最終更新日 2022/06/05

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123話 第3回闘技大会

3月20日(木曜日)

日付が進み、今日は第3回闘技大会の本線の日。

第3回目の今回、システムが変更された。

以前は、参加人数が多い場合、予選会から16名が勝ち上がり、本戦を行った。

しかし、参加者が増えた事もあり、今回から、期間を4日に延長し、
勝ち残りを16名から64名に増やした。

部門も無差別のみを分けて、
子供の部、一般の部、冒険者の部、団体の部の4つに分かれた。

それと、前回、魔族四天王の襲来により、闘技場が一部損壊したので、
復旧する際に、会場の増設や問題箇所を修整し、新たに生まれ変わった。

僕の知り合いで参加したのは、カイトだけとなった。

と言うのも、ミュウちゃん達とあくあさんは高校受験が、
ライアさん、オリエさん、ユニさんは大学受験があったからだ。

結果は無事、第一志望校へ全員合格した。

特にミュウちゃん、シエルちゃん、あくあさんは母校の橘学園に入学となり後輩になる。

カイトの本戦1回戦

さて、カイトはと言うと、対戦相手との相性が悪かったのか、
なんとか、60番目で予選を通過し、夜の部の出番を待っている。

参加する際に、出場出来る時間を聞かれるのだが、学生で登録している場合、
午後6時から9時までしか選択出来ないようになっている。

カイトは、午後8時を選択し、大会本番初日に戦う事が決定した。

「お兄ちゃん。カイトさん。どうだろうね。」

「う〜ん。今日までの一ヶ月半で色々と頑張ったみたいだから、
初戦は勝って欲しいけどね。」

「コーヤ君。カイト君出て来たよ。」

どうやら、時間になったようだ。

カイトは東から、西からは対戦相手である、
フルヘルメットでフル装備の重戦士が出て来た。

「うわぁ。あれは、骨が折れそう。」

シエルちゃんが心底嫌そうに言う。

確かに、空間のある装備だと、
そこを狙えば良いから、目標もあり、気持ち的には楽になる。

でも、フル装備だと、空間が少ないから、相手を潰すか、無理やり空間を作るかになる。

もし、相手が、装備を魔法などで軽量化していれば、身軽さも加わり、厄介な相手となる。

「両者!構え!始め!」

試合が始まった。

最初の数分間は、お互いに相手の意図を読む為に、軽い攻撃の応酬となる。

「水晶(コーヤ)君は、本格的に仕掛けるのはどちらだと思う?」

「力が拮抗しているなら、フル装備の人は、相手が攻めあぐねている時に仕掛けると思う。

逆にカイト側になると、一度奇襲をかけて、迷いを生じさせれば、仕掛ける事が出来そう。」

ところが、対戦相手がしびれを切らしたのか、カイトに攻撃を仕掛ける。

その攻撃を瞬動で躱し、背中へのゼロ距離から雷魔法で勝った。

「なかなか、良く考えた攻撃だったね。」

見回りだったヴィオさんが後ろから見ていたようだ。

「あ。ヴィオさんこんばんわ。見回りですか?」

「ああ。拡張したからね。

それに、1000人以上が騎士団に志願してくれた。

どうやら、魔族に勝てた事が、広く知れ渡ったようだ。

これからは、少し楽出来そうだよ(笑)

