12月26日(木曜日)
作業をしていると、ドラグさんがやって来た。
「話があるという事でしたが、何ですか?」
「多方面から講習会を、また、開催して欲しいと要望が来ている。
特に、冬休みに入って活動再開したプレイヤーが多い。
とりあえず、自分達で出来ないかを探ったのだが、
場所や教師役の人員に関して、ハードルが高い。
そこで、コーヤなら良い案があると思ったから来た。」
「へぇー。そこまで好評だったんですね。
場所は、う〜ん、王都近郊が良さそうですよね。
5つのエリアから移動しやすいでしょうし。
人員に関しては、講習会の開催発表すれば、前回参加者も、ある程度参加するでしょうから、
問題ないとして、どの程度集まるかということですね。」
「そうだな。
掲示板で、盛り上がっていたようだし、場合によっては10万人も在り得る。
しかし、さすがに、1箇所に10万人となると、色々と問題も起きそうだ。
その時は、期間を増やすなどの対応が必要だろうな。」
「なるほど。分かりました。
僕の方でも、動いてみます。
ある程度、詳細が決まれば、ドラグさんにお伝えしますので、
対応をお願いします。」
「ああ。それはもちろんだ。よろしく頼む。」
こうして、講習会の開催に向けて動き出した。
王宮に行き、国王様に相談することにした。
「ふむ。講習会か。良い案じゃ。
わしの所に来たという事は、場所の問題じゃな?」
「はい。僕としたら、王都近郊に場所を作ろうかと考えていて、
その許可をいただければと。」
「闘技場から遠くにするのか?」
「そうですね。あまり近すぎても問題が起きそうですし。」
「(少し考えて)そうか。
実はな、大都市の騎士団から、訓練場作って欲しいと要望が来ておって、
特にアイテウス騎士団は、闘技場から一番遠くにあるから、熱望されておる。
とは言え、今年は、魔族の2度の襲撃による復興で、簡単には作れん。
そこでじゃ。
各大都市の騎士団にも、講習会に参加の許可を貰いたい。
講習会で学んだ事を、闘技場内に現在、作っている騎士団の訓練場で練習する。
そうすれば、戦力を上げる事が出来る。どうじゃろうか?」
国王様の顔は真剣そのものだった。
「冒険者の場合、多くがパーティー人数が5〜6人にしています。
そのため、騎士団のような大人数の訓練はしていないので、
どこまで、参考になるかは分かりませんが、それで良ければ、構いません。
あと、基本的に1ヶ月に1度の割合で開催しようと考えています。
ただ、参加者が多い場合、常設しても良いとも思っています。」
「あの、質問良いですか?」
ソアリスさんが質問して来た。
「一般の人達も参加できますか?」
「一般の人達というと?」
「例えば、料理人、建築家など講習会で教える内容に関連のある職業の人達です。
この人達が、講習会で学び、仕事で活かすことで、地域の活性化に繋がると思いまして。」
「なるほど。僕としても、そうなってくれると嬉しいです。
講習会のルールとして、自分の得意な事を、別の人に教えるとなっているので、
そこに、一般人だから、騎士団だからとかはありません。
ただ、開催するのは構わないのですが、管理となると、
僕がずっとするのは無理なので、管理者を決めなければいけないですね。」
「ありがとうございます。
管理者に付いては、私達の方で、なんとかしたいと思います。
会場作りと開催日は、決まっているのですか?」
「開催日は、1月15日を考えていて、
会場の設営は、建築出来る人を募り、1月7日から1週間で完成させるつもりです。
それまでに、調理器具などを手分けして用意します。」
「分かりました。騎士団や一般人の方々には、私達からお知らせしておきます。
何か、問題が起きましたら、お知らせ下さい。」
「ありがとうございます。それでは、僕はこれで失礼します。」
「コーヤよ。少し待ってくれ。わし達から話すことがある。」
国王様から呼び止められた。
「話ですか?」
「そうじゃ。この話は、明日に公開するんじゃが、コーヤには今話す。
1月2日に、わしはソアリスへ王位を譲渡する事にした。」
衝撃な話だった。
「え!?国王様は、まだ、大丈夫そうだと思っていたんですが。」
「体に関しては、まだ、問題は無い。
今回は、わしの体の事で、譲渡するのではなく、良い時期だと思ったからじゃ。
ソアリスは、魔王討伐の功績で、”剣姫”の称号を手に入れ、
魔族再襲撃時にも、魔国王子と戦っても生き抜いた。
この事は、多くの国民にも支持されておる。
