最終更新日 2022/06/05

※Social Postage Stamps

    ライトノベル へようこそ Welcome to novel


126話 新年度

4月7日(月曜日)

午前8時

今日は、入学式と始業式が行われる為、
母校橘学園高等部の門では、入学式の前の写真撮影会が行われていた。

「ふっふっふ。これで、わたしも高校生!」

母方の従姉妹美羽ちゃんは、知り合いと写真を撮り合いご満悦だ。

そんな様子を、2年の教室へ行く途中の窓から校門を見ている。

「まだ、俺達が入学してから、1年しか経っていないんだな。

俺達も周りから浮かれて見えたのかな?」

なんとはなしにつぶやいた海人の言葉に、道下さんが答えた。

「そうじゃないかな?

私は、服選びで迷って、校門に来た時には、みんな写真撮り終わっていたから。

でも、時間は余裕だったから、焦らなくて良かったって反省したけど。」

海人が、新入学生の服装を見て、疑問を投げかける。

「あれ?うちって私服OKだったか?」

海人の質問に、牧ノ原さんが答えた。

「そうだよ。

去年の入学式には、結構な私服率だったんだけど、
私服だけで登校するのは厳しい!ってなって、ほとんどが制服になったと聞いたわ。」

入学式30分前になり、新入生は教室へ入るよう促される。

「僕達のクラスはどこだっけ?」

「確か、5組は角部屋だった筈。お!あったあった。」

僕達4人は無事に、2年も同じクラスに入る事が出来た。

これからの2年間は一緒のクラスだ。

ただ、2年5組の名の中に、見覚えのある名があったのだが、
誰も気が付いていないようだ。

ちなみに、美羽ちゃん、羽衣ちゃん、美鈴さんの3人は、
皆、違うクラスになっていた。

昼休み

「進級して初日にテストっておかしくない?

光矢君に言われて、復習していなかったら、1問もダメだったかも。」

道下さんが、不満を言う。

「(苦笑)でもさぁ。初日にテストって、普通に考えられるよね?」

「それは、光矢だからだ。

普通は、進級して初日は、復習で終わると考えるだろ。」

「テストは復習の為でしょ?ならば、予想内だと思うんだけど。」

テストの事を吹き飛ばそうと、道下さんがゲームの話を始める。

「そう言えば、大型アップデート昨日あったんだよね。

それに、予告では、今後、小粒のイベントを常設イベントとするみたいだけど。」

僕は、内心苦笑しつつも、会話に加わる。

「うん。誰もが1番になれるチャンスを与えたんじゃない?

今まで、生産系のイベント少なかったみたいだし。」

「光矢は、これから、どうするんだ?

第五エリアボスも、初撃破されたし、目標が無いんじゃないか?」

「あれ?海人は、再挑戦しないの?」

「動画を見て、道下に話も聞いたんだが、バフのランダムがなぁ。」

海人は腕を組みながら、唸っている。

「あら、それなら、長期戦になっても良い様に、
ポーションを多く用意するとか、朱音みたいにアイテム作るとかあるでしょ?」

海人の後ろから声があり、海人がびくっとなった。

「なっ!」

「ちょっ!伊織!なんであなたがここにいるのよ。学校違うでしょ!?」

「簡単よ。あなた達が面白いから、編入試験を受けて合格したの。

さすがに、同じクラスになるとは思わなかったけどね。」

伊織さんが近くの席を寄せて座る。

「そりゃそうでしょう。でも、友達いたんじゃないの?」

「そうね。話をしたら、止める人もいたし、物好きだと言う人もいたわ。

でも、学力も同じくらいだし、家からなら、こちらの方が数分近いし、
あとは、前の高校は、付属じゃないから、大学で迷っていたんだけど、
こちらなら、学力があれば、上に行けると言うのもあって決めたの。」

「わたしは、まだ、大学の事なんて考えてもいなかったわ。」

「それで、陸原は再挑戦するの?

いつまでも、ランダムが怖いと言っていたら、双子に追い越されるわよ。」

「うっ!確かに。近い内に再挑戦する。

最初は、イメージ出来なかったが、今度は、動画があるから、
アイテムを多く持って行けば、撃破出来るだろう。

裏ステータスも、少しずつだが、上がっている感じがあるからな。」

海人は、以前よりも戦闘力に自信が付いたようだ。

「光矢さんは、あの装備、まだ使えると思う?」

伊織さんも、同じ疑問がでたようだ。

「どうだろう?