コーヤ君のおかげさ。お米もね。

あんなに美味しい食べ物があるなんて知らなかったよ。

これからも、よろしく頼むよ。じゃあ。」

そう言うと、ヴィオさんは見回りに戻って行った。

「お米は、王宮主導で、色々な土地に植えたりして、情報が集まっているみたいだね。

おかげで、お米料理も普及されて来たし、良い感じに進んでいるね。」

アカネさんは、お米で思い出しのか、最近の飲食店を思い浮かべている様だ。

「ほら。思い出してよ。ゲームの謳い文句を。

《プレイヤーと一緒に成長する異世界を冒険しよう!》」

「なるほどねえ。確かに謳い文句道理に、進んでいるわけだ。」

こんな話をしていると、カイトが手を上げながら戻って来た。

「勝ったぜ。見ててくれたか?これで、32強だ。」

「見てたよ。瞬動も上手く決まっていたし、
ゼロ距離からの雷魔法は効いたみたいだしね。」

「あれはな。イメトレしても、勝てる自信が出て来なかった。

そこで、コーヤなら、どんな風に相手を倒すかを考えたんだ。

一番頭に残っているのは、魔族の王子を一瞬で無力化したスピードと肘打ち。

しかし、俺には出来ないから、《瞬動で裏に周り背中にゼロ距離で放つ》で落ち着いた。」

「自分で出した答えなら、大丈夫そうだ。」

「そうでもないさ。コーヤ見たいに引き出しが多いわけじゃない。

当たる相手次第では、8強も行けると思っている。

だが、そうそう上手く行かないだろう。」

3月22日(土曜日)

カイトは、昨日も同じ午後8時に試合があったが、
相性が良くて、それほど苦労も無く、ベスト16に上がる事が出来た。

今日勝てば、明日の中央会場進出が決まるが、
今日の相手は、スピードタイプの選手だ。

「コーヤくん。こんにちは。カイトはどう?」

オリエさんは、僕の呼び方を、最近では今までの”さん”から”くん”に変えた。

「オリエさん。カイトの応援ですか?」

「そう。大学で必要になりそうな物があって、忙しかったから、
最近は来ていなかったんだけど、今日は、時間が取れたから来たのよ。」

「なるほど。ちなみにカイトは劣勢も劣勢です。」

「そのようね。」

試合が始まった当初は、お互いに力を温存しての探り合いをしていた。

10分過ぎた頃から、相手が魔法を撃てば瞬動で躱し、
カイトの攻撃も肉薄するが相手に躱される。

開始から20分、双方が疲れているが、カイトの方が疲れが溜まっているようだ。

「このままじゃ、負けるわね。やはり、瞬動の多様が原因?」

「そうです。

普通の戦場であれば、パーティーの助けやアイテムの使用などで、
対応出来ますが、大会ともなると、色々な制限があるので、今のようになりますね。」

「なんか。良いアイデアは無い?」

「気力の勝負になるでしょうから、負けたくない!って心をどちらが強く思っているかで、
勝敗は変わって来ると思います。」

話をしている間にも、双方は疲れをものともせずに戦うが、
離れた隙にカイトの方が、片膝を付いて、肩で荒く息をしている。

「相手は止めを刺すつもりね。万事休すかしらね。」

「オリエさん。そうでも無いですよ。

僕が同じ立場なら起死回生の一撃を出して、逆転出来ます。

まぁ。カイトがそれに気が付くかどうかですけど。」

オリエさんは祈りながら戦いを見ている。

大会での勝ち負けは、相手に降参と言わせるか、相手の首に武器を突きつけるかだ。

カイトは勝負を諦めていないからこそ、降参をしないのだろう。

対戦相手は慎重に、勝負を決する為に、カイトに近付いて行った。

対戦相手が今、まさにカイトの首に武器を突きつけようとした時、
相手の足元から雷撃が上空へと突き抜ける。

これによって、相手は戦闘不能となりカイトの勝ちとなった。

治療所に、オリエさんと行き、話を聞くと、
どうやら、カイトも気が付いていたようで、タイミングを測っていたようだ。

3月23日(日曜日)

闘技大会最終日

今日の大会最終日には、みんなで時間を合わせて集まり、大会を満喫した。

カイトは冒険者部門での参加なので、
午後からの戦いになっていて、午前中は一緒に見学。

子供の部の決勝

参加人数は16人で、年齢層は14歳が多く、最年少は10歳の女の子。

15歳成人の世界なので、
成人一歩手前の14歳対決になるだろうと、多くの人が考えていた。

ところが、昨日の戦いでは、14歳の子は、全て負けて、
決勝に進んだのは13歳の男の子と10歳の女の子と言う、波乱な展開となった。

試合の結果、優勝したのはソフィアと言う10歳の女の子だった。

ユヅキが、僕達を見つけて来たので、話を聞くと、
ライエル1代男爵家に仕えていた家の子で、ユヅキが僕の教えた呼吸法を使って、
動きながら訓練している所を見て、教えて欲しいとお願いされ、
ユヅキは自分が教えて貰った事をそのまま、教えたようだ。