今後も他国や魔族など、我が国が脅かされる場面もあるかと思う。
特に、魔族の王子レアヘルは、必ず、我が国を滅ぼそうとやってくる。
そこで、今のうちから、世代交代をしておけば、問題が起きた時に対処出来ると思ったのだ。
今後の問題として、ソアリスの結婚相手は、2年後を目処に決めるつもりじゃ。」
「この話を聞いた時、ビックリしました。
いつかは来るだろうと考えていましたが・・・。
ただ、私は、まだまだ、国王になるのは早いと思っています。
年齢も、今年で21になったばかり、戦闘では貢献出来ますが、
政治では、まだ、どれが正解なのかと迷ってしまいます。」
ソアリスさんのとまどいの言葉に、国王様が話す。
「ソアリス。正しい答えなど無いのじゃ。
その場その場で、最適と思える選択をする。
その選択の結果、悪い方に転がれば、国王が責任を取る。
だから、国王に必要なのは、状況判断と責任を取って死ぬ覚悟じゃ。」
ソアリスさんは少し考えてから話す。
「分かりました。
今後、国民を悲しませない為にも、懸命に頑張りたいと思います。」
「とは言え、ソアリスだけでは、色々と苦労するだろう。
わしは、相談役をする事にした。
どうしても、選択できない時は、わしを頼るが良い。
それと、エリシアを国王補佐に任命する。
でじゃ。
コーヤよ。頼みがある。
ソアリス、エリシア、ユヅキと子作りをしてもらいたい。」
一瞬、国王様が何を言っているのだろうと思ってしまったが、
ソアリスさんを見ると、顔を赤くして俯いているので、本当なのだとろう。
「はぁ!?いやいや?
数年後には結婚して、子供を作るんですよね?
なんで、その前に、僕と子作りをするんですか!?」
「これには理由があるんじゃ。
コーヤは、魔族、特にあの王子が、我が国を諦めると思うか?」
確かにあの王子は、粘着しそうだしと思った。
「え〜と、あの様子だと、たぶん、復讐して来るかも知れませんね。」
「ああ。たぶん、わしらの世代は無いとしても、数十年後はあるかも知れん。
そして、わしが危惧するのは、コーヤ達が亡くなった後、
コーヤの様に行動出来る者がいなくなる事じゃ。
あの者はコーヤが居なくなった時を狙ってくるかもしれん。
その時の標的は、ソアリスであり、後継者たる子じゃろう。
仮にこの時に、この国が滅ぼされても、コーヤの拠点があれば、再興も出来ると思うが、
そこを他の悪意のある者に奪われては、可能性が潰えてしまう。
しかし、コーヤの血を引いていれば、拠点を使えたり、物作りが出来るかも知れない。
ならば、ソアリス、エリシア、ユヅキにコーヤの子を産んでもらい、
公表せずに育て、生き残れるように訓練する。
これが、最適と考えた。」
なるほどと思った。
確かに、いつまでこのゲーム世界にいるかは分からない。
「ソアリス、エリシア、ユヅキには、既に伝えてあるし、許可も取ってある。」
「あの。コーヤ様。私は嬉しく思っています。
コーヤ様の血筋を残せるのですから。
お願いします(立ち上がって、頭を下げる。)」
僕は色々と断る方法を考えたが、途中で考えるのを諦めた。
「(息を吐く)ソアリスさん。本当に僕で良いんですか?」
「はい!好きな人の子を産めるのは、最高に幸せです。
最初は、尊敬しているだけでしたが、
徐々に、恋心に変わって行きました。
でも、私は王家の人間で、王位継承権一位の人間です。
到底、叶わないだろうと恋心を封印しましたが、
こうして、コーヤ様の子を産む機会にめぐりあえて感謝しかありません!」
「分かりました。ソアリスさん、よろしくお願いします。」
「あとじゃ、エリシアとユヅキにも言葉を貰っている。
ソアリスよ。読んでくれ。」
”はい”と言うと、ソアリスさんは、エリシアさんとユヅキの気持ちを読む。
「わたしは、コーヤさんとの子に、自分の予知能力が継承される事を願っています。
そして、今後、仮に国が無くなろうとも、コーヤさんの子が集まれば、
国を再興する事も出来ると思うからです。」
「わたしは、コーヤさんと色々な物を作ったりして、段々と好きになって行きました。
でも、あの王子は、コーヤさん達が居なくなった後に襲撃するかも知れません。
その時に、コーヤさんとの子が居れば、その子に将来を託し、
わたしは、十二分に戦う事が出来ます。」
これらの言葉で、僕は覚悟を決めた。
この後、エリシアさんとユヅキを交えて、日程を考えていく。
環境が揃った1月初旬に行為におよび、
4月に妊娠したと連絡を貰った。
ちなみに、これらはキャラクターとしてなので、プレイヤーには影響が無い。