最終更新日 2022/06/05

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129話 海の街のレイド

4月21日(月曜日)

2週間が経過した。

この間、みんなから不用品を貰ったり、技術力の向上を頑張ったり、
イオさんにレクチャーしたりと、それなりに充実な日々を送っていた。

貰った中で、鑑定した結果、戦場で使える物は返した。

一番多いのは、やはり過去に使っていた普通の鉄製装備で、溶かしてインゴット化。

次に、本などの紙系。

札の紙片30枚、暗号らしき文字がある紙片が7枚、魔法陣が書かれた紙片4枚、
普通紙50枚、テアミンの樹皮で作った魔法紙20枚、???の本1冊、短冊型の本1冊

あと、面白そうなのは、ビー玉サイズの玉が23個、四角のコースター7枚があった。

あと、魔法カードをイオさんの要望で店に並べる事となった。

イオさんいわく

「初級から中級辺りの人だと、スキル管理大変でしょ?

なら、お試し出来るアイテムは売れると思うわ。」との事。

商売に関しては分からないので任せる事にした。

4月30日(水曜日)

午後8時

イベント告知

≪プレイヤーの皆様へ。これより、レイドイベントを開催します。

期間は、明日から1ヶ月となります。

場所はアクセリアの海に面したダンジョンで、レイドボスの名はクラーケン。

前回と同様に、魔物から出るレア素材の確率上昇のバフ効果の付与、
宝箱の配置をしていますので、
レイドボスでポイントを入手し辛い人でも、楽しめるようになっています。

たくさんのご参加お待ちしています。≫

突然、通知が来た。

「これは、去年、見つかったと言うダンジョンかな?」

「よう。コーヤ。今の見たか?」

イベント告知の事を考えていると、カイトが拠点に来た。

「2回目のレイドボスだね。今回はクラーケンらしい。難しそうだね。」

「今回は、俺達も参加する。前回は散々だったからな。」

「でも。気を付けた方が良いよ。どうにも、このタイミングが気になるなぁ。

しかも、前回は、隠された地下ダンジョンだったのに、
今回は、去年見つかったダンジョンだ。

運営も、簡単にはクリアさせるつもりも無いんだろうし。期間も長い。」

「それは、俺も気になった。

前回はあれだけの強さで10日だったのに、今回は1ヶ月。

色々と隠された秘密があって、それを解き明かさないと、クリアにはならないんだろう。」

「水辺での戦いはどう?厳しいと思うけど。水深が浅くは無いだろうし。」

「そこで、水中でもいつもと同じく戦える、アイテムはないか?」

「なるほど。

確かに、VR系ゲームでは、水中では戦わず、地上に敵を引きずり出して戦うか。

それに、だいたいが、装備の重さによる動きづらさ、水中による動きづらさ、
ターゲットへの攻撃のしづらさの要素が、加算されて、水中に落ちたら攻撃出来ないよね。」

「そうなんだ。

海に面してるダンジョンだからな。地上部分は問題なくても、
地下の部分で、海と繋がっている可能性が高い。

最終的に、水中でも空気がある状態で、戦っても分が悪すぎる。」

「とは言っても、空気が無ければ、空気の膜を作ったりするば良いけど。

動きの制限を解除が、1番難しいかな。今まで、水中の事は考えていなかったからね。」

「俺達も同じだ。ダンジョンにある装備品で、何とかなるかも知れない。

ただ、保険は必要だからな。時間かかって良いから、考えておいてくれないか?」

「分かった。一応は考えておくよ。」

「助かる。では、俺はアクセリアに行く。メンバーは先に行って下調べして貰っている。」

「いってらっしゃい。」

カイトを見送った。

5月2日(金曜日)