どうも、物心付いた頃から、自分の内にある力をどうすれば良いのか、
分からなくて、ずっともやもやしていたが、ユヅキに教えて貰ってスッキリしたらしい。

負けた他の子は、年下の子に負けたのがショックだったようで、
今まで以上に、練習するようになったと感謝されたと言う。

一般の部の決勝

参加人数は、100名程、年齢層は50代が多く、仕事を引退して家督を子に譲ったが、
力をあり余していた人達が主に参加、最年少は、20代の青年。

この部は波乱もなく、56歳のオシアデ(元キコリ)さんが優勝。

団体の部の決勝

参加団体36チーム、国内で力に自信のある騎士団が参加。

この部を設けるにあたり、ひと悶着があったようだ。

王都に近い騎士団は、闘技場を利用出来てずるいと訴えが来たのだ。

前国王様は、今後も闘技場を増やすつもりだが、直ぐには増やせない。

しかし、団体の部で優勝した地域に優先して、闘技場を建てると発表され、
訓練の場が欲しい騎士団は、懸命に頑張って技を磨いた。

決勝に残ったのは、第5エリア中心の街アイテウス所属騎士団と、
第2エリア中心の街アクセリア所属騎士団との戦いになった。

思っていた以上に白熱したギリギリの戦いだったが、
最終的にはアイテウス騎士団が勝利した。

冒険者の部の決勝

最後に、冒険者の部の決勝

午後1時から、中央会場では、冒険者の部と団体の部を交互に行い、
現在午後5時となり、冒険者の部、決勝が始まろうとしている。

「カイト。惜しかったね。今度、みんなで魔物相手に鬱憤を晴らそう!」

「ははは(苦笑)しょうがないさ。
ベスト8になって中央会場で試合出来ただけでも良かったさ。」

カイトは、ベスト4を決める戦いで、相打ちに持ち込むが、立ち上がれずに負けてしまった。

そして、これから、冒険者の部の決勝戦となり、勝ち上がった、
黒衣の剣士マクディン(男性)、赤揃えの魔道士エイニア(女性)が紹介される。

「ねぇねぇ。コーヤ君。カイト君とオリエさんて。」

「うん。もしかするとね。」

そんな事を小声で話ししていると、試合が始まった。

「うわぁ。女性の方、こんなに技出して。息切れしないのかなぁ。」

「う〜ん。アカネさん。

お兄ちゃん程では無いけど、腕の良い鍛冶職人が作ったみたいだから、
回復手段はあると思いますよ。」

「ミュウちゃんは、同じ事出来る?」

「わたしの場合、小さい技を連発するより、大技一発で終わらせたいタイプだから。」

「なるほどねぇ。すご!分身!この魔道士そんな事まで出来るの!?」

剣士の出す流れ技を、魔道士は分身を出して応戦する。

「剣士も凄いけど、魔道士も只者ではない。色んな魔法出しても息切れしていない。」

双方の攻防は、一進一退で、なかなか、勝敗が決する雰囲気では無い。

開始して30分頃から、魔道士に隙きが出て来た。

「ねぇ。お兄ちゃん。あれって、誘っているんだよね。」

シエルちゃんが、顔は試合会場を向いたまま聞いて来た。

「剣士も誘っていると思っているから、乗らないんだろうね。」

その後、突如、魔道士も剣士も攻撃を止めて、今度は、動の攻防ではなく、
ジリジリと間合いを測る静の攻防を繰り広げる。

観客も2人の雰囲気に呑まれたのか、
緊迫感が徐々に高まり、最高潮になった時、同時に動き出した!!