昨日の大型アップデートで、2つの隣国が実装されたけど、
機械帝国と精霊王国となっていたから、どこまで使えるかは微妙かな。

第五エリアボス限定になるかもね。

ただ、今後のイベントの交換品に、装備素材があるかどうかで、
隣国の戦闘力を知る試金石になりそうかな。」

「やはりそうよね。

朱音から、イベント素材の話を聞いて、今から集めるなら、
ドロップしか無いと思うの。

でも、情報サイトを見ても、どこにも書いていないから、
どうしようかと考えていたのよ。」

僕も情報収集しているけど、伊織さんも色々としているようだ。

「これは、勝手な予想だけど、今まで、古龍・龍王の2種しか無かったのに、
前回のクラン対抗戦の交換品には、古龍王が出て来た。

これは、今後はドロップなどで入手出来るようになる事を、
前提としているんじゃないかと思っているんだ。」

「なるほどな。光矢の考えが正しければ、5月から常設される天空の島、
後は、今までのダンジョンの報酬に加わったりするのかもな。」

海人がこの様に話すと、伊織さんが考察を話す。

「光矢さんの考えの可能性は否定出来ないわね。

4月から、小粒ではあるけど、色々と実装されたし。

今後も、装備素材が出て来るなら、私の店で買い取ろうかしら。」

ここで、伊織さんに提案しておく。

「伊織さんの鑑定レベルは?」

「確か、25まで行っていないと思うわ。」

伊織さんは、思い出しながら答える。

「じゃぁ、30まで頑張って貰って、不要品の回収をすると良いよ。」

「不要品の回収?」

伊織さんは、怪訝な顔をする。

「そう。多くの人は、鑑定を重要視していないから、
色々な場所で貰った物を、溜め込んでいたりすると思うんだ。

でも、その中には、有用な品もあって、以前話したかどうか忘れたけど、
”天使の羽”について話したっけ?」

”天使の羽”で思い出したのか、道下さんと牧之原さんが声を上げる。

「ああ。あれね。あれは不思議だよね。」

「本当。普通なら、捨てていてもおかしくないだろうし。」

「私は知らないわ。それに、2人の話では見当が付かないわね。」

伊織さんは、考え込んでしまった。

「俺も初めて聞いた。その”天使の羽”って何なんだ?」

「これは、僕が、ダンジョン産の装備が余ってしまって、
ヴィオさんの騎士団でも多く持って行って貰えなくて、
フィンテルの噴水広場で露天販売したんだ。」

「ああ、あの時か。

俺も、掲示板でしか知らないが、おかげで全部位揃ったとか書いていたな。

あれは、光矢だったのか。」

海人は当時を思い出しているようだ。

「で、午後2時半くらいから、人がいなくなって来たから、
他の用事があったから店じまいしたんだ。

そうして、用事を終えて、噴水広場の近くを通ると、
6人パーティーの1人の冒険者が、地面に崩れ落ちていて落胆していた。

色々な事情で、ダンジョン産の装備が手に入らなかったから、
噂で聞いた露天販売に来たけど、既に無くなっていた。

ただ、まだ、在庫もあったから、その人達に売る事にしたんだけど、
お金を持っていないと言っていたから、
所持品で僕が興味ある品があれば、それで良いとしたんだ。

そうしたら、ただの羽を鑑定すると、”天使の羽”が偽装されていると出た。

詳しく、内容を見ると”神族のいる神界に入る為の鍵”とあった。」

ここまで話すと、静かに聞いていた伊織さんが話し出した。

「まさか、あの話が本当だったなんてね。」

「あの話?」

今度は、僕が知らない話だった。

「ええ。本店にいる時に、お客から聞かれたの。

神族にも勝てる武器は無いかとね。

詳しく聞くと、第五エリア付近の村に、記憶喪失の神族がいるようなの。

時期は、去年9月の防衛戦の頃よ。

そのお客は、鑑定で知ったらしいんだけど、
もしかしたら、同じ神族が探しに来ると思っている様で、武器を探しているって。」

「もしかして、繋がった話なのかな?」

どうも、話が繋がっている様に思えた。

「時期的にも、その神族が落とした鍵の様にも見えるよね。」

「うん。でも、去年は魔族が二度襲来したけど、今年は、神族って事なのかな?」

「う〜ん、一度は関連のあるイベントが起こりそうだと思うけど・・・。」

道下さんと牧之原さんが、神族について会話している。

「話を戻すと、”天使の羽”の様に偽装された品もあるし、
レベル30になれば、大抵の品を問題なく鑑定できるよ。

第五エリアボスの時は、
海人が置いて行った、深層心理を知る事が出来る本が活躍したし。

不要品の回収は、お互いにとっても良いと思うんだ。」

海人が怒り出した。

「あれは!あの時、なんで教えてくれなかったんだ!?」

「だって、要検証とは思ったけど、まさか、ラスボスに効くと思わなかったからね。

あれを使いたいと言って来たのは、道下さんの方だよ。」

その時、別の話をしていた道下さんが話に加わった。

「わたしの名が聞こえたけど、何の話?」

「ああ、ほら、深層心理を知る本を貸してくれと言って来たでしょ?