昼休み

「やっぱり、一筋縄では無かった。」

昼休みが始まると、海人がぼそっと話した。

「うん?ダンジョン行ったのか?」

「ああ。完全に運営に騙された。」

「何があったのよ?そんなに悪質だったの?」

伊織さんが聞くと話し出した。

「昨日も平日だったから、午後8時に待ち合わせをして、ダンジョンに行った。

ところが、レイドボスが居なかった。」

「へ!?レイドボスが居なかったの?」

「そうだ。地下20階のダンジョンだから、俺達にとっては、すぐに終わる。

さくさく魔物倒して進んで最深部のボスを倒した。

この最深部にいるかと思ったけど、いなかったから、
ボス部屋に通路があって、イベントダンジョンに繋がっていると思ったんだ。」

「ところが、その通路が見つからなかった?」

牧ノ原さんが聞く。

「そうだ。

諦めて外に出るパーティー、意地でも見つけると意気込むパーティーなどがいた。

俺達は、ボス部屋探しても見つからないなら、
他の階にあるだろうと考えて、確かめながら戻った。」

「なるほど。僕はなんとなく分かったよ。

騙されたって言う所から、レイドボスダンジョンには、1階で繋がっていた訳だ。」

普通の人であれば、さすがに別ダンジョンとは思わないだろう。

「そうだ。懸命に探したが見つからず、まさかなって考えていた場所で見つかった。

その時、運営にしてやられた!と思ったんだ。」

「ああ。それは、お気の毒様だったわね。

普通は、海に面したダンジョン内にあると思うもの。

まぁ、1階もダンジョン内だけどね。」

伊織さんが感想を言う。

その言葉に、海人が悔しそうな顔をした。

「陸原君。イベントダンジョンに行った人はどれだけいたの?」

道下さんが軌道修正する。

「そうだなぁ。俺達がやっと見つけた時には、20組程がいたと思う。

その後、みんな、心へし折られてしまっていたから、
イベントダンジョンに入らずに解散だ。」

「なるほど。そう言う事だったのね。

私のクランの店の近くを通る人の中に、イベントダンジョンなんて無いじゃないかって、
愚痴っていた人が多くて、何があったのかしら?と思っていたのよ。

ただ、新ダンジョン産とでも言おうかしら。

そちらの装備品を、店にも売りに来る人はいないわ。」

「まだ、見つかっていないのかな?それとも、見つけたけど、売るほどでは無いのか。」

「俺達は、今日から本格的に探索するつもりだ。」

「頑張ってよ。僕もゴールデンウィークに、余裕がありそうなら行って見るよ。」

5月4日(日曜日)

午後1時

「う〜〜〜ん(背伸び)天気も良いし、潮風も良い感じだ。

あ〜。あれが、ダンジョンか。」

フィンテルから南下して、アクセリアの街まで来た。

ダンジョンは、南を向いて左にある崖が崩れて発見されたようで、
波打ち際くらいの水深しか無いので、誰でも出入り出来そうだ。

ダンジョンには、多くの冒険者で賑わっていた。

「僕も入って見るか。」

どうやら、アクセリアの騎士団らしい人物が、交通整理を行っていた。

その人の指示に従って、2階へと降りて行く。

この辺りから、のんびり行く人とレイドボス目当ての人に分かれる。

僕は前者だ。

たまに出て来る魔物を倒しつつ、マッピングスキルで、地図を完成させて行く。

「う〜ん。やっぱり。レイドボスの事しか頭に無いのかな?」

フィンテルの時と同じく、宝箱が配置されているのに、気が付いていない人が多い。

レイドボスに有効な装備品箱と消耗品箱を手に入れて、鑑定すると、
以前は、固定だった消耗品箱の中身は、ランダムとなっていて、
運が良ければ、最上級の回復薬が手に入るらしい。

そして、10階まで降りて来た。

この階まで、フィンテルの神殿地下ダンジョンには存在した、階層ボスが居なかった。

不思議に思いながらも、20階まで降りて来ると、
大きな部屋に恐竜並みの魔物がいて、
30人近くで戦っていたが、タイミング良く、倒すところのようだ。

ちなみに、20階までに宝箱は、1階あたり10〜15個程で固定ではないらしい。

僕が入手したのは装備品・消耗品各268個だった。

「あと、ひと息だ!ここを勝って、次のラウンドに行くぞ!」

うん?ラウンド?

