最終更新日 2022/06/05

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130話 無限袋再び

5月5日(月曜日)

午前11時

「さて。第3形態の対策でもするか。」

「その前に話を聞かせてちょうだい。」

「そうだな。掲示板ですごい騒ぎになっているぞ。」

「アキホお姉ちゃんに、カイト。いらっしゃい。騒ぎ?なにが?」

レイドイベントの事を考えようと思っていたら、
カイトとアキホお姉ちゃんがやって来た。

「はぁ(ため息)お前らしいな。

最初は、第二形態のタイムトライアルで、
お前が10分と言う驚異の数字を出した所からだ。」

「それまでは、知らないチームが30分切った数字で、
なかなかそのタイムを抜けそうで抜けなかったのよ。」

「そう。

そんな中、一般の見物客がいなかった事もあり、今度はチート祭りになったんだ。」

2人で現況を話してくれた。

「なるほど。一撃で倒したなら、そう思っても良いかも知れないけど、
あれと同じ戦いをしたからと言って、第三形態を倒せるわけじゃないのに。」

「コウちゃん。

そこは、強い人を脱落させて、自分が美味しい思いをしたい人や、
妬みやただ単に煽っている人とか、色々いるのよ。」

「ふぅ〜ん。それで、その後は?」

「ああ。その後は、運営に、話が行ったみたいで、映像が公開された。

そしたら、チートだとか言っていた奴らは、掲示板から姿を消したようだな。」

「見ていた私も、動きながら、攻撃のチャンスに攻撃していただけと見えたからね。

あと、土壁は、みんな、盾で防御したり、直撃しないようにしていたんだけど、
壁を作ると言う発想が無かったのよ。」

逆にその発想が無い事にびっくりした。

「え!?普通、物影つまり障害物を盾にして戦うでしょ?

あの時は、土が目に入ったから、作っだけなんだよね。

後で考えたら、瞬動でレイドボスの裏に回ったほうが、安全だと思ったから、
強力な攻撃が来たら、そうしていたけど。」

「そこは、考え方の違いだな。コーヤの様な対応出来ているのは、他にもいる。

現在、最深部攻略している奴らは特に、
色々と試行錯誤して、効率の良い、戦い方を模索している。

しかし、大多数は、ファンタジーゲームと言う思い込みがあるから、
魔法でどうやって、敵の攻撃を防御するかとかが最初に来る。

だから、現実とファンタジーを融合した考え方が出来ない人が多い。」

「でもさ。その、最前線組?も、
僕の攻撃力がチートなら、その人達もそうなるんじゃ?」

「(苦笑)コウちゃん。それは、違うわ。その人達は、課金アイテムを使っているから。

でも、コウちゃんの装備は、課金で得たのじゃ無いでしょ?

だから、不正をしているんじゃないかって話になるのよ。」

「はぁ(ため息)面倒臭い人達だ。

そもそも、不正して、強い敵倒しても意味無いだろうに。」

「まぁ。そこは妬みの部分が大きいと思うわ。

自分がこんなに苦労しているのに、あの人はあんなに楽してるってね。

そうそう、さっき、カイトくんに聞いたけど、みんなに装備をプレゼントしたそうじゃない?

私達にはないの?」

「ええ?アキホお姉ちゃん、必要ある?
だって、その装備だって、僕が作った装備と大差ないし。」

「確かに基本性能は、大差無いけど、コウちゃんの場合、隠し玉とかあるんでしょ?