あの時の話をしていたんだ。」

「なるほど。あの時は、陸原君達が10%でダメージが少なくなったと言っていたから、
光矢君に、袋の中の物で使えそうなのがあれば借りていい?って言ったの。

そうしたら、深層心理を知る本が入っていて、
光矢君はボスに通用するかは分からないと言っていたんだけど、
せっかくだから、貸して貰う事にしたの。」

「陸原に足りないのが分かったかも知れないわね。

朱音みたいに、予測して必要な品を揃えると言う思考が足りないように思うわ。」

「ぐっ!言い返せない。」

海人は悔しそうにしている。

「そうそう。光矢さん、朱音が2度使った銃を店に置かせて欲しいの。

威力があそこまで高くなくても、パーツによっては、
特化したり、多用途で使ったり出来ると思うの。」

「銃の作り方なら、拠点に置いてあるから、自由に見て。」

「ありがとう。」

この後も話に花が咲き、昼休みが終わる。

午後8時

入学を祝う会

「受験組の人、受験お疲れ様!そして、合格おめでとう!乾杯!!!」

「(参加者一同)かんぱ〜〜〜い!!!!!」

いつものメンバーで、入学を祝う会をする事になった。

残念ながら、アキホお姉ちゃん達は、別の用事が重なり欠席となった。

「えー!受験組を代表して、わたし、ミュウがお礼を言います!

皆さん、わたし達の為に集まってくれてありがとうございます!

そして、料理を作ってくれた、お兄ちゃんやリンネさんも、ありがとう!

これからも、よろしくお願いします(深々とお辞儀)」

「(参加者一同)パチパチパチパチ!!!!!」

1時間程、話ししたり、一芸を披露したり、騒いで終わりの時間になった。

「さて。今日は、これでお開きにしたいと思います。」

「えーーー!お兄ちゃん、まだ、9時だよ?いつもなら、10時くらいまでするのに。」

ミュウちゃんが抗議する。

「そう。いつもならね。はい。高校入学のお祝いだよ。(机に置いて行く。)」

「まさか。お兄ちゃん。新装備?」

シエルちゃんは、目の前にある箱を早く開けたいと言った表情だ。

「ほら。開けて開けて。」

「うん!」

7人は箱を開けて、早速、装着する。

「すご〜〜〜い!かわいい!」

「本当。それに、武器によって少しデザインが違う。」

「デザインに関しては、僕じゃあ良く分からないから、
アカネさんとリンネさん共同制作だよ。」

「アカネさん!リンネさん!ありがとうございます!(深々とお辞儀)」

ミュウがお辞儀をすると、他の6人も倣って深々とお辞儀をする。

「気に入って貰えて良かったね。リンネ♪」

「そうだね。アカネ。(にこっ)」

「お姉ちゃん!ありがとう!大事にするね!」

あくあさんが、リンネさんにお礼を言っている。

「詳しい内容は、箱に入れてあるから各自読んでおいて。」

「ねぇみんな!早速、試しに行こうよ!」

早く戦闘に行きたいと言うミュウちゃんを、カスミさんがストップをかける。

「ミュウ少し待ちなさい。少し、手慣らしした方が良いわ。

このままじゃ。弱い敵にも死に戻りするわよ?」

「カスミの言う通り。手慣らしした方が、力を出しやすい。」

カスミさんの言葉に、シエルちゃんは同意する。

本来なら、それが正解なのだろうけど、前回の装備に細工をしてあったのだ。

「それは、必要ないよ。箱に入れた紙に重要事項として書いたんだ。

今まで使っていた胴鎧の中に、情報集積する魔石を組み込んであるから、
それを、新しい装備に付け替えるだけで、今までの動きが出来る筈だよ。」

7人は、付替え作業を行う。

「あれ?さっきまで、違和感あったけど、今は無い。」

「うん。すごく、しっくり来る。」

「カスミちゃん!」

「分かったわ。みんなも良い?あくあも私達と行きましょう?ミュウお願い。」

「了解!じゃあ!お兄ちゃん!行って来るね!」

ミュウ達、7人は走り出した。

「ふふふ。余程嬉しかったんでしょうね。」

「みんなのもあるので、持って行って下さい。」

各自、自分の名前の箱を持って行き、更新作業を行う。

「こりゃ。すごいな。今回はなぜか安心感もある。」

「本当ね。特に杖が自分の一部になった感じに思えるなんて。」

「わたしも、イベント素材で作られた弓より性能は落ちるけど、
すごく、手にしっくり来るし、なんだろう?長年使って来た武器見たいな。」

「カイトはもちろんだけど、オリエさんとユニさんに、満足して貰えて良かったです。

一応、アカネさんとリンネさんと、ネットで中世の西欧で使われていた、
デザインを参考にしているよ。

ただ、さすがに、エリアボスを倒す程では無いけどね。」

「それでも大丈夫だ。

みんな、どうだ?これから、軽く、第五エリアの探索しないか?」

メンバーからは異議が出なかった。

「じゃあ。コーヤ。俺達も行って来る。何かあったら、また連絡する。」

「コーヤ君。私達も軽く、今まで行けなかった場所に行って来るね。」

アカネさん達も探索に出かけるようだ。

「いってらっしゃい。」

Copyright © 水晶光矢 All Rights Reserved.