そんな言葉の意味を考えていると、部屋に衝撃が響く。

「よし!どうだ!本物であってくれ!!!」

魔物を倒すと、天井から赤と白のランプが降りて来た。

数秒後、白ランプに明かりが付き、歓声が湧き踊る。

「みんな!これで次に進める!!行くぞ!!」

「(メンバー)おう!!!」

奥に出口があるようで、ボス部屋から出て行った。

「へぇー。変わった趣向だなぁ。」

「クイズを融合した感じね。」

声のした方向を見ると、イオさんと、クランメンバーと思われる数人がいた。

「あ。イオさん達も攻略ですか?」

「いいえ。私達は、もう、レイドボスの2回目までの変異に勝っているわ。

ただ、面倒な事に、21階以下に行く為には、ここを通らなければ行けないのよ。

だから、近いうちに迂回路を作ろうかと思っているわ。」

「なるほど。イオさんは、宝箱何個取れましたか?」

「あら?途中にあったかしら?」

後ろにいるイオさんのクランメンバーも知らないようだ。

「その話を聞かせて貰っていいかしら?

コーヤさんなら、イベント武器のウィンドラスで一太刀で、終わらせる事が出来る筈よ。」

「そんな程度なんですか?」

そうやって、話をしている間に、挑戦する人もいなくなったようだ。

「コーヤさん。人もいなくなったし、当たりが出るまで、省エネで行きましょう。」

その後、僕がボスの近くに行くと、レイドボスが現れ攻撃を仕掛けて来た。

確かに、このボスは一太刀で倒すことが出来た。

「思っていたより、さくっと倒せたなぁ。」

「まぁ。ここは、新規組や再開組の為だと思うわ。」

1回目で当たりを引いた為、
レイドボスを倒した報酬を貰い、イオさん達と部屋を出た。

部屋を出ると、普通のダンジョンに戻っていた。

「サイトの攻略情報を見る限り、第五形態まで変異するみたいで、
ダンジョンの階数も100階もあるわ。」

「20階毎に、強くなったレイドボスを倒さなければ行けないと。」

「そう言う事よ、廃人集団でも、まだ、完走していないみたいだから、
最深部の100階のレイドボスは、生半可な力では勝てないのでしょうね。

多分、知恵も必要なのでしょう。」

「その話を聞くと、期間が1ヶ月なのも納得ですね。」

「それで。宝箱の事だけど。」

僕は、マッピングと宝箱の事を伝えた。

「話には聞いていたけど、マッピング無いと、
私達のような生産素材を回収したい場合は、苦労しそうね。

ちなみに、マッピング無くても、見つける方法は無い?」

「う〜ん。一番簡単なのは、壁に手を付けて進めば、反応するから、
即席には対応出来ると思いますよ。」

「それしかないようね。」

ゆっくり素材探しをすると言うイオさん達とは、別れて、40階まで降りて来た。

この間も、残っていた宝箱は取り、
他に何があるかな?って感じに鑑定を常時使用していた。

40階は第2形態で、100名程の集団が、防御特化しているのか、苦戦しているようだ。

「あれ?コウちゃん。コウちゃんも挑みに来たの?」

「アキホお姉ちゃん、こんにちは。

宝箱とか、素材とか気になったから、来たんだけど、ここのは、硬いの?」

「そうね。私達も初見ではダメだったけど、3回目で勝てたわ。

ただ、運が悪くて、今日の午前中にクリアするまでに、10回以上戦わされたわ。」

「それはお疲れ様(苦笑)」

「あの形態は、硬さもなんだけど、思っていた以上に体力があるから、
攻撃疲れしている時に、反撃されて、体力をごっそりと持って行かれるのよ。」

「それは、厄介だね。水中に潜られる事は無い?」

「この形態じゃ無くて、次にはあるかも知れないわね。」

周りを見ると、集団を見て戦い方を勉強していたり、ただの見物客が、
結構な数いたけど、知らない間に、波が引くようにいなくなっていた。

「あれ?みんな諦めたのかな?」

「そうでしょうね。