その辺りが、私達には不足しているの。だから、私達にもコウちゃんの装備ちょうだい♪」

「ちょっと待って。(素材確認中)ギリギリの素材もあるから(素材が書かれた紙を渡す)
その素材を持って来てくれれば、作ってあげるよ。

それと、不用品やデザインの参考に、なりそうなのがあれば、欲しいかな。」

「素材の件は了解したわ。なんで不用品なんているの?お金ならあるわよ?」

「お金はあるから要らないんだ。

それよりも、創作のヒントになったり、隠された良品の方が、色々と後に役に立つから。」

アキホお姉ちゃんが、拠点の方を見て言う。

「でも、この拠点を維持するにもお金かかるでしょ?お金が要らないほどって、どれ位?」

「そうだなぁ。

前にフィンテルダンジョン産の不用品の装備品を売ったんだけど、それで、金貨1200枚。

拠点に埋もれていた石などから、宝石が出て来たから、
それを売ったら、貴族などの大金持ちが買った様で、黒金貨2920枚が戻って来たんだ。

それに、宝石の売却益を得てから、半年程経つけど、黒金貨10枚も使っていないし。」

この話に、カイトが食い付いて来た。

「コーヤ!その話、聞いた事ないぞ!」

「まぁ。必要無かったからね。」

「ちっ。そんな美味しい物件だったなんて。」

「そうだったんだぁ。でも、どうやって、きれいにしたの?」

事情説明する。

「え!?無限袋なんて存在したの?」

「掲示板の噂の正体はそれだったのか。」

2人は正反対の反応を見せた。

「これが無限袋だよ。」

アキホお姉ちゃんに無限袋を見せる。

「うん。確かに鑑定結果で〈魔法袋(無限)〉になっている。これって、簡単に作れるの?」

「基本は、空間をイメージして、魔法袋を合成して行くんだ。

練度によって、容量の部分が変わるよ。

前に、アカネさん達にも、お願いされて、作り方教えたんだけど、
シェーラさんが相性良かったみたいで、数回練習したら、無限袋作れていたね。」

「コウちゃん、素材があれば教えてくれる?」

「うん。別に構わないよ。」

「なぁ。コーヤ。俺達にも、教えてくれないか。

みんなで頑張っていたんだが、なかなか出来なくてな。」

「うん。構わないよ」

この日は、素材を伝えて解散となった。

5月6日(火曜日・振替休日)

午前11時

拠点にログインすると、ミュウちゃんが怒っていた。

「お兄ちゃん!なんで、無限袋の事、教えてくれなかったの!」

ミュウちゃんの近くにいたアキホお姉ちゃんが、苦笑いしていた。

「あ〜。アキホお姉ちゃんに聞いたのか。

聞かれなかったし、何より、あの当時は国王様の依頼や、
装備の大量生産なんかで考える事が多かったからね。

その後も、相談されなかったし。」

「むぅぅぅぅ。」

ミュウちゃんは納得出来ないのか、頬を膨らませている。

そんな、ミュウちゃんにアキホお姉ちゃんが近付いて話をする。

「ほら。ミュウちゃん。コウちゃんにはお世話になっているんでしょう?

それに、そんなに良い装備も貰ったんだし、ね?(威圧)」

というより、威圧で黙らせているような・・・(苦笑)

「(威圧にたじろぐ)ま、まぁしょうがないかぁ(汗)。

お兄ちゃんには、世話になっているし。

ねぇ。カスミ、魔法袋小100枚✕人数分、手に入らないかな?」

「そうねぇ。今後の事を考えると欲しいわね。

わざわざ整理する必要も無いわけだし。

王都に行けば、大量に手に入れられると思うわ。」

「よし!早速、行ってこよう!」

どうやら、ミュウちゃん達は、これから、魔法袋を入手する為に奔走するようだ。

「コウちゃん。ごめんね。それと、みんなの装備の素材持って来たわ。」

アキホお姉ちゃんが、申し訳無いと言った顔で謝って来た。

「いや。別に構わないよ。あると便利なのは確かだし。

装備は直ぐには無理だけど、一緒に頼んだアンケートを考慮しながら作るよ。」

「私にも教えて貰っても良いかしら?」

アキホお姉ちゃん達の装備に付いて話をしていると、イオさんがやって来た。

「イオさん、いらっしゃい。誰に?」

「無限袋の事、アカネに聞いたわ。

たまたま、アイテムの保管に関して、話していたら、
この話になって、頼んだら、快く教えてくれたわ(にこ)」

イオさんには、逆らわないようにしよう(苦笑)

「素材があれば、教えますよ。」

「素材って、魔法袋小を100枚だつたわね。聞いて、集めて来たわ。」

そんな事をしている間に、参加者が集合して来たので、無限袋講座を開いた。

「まず、合成を取得していない人はしてちょうだい。」

カイトが手を挙げて質問して来た。

「コーヤ。作る人だけが覚えていれば良いか?

