悲鳴が聴こえた時には、ヴィオさんは、既に駆け出していた。
「何があったんでしょうか?」
「僕達も行って見よう。」
現場に行って見ると、女性が倒れていて、
身体の至る所に切り裂かれた傷と血が流れていた。
背中の短剣の刺さった箇所が1番傷が深そうだ。
「あれ?もしかして・・・・。」
気になって見に来たアスハさんは、女性を知っているようだ。
「アスハさん。倒れている人を知っているんですか?」
「はい。たぶん、同じ村にいた商人一家の友達です。
商人とは言っても、半分は農地で作物作っていたので、半農半商だったようですけど。
昨年、作物が取れなくなって困って、引っ越ししたんです。でも、なんで、こんな事に。」
僕達が話をしていると、アスハさんの知り合いは、救護室に運ばれて行った。
「そういう事なら、救護室に行ってみましょう。ユヅキは店番をお願い出来る?」
「大丈夫です!アスハさんは友達のところに行ってあげて下さい。」
急いで救護室に向った。
「こんにちは。あ、セリナさんが担当だったんですね。良かったです。」
「コーヤさん。どうして、救護室に?」
セリナさんが不思議そうに見ている。
「こちらの、アスハさんがそちらの方を知っているみたいだったので、案内して来たんです。」
「そうでしたか。呼びかけようにも名前が分からなかったので困っていたんです。」
救護室に運ばれた女性は、体のキズは癒えたが、
体験した辛い記憶が思い出されたのか、暴れている。
「いやぁ。いやぁぁぁ!」
アスハさんが、暴れている知り合いの近くに行き、落ち着かせる。
「ライカ!しっかりして!」
アスハさんが、ライカさんと言う女性を目覚めさせようと頑張って、
そのかいがあり、5分後くらいに目を覚ました。
「う・・ん・・あ・・れ・・?こ・・こ・・は?(きょろきょろ)」
「良かった!気が付いて!」
「え?アスハ?なぜ?」
「ここは、最近作られた闘技場にある救護室よ。
あなたは、外壁に設置された出入り口付近で倒れていたの。」
落ち着いたのを確認して、セリナさんが近付く。
「気が付いて良かったわ。私は、あなたを治療したセリナよ。傷口は完治させておいたわ。
結構、ひどい傷だったけど何があったの?」
ライカさんと言う女性は、話を始める。
「それは・・・。潜んでいた賊に襲われたんです。
ここに来る途中で、馬車の馬を殺されて、殿を護衛の人達がしてくれて、
最初は上手く行っていたんですけど、護衛の人が倒され始めて、
私達は懸命に逃げたんですけど、相手の方が足が早かったんです。
もう少しと言うところで、追いつかれそうになって、両親が私だけでもと守ってくれて。」
「なるほど。背中に刺さっていたのは、賊が苦し紛れに放った短剣が当ってしまったんだね。」
ヴィオさんが、当時の状況を推測しながら、ライカさんに話を聞く。
「それで、ライカさん。どこで襲われたんですか?詳しく教えて下さい。」
「え〜と。あなたは?」
「申し訳ない。僕はフィンテル騎士団で団長をしているヴィオと言います。
賊が暗躍していると問題だから、これから、排除するつもりだ。」
「え、でも、護衛の人達の情報見せて貰いましたが、
強い人達だからお願いしたんですけど、その人達でさえ、撃退出来なかったのに・・・。」
「大丈夫さ。今までにも似たような事を解決して来たからね。
コーヤ君は場所の特定をお願いして良いかな。僕は人数集めて来る。」
「はい。大丈夫です。」
「コーヤさん。それなら、空き部屋があるので、そちらを使って下さい。」
「良いんですか?」
「はい。集中出来る方が良いと思いますし。」
「ありがとうございます。」
そして、僕は空き部屋に移動し、アスハさんはフリースペースの商品を撤去に向った。
僕はディスプレイを出現させ、映像カメラも闘技場外壁に移動し、
ライカさんの足跡を辿って行き、襲撃された現場と賊の足跡を追跡していく。
ある程度、確認できた所で、ヴィオさんとユヅキ、アスハさんともう一人入って来た。
「お待たせ。先に紹介しておこう。
こちらは、闘技場に集まった各街の騎士団を統括する本部長の・・・。」
「俺の名はソレイエルだ。今日の責任者をしている。先程、話を聞かせて貰った。
王都に近い場所に賊が潜んでいるとなれば、今後、どのような災いが起こるか分からん。
ヴィオには、調査と逮捕を許可した。」
「そう言うわけで、許可が降りたから、場所が特定され次第出発するつもりだ。
で、コーヤ君見つかったかな?」
「ええ。今映しているのが、ライカさんが襲われた場所で、足跡をこちらに辿ると・・・。」
「うん?廃屋で半分以上が朽ちているね。ここなのかい?」
僕は、順番に映像を見せていき、王都近くの小さな森にある廃屋を映し出した。
「僕も、ここでは無いと思いかけたんですが、
良く確かめて見ると、蓋があって、地下に続いているようです。」
「ふむ。これだと、気を付けていないと分からないね。
ソレイエルさん、僕達は行きますので、見廻りなどよろしくお願いします。」
僕達の動きを見ていたソレイエルさんは感心していた。
「了解した。なかなかに手際が良いな。
そして、話には聞いていたが、現場まで見に行かなくても、
相手の痕跡を追跡出来るのは素晴らしい。
俺の管轄にも欲しいくらいだ。」
「その事なら、国王様に相談して下さい。僕の判断では無理なので。」
「しかし、この魔法とアイテムを作ったのは、ヴィオから聞いたが、君なのだろう?」
「ええ。そもそもは、
地上からだけでなく上空からもきれいな映像を取りたいと思って作りました。
でも、戦時アイテムになりそうだったので、
国王様が信頼し認可した人だけが、使えるようにしたんです。」
「なるほど。確かに、誰でも手に入れられてしまっては、悪用されるのは必至だからな。」
「はい。なにより、魔王襲来もありましたから。」
「分かった。今度、国王様にお願いして見よう。」
この後、ヴィオさん達フィンテル騎士団は、
目的地に出発し、ソレイエルさんは持ち場に帰った。
「あの。ありがとうございました。こんなにすぐに、調査して貰えるとは思いませんでした。」
その一連の状況を見ていたアスハさんは、素早い対応に驚いていた。
「いや。賊は見つけた時に対処しないと、後々大変になるから、気にしなくて良いよ。
僕達は、闘技場で試合を観戦するから、これで失礼するね。」
僕達は、救護室を出て、各部門(一般・冒険者歴5年未満・10年未満・無差別・団体)の
決勝戦が、午後3時頃に始まるので、回っていない場所を見て、観戦しようと移動し始めた時、
索敵レーダーに敵対勢力の反応が出た。