私達の様に、多くの攻撃方法を持っているなら、挑んでも勝てる見込みあるけど、
そう言うのが無ければ、厳しいでしょうね。

あとは体力と魔力が少なすぎる人とか。

なんせ、最初が、初心者向けに簡単にしているから、
そのままの勢いで来た人は、戦略練り直しを余儀なくされるだろうしね。」

「なるほどねぇ。

あの集団も少しずつ人数が減って来ているから、そろそろ、負け確定かな。」

「そのようね。コウちゃんは、戦って見る?」

「この武器が(ウィンドラスを出す)どこまで、通用するか知りたいし。」

「そう。見てて良い?」

「良いけど。そう言えば、(周りを見渡す)メンバーは?いないよね?」

「メンバーは、消耗品の買い出しやアクセリアで使えそうなアイテム探しをしているわ。

私は他の人の戦いを見て、第三形態のイメトレをしていたの。」

「そうだんだ。あ〜。とうとう、全体攻撃で撃沈かぁ。」

「コウちゃん。観させて貰うね。」

僕が、レイドボスの領域に入ると、リセットされたレイドボスが現れる。

第二形態を鑑定で見ると、体力は約200万だった。

「さて、硬いらしいけど、最初は、普通に!」

剣での一撃で50万近く体力を削れた。

その直後に、水魔法の全体攻撃が来るが、波打ち際の土で土壁を形成して難を逃れる。

「う〜ん。あの攻撃は厄介だ。よし、次は槍で!」

2回目の攻撃は、槍で剣と同様、スキルなしの攻撃で、やはり50万近く体力が削れた。

どうやら、このイベント素材武器なら第三形態でも、多くの体力を削れそうだ。

考えている間に、全体攻撃が来たが、瞬動でレイドボスの真裏に逃げた。

次は弓で攻撃すると25万程しか削れなかった。

直接攻撃と関節攻撃の差だろう。

分析スキルで調べると、
設定されているダメージをオーバーしたら、全体攻撃をして来るみたいで、
今回は、オーバーしていなかったようで、攻撃が無かった。

次は、弓レベル5のスキル〈アローレイン〉で攻撃した。

そうすると、50万近くの体力を削る事に成功。

ここで異変に気づく。

ダメージ量は、今までの攻撃で一番多くの75万近く削れても良いものだったにも関わらず、
倒せていないのはおかしい。

しかも、攻撃を仕掛けて来ない。

レイドボスを鑑定して見ると、体力が2割切ると体力を回復すると言うのと、
最大攻撃が1分後に来るとあった。

どうも、準備に10分掛かるらしい。

最大攻撃をさせないように、槍スキル〈スピア・ランセ〉を発動しし攻撃する。

攻撃が当たり、なんとか、最大攻撃が出る前に倒す事に成功する。

嬉しい事に、本物だったようで一発クリアになった。

報酬を貰って、領域から離脱する。

「ふぅ〜。なんとか、勝てて良かったよ。」

領域から離脱すると、アキホお姉ちゃんが、怒りながら迫って来た。

「コウちゃん!なんなの!あれ!」

「(剣幕に押され)な、なにが?」

「あの武器よ!スキルなしで、50万も体力を削るなんて、見た事無いわよ!」

「あれ?教えていなかった?

ウィンドラスは、イベント装備素材を合成して作ったんだ。

レプリカは、アカネさんやカイトに渡して、第五エリアボスでテストして貰ったけど、
本物は検証していなかったからね。」

「はぁぁ(ため息)なんてもの作るのよ。でも、第三形態もあれなら勝てるんじゃない?

スキルを使ってあの威力だもの。

う〜ん、こんな事なら、装備素材取っておくべきだったか。」

「さあね。今日は帰るけど、もう一度来て、第三形態には挑んで見ようかな。

じゃあ、僕は帰るね。」

「うん。詳しい話は拠点で聞かせて。」

その後、拠点に帰って来た。

この日の海のダンジョン産装備品・消耗品の宝箱各538個入手出来た。

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