の傷は剣での傷ですよね?」
「はい。たぶん、そうだと思います。
最初は、防具を着けていたけど、防具が壊れて大きな傷を負ったのだと思います。」
「あとは、この子が目を覚ますのを待ちましょう。セリナさんにお願いして良いですか?」
「もちろんですよ。元々、神殿は医療を施す場ですから。
この後、コーヤさんはどうするんですか?」
「家を探そうと思っています。」
「家ですか?どのような?」
「自給自足出来て、実験をしても迷惑がかからない場所があればと思っているんですが。」
「う〜ん、なかなか、厳しい条件ですね。」
「やっぱりそうですか?」
「はい。以前のフィンテルは、今の3倍近く広かったようです。西から出て北に行くと、
小高い丘があるんですが、その辺りまで領地だったと言われています。」
「へぇー。そんなに広かったんですね。」
「巨大地震や魔物の氾濫で、守る事が難しくなって、
徐々に縮小して今の形になったと云われています。」
「そうですか。とりあえずは、北地区で聞いてみます。
無かったら無かったらで他の方法を探せば良いですから。」
神殿を後にして、依頼報告の為に冒険者ギルドにやって来た。
「すみません。依頼の報告に来たんですが。(ギルドカードを差し出す)」
「はい。えーと、清掃の依頼ですね?」
「そうです。」
「どうやら、評判も良かったみたいで、
ギルドまで感謝を伝えに来る方もいましたよ。(笑顔)」
「そうなんですか?自分に出来る事をしただけなんですけどね。」
「(くすっ)それが好感に繋がったのでしょうね。さて、これで、依頼は完了です。
あと、薬草採取の依頼の方はどうしますか?」
「でしたら、こちらの薬草58枚の精算をお願いします。」
精算して貰ったら、大銅貨5枚になったので理由を聞くと、最初の薬草採取依頼で、
売った薬草を買った人が、他の薬草よりも良い効果を出したので、売りに出れば、
少々高くても買いたいと言ってくれたようで、ギルド側も高く買い取る事にしたようだ。
その後、北地区の不動産関連を取り扱う部署に移動した。