俺達の場合、集中力のある女性陣にお願いしていたんだが。」

「う〜ん。でも、合成は誰が覚えていても損はないよ?」

「そうか?特に俺の様な前衛職は関係ないと思うんだが。」

「カイトは、合成を戦闘では役に立たないと思っているようだけど、全然違うよ。

例えば、剣が折れて、撤退を余儀なくされた。でも、敵は、逃げる隙きを与えてくれない。

こんな時、カイトならどうする?」

「う〜ん。そうだなぁ。とりあえず、袋から使えそうなのを探すな。隠れながら。」

「ほとんどの人は、そう答えるだろうね。

それで、例えば、あったのが薬草しかない。どうする?」

「む。その場合は、諦めて、魔物に体当りして、逃げる隙きを作るだな。」

「あ〜。コーヤさん!わたし分かったかも!」

ユニさんが気が付いた様で、答えを言って貰った。

「じゃあ。ユニさんなら、どうする?」

「まず、薬草を合成出来ればして、体力を回復する。

そして、わたしの場合は弓だから、
森であれば落ちている枝で、矢を合成で作って脱出する!」

「うん。最悪の事態を逃れれば良いわけだから、ユニさんの回答で良いと思うよ。」

「なるほど。

仮に手元に鉄があれば、本来の力は出せずとも、緊急避難的に、合成で修復して、
難を逃れる事も可能なわけだ。」

「そ。もちろん、今のは例えだけど、遠征とかだとあり得る話だと思うし。

常に最善の状態を保てれば良いけど、現実だってそれは無理だしね。

なら、常日頃から、手元にある物で最善を尽くす事を考えるのは、
無駄な事では無いと思うんだ。」

その話をしてからは、参加者全員が合成を取得した。

「さて。次は、空間を拡張して行く訳だけど、
例えにすると、油揚げって、ゆっくり拡げないと、すぐに破けてしまう。

それと、同じで慣れるまで休憩はさみながら、ゆっくりと作業した方が良いよ。」

「う〜ん。

私は、一応料理出来るけど、
餃子とかいなり寿司の具を入れるのって苦手なんだよね。」

アキホお姉ちゃんが悪戦苦闘していた。

「あれ?アキホお姉ちゃん意外だね。出来るイメージなんだけど。」

「そう?昔はそうでもなかったんだけどね。」

「これは、慣れだから、みんなもリラックスしながらの方が成功すると思うよ。」

1時間近く経つと、出来る人と出来ない人の差が広がって来た。

「うきゃゃゃぁ!無理!」

「ふぅぅぅ。私はだいぶ慣れて来たわ。

ミュウには、みんな期待していないから大丈夫よ。」

「カスミ!ひどいよぉ!」

僕とアカネさん、リンネさんは、アキホお姉ちゃん達、6人の装備デザインを考えていた。

3時間くらい、試行錯誤して7割程、デザインは完成した。

それで、無限袋作業会場に行って見ると、死屍累々になっていた。

「これは、私達と同じね。」

アカネさんが、以前の自分を見るように言う。

そう。アカネさん達と同じ様に、相性が良くて出来る人は、黙々と作業をして、
相性が最悪な人は、庭に死んだ魚の様な目で、仰向けで寝ていた。

「え〜と。何人生き残った?」

僕が聞くと、やはり、各パーティー1人くらいしか残らなかった。

そんな感じで、解散した。

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