会場は静まりかえり、一瞬の後には、剣士が脇腹を抑えて崩れ落ち、
魔道士は息を切らさずに立っていた。

審判は、剣士に駆け寄り、意思を確認し、魔道士の勝利を伝える。

それによって、止まった時間が動き出したかの様に会場からは、
溢れんばかりの拍手が降り注ぐ。

これで、第3回闘技大会は終了し、残すは表彰式を残すのみとなる。

「お兄ちゃん!今の分かった!?どうしたの!?見えた!?」

ミュウちゃんが混乱したように話す。

「多分だけど、魔道士は剣士の攻撃を躱し、脇腹へ攻撃をしたと思う。」

会場では、僕が作ったディスプレイが展開されて、
そこにドローンで撮った映像をスローモーション再生されていた。

スロー再生で見ると、推測通り、魔道士は剣士の攻撃を紙一重で躱し、
手に集まった魔力を、剣士の脇腹へ押し当てた後に、衝撃があり防具に大きな傷跡を作った。

「スロー再生は、お兄ちゃんが付与したの?」

「うん。今回、打診されて早い動きをゆっくり見れないかとね。

まんまのパーツが無かったから、試行錯誤して成功させたよ。」

隣では、アカネさんが唸っていた。

「う〜ん。う〜ん。あれって、魔道士の動きじゃないよね?」

「だね。速さ重視の魔道士は無くは無いだろうけど、速く動いて、なおかつ、
思った場所に魔法攻撃するのは、普通ではなかなか出来無いと思うよ。」

「え?その言い方だとコーヤ君は、魔道士では無いと思っているの?」

シエルちゃんは、何かに気づいた様だ。

「う〜ん。なるほど。お兄ちゃん。まさか、あの格好は相手に誤認させる為に?」

「スロー再生を見ると、その可能性が高いような気がするね。

実際に戦っていた剣士も違和感無かったから、間合いを間違ったんだろうし。」

「そっかあ。最初から情報戦は始まっていたんだね。」

「お兄ちゃん。そこは理解した。でも、最後の攻撃は?」

「たぶん、あれは、天空の島で手に入れた宝珠ね。」

後ろから、アキホお姉ちゃんが姿を現した。

「いやぁ。用事を片付けて、急いで来たんだけど間に合わなかったみたいね。残念。」

アキホお姉ちゃんはそう言いながら、僕達に近くの席に座る。

「なるほど。あの宝珠なら納得出来る。」

「僕は、その宝珠を知らないんだけど、どんなアイテム?」

「コウちゃんは、島の塔、攻略していないの?あの宝珠は、初回攻略ボーナスアイテムよ。

ひとり一回しか貰えないの。2回目からは、ランダムで報酬が決定するのよ。性能は・・・。」

話を聞くと、

耐久値は5000で、初級魔法−100、中級魔法−250、高級魔法−500、最高級魔法−2000と、
魔法を使うと上記の数値が減り回復しない。

しかし、攻撃力は2倍になる。と言う使い捨てアイテムのようだ。

なるほど、確か天空の島の入手物を整理した時にあったな。

「そんなアイテムがあったのか(惚ける)」

「それにしても、宝珠をエリアボス戦に使う人は、多いだろうけど、
闘技大会で惜しげもなく使うなんてね。わたしは勿体無くて使えないなぁ。」

アカネさんは、納得出来ていないようだ。

「アカネちゃん?多分だけど、1位の賞品目当てだったんじゃないかしら。

2つを天秤にかけたら、1位の賞品に傾いた。その為には、1位になる必要がある。

だから、惜しげもなく使ったと思うの。」

「なるほど。確かに、わたしも欲しい物がある時に、決断しないと行けない時があるなぁ。」

「それに、冒険者の賞品はコウちゃん作なんでしょ?」

「うん。今回は第5エリアで戦える事を考えて作ったよ。

でも、僕以上に良い作品作る人なんて居るだろうに。赤揃えの作者とか。」

「コウちゃんは掲示板あまり見ないでしょ?

掲示板では、前回2位のプレイヤーが、
ボロボロの剣を新しい剣に変えて手渡ししてくれた!って自慢していたのよ?

そのあと、性能も良いし、自分も欲しいって言う人が続出だったのよ。」

「へぇー。知らなかったよ。」

会場では、表彰式が始まって、
子供の部の優勝者ソフィアが、笑顔で賞品を受け取っているのが見えた。

「でも、人間って思い込みが激しいし。子供の部の優勝したソフィアちゃんが良い例で、
自分より年下が弱いなんて限らないのに、男の子達は、弱いと思い込んでしまった。

それと同じ事は、リアルでもゲームでも起こっているから、
日常的に考えておく必要があるかもね。」

「本当よね。それは、私達も気を付けないと。」

この後、表彰式を見届けて、屋台で食べて解散となった。

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