後方の国王部隊にも危険が迫って来ていた。
「国王様、早くお逃げ下さい!」
お付きの人が、国王様に逃げるように促すが、逃げようとはしなかった。
「ならん!国王であるわしが、国の為に戦っている者達を見捨てるなど!」
「(カキン)くっ、しかし、お父様!このままでは国が滅んでしまいます!」
ソアリス王女が、ダンジョン産の剣を使って、魔将軍と呼ばれる男と対峙するが、
剣の技術が劣っている事もあり、防戦一方となり、辛うじて敵の攻撃を捌いている。
「どうした?女?そんな、剣さばきでは俺には勝てんぞ!そらそらそら!」
「(きーん、きーん、びきびき、ぱきーん)くっ!」
さすがに、ダンジョン産の武器とはいえ、激戦に耐えうる耐久度は無かった。
しかし、ソアリス王女は、折れた剣を持ち、この場を死守する構えだ。
「くくく。武器を無くした以上、俺の勝ちだ!折れた剣で俺と戦おうって言うのか?死ねぇ!」
その時、魔将軍の背後から、コーヤの変形武器剣モードが心臓を貫く。
「誰が勝ちだって?(魔将軍の心臓を貫く)」
「ぐふっ。貴様、いつの間に!(剣を抜くと地面に倒れて動かなくなる。)」
「ふぅ。なんとか、間に合ったみたいですね。」
周りを確認すると皆、なんとか戦っている様子だった。
「コーヤ様!助けてくれてありがとうございます!」
「コーヤよ。助かった。」
そこに魔王が国王の近くに現れる。
「くくく。なんだ?たかだか、弱い魔族を倒して喜んでいるのか?」
「貴様は魔王!」
「人間の王よ。我が来たからには、そなた達には勝ちはない。
我が魔族に屈服するなら、命だけでもやるぞ?はーはっは!」
「ふん。人間を甘く見るなよ?わしの命が無くなろうとも、必ず、魔王を倒す人間が現れる!
それなのに、屈服などするものか!」
「ふっ。そうか。ならば苦しみながら死んで行くと良い!」
「私達はそんな簡単に殺されはしません!」
ソアリス王女は、折れた剣を構えながら、魔王に言う。
「ほう。武器も無いのに良く吠える。
しかし、我が手を出したのでは、簡単すぎて面白くも無い。
よし。ロスリーよ。この任務やり遂げて見せよ。」
「はっ!有難き幸せ!必ず、人間を根絶やしにしてご覧頂きましょう。」
この間、コーヤは気配を消して、魔王に体力吸収の札を貼り、体力を削る作戦を行なっていた。
《残り時間、20分を切りました。》
そこへ、ユヅキが到着して、対魔王の剣をソアリス王女に手渡す。
「ソアリス王女様。こちらの剣を使って下さい。今日の為に2人で作った物です。
念話を付与しているので、これからは念話で説明します。」
「ほう。新しい武器か。
如何ほどの能力があるのか知らぬが、俺を楽しませてくれよな。(にやり)」
「(相手の挑発に乗ったフリをして、攻撃をして下さい。)はぁぁぁぁ!」
「ふむ。簡単に俺の挑発に乗るか。それも良いだろ。」
「やぁぁぁぁー!」
ソアリス王女の攻撃が、ロスリーに当たる直前、
剣の刀身が柄から外れて上空へと舞い上がって行った。
「はぁっはぁっはぁ(大笑い)!これは、面白い!そのような欠陥品を使うとはな。」
ところが、剣の刀身はブーメランの様に戻って来る。
「うん?なるほど。
俺を油断させて、後ろからか。悪くない作戦だが、バレては意味が無いなぁ。」
「(相手は、1枚だと思っています。
もう1枚は、使用者の正面の敵を攻撃する様になっています。
なので、今のままそう思わせておいて、刺さった瞬間に、柄にある魔石に魔力を流して、
剣をイメージして攻撃して下さい。必ず、当たりますので。)」
魔族は片方が、自分目掛けてやって来る剣をジャンプして避けた瞬間、
もう片方(影刃、認識阻害機能付き)が、魔族目掛けて襲いかかる。
「がはっ!なんだと?ちっ、いつの間に!ぐあっ!」
意識が分散している間に、ソアリス王女は、言われた通りに、魔力の剣で魔族に攻撃する。
《残り時間、10分を切りました。》
ロスリーとソアリス王女の戦いの様子を、魔王は近場で見ている。
「ほう。なかなか。有能ではないか。」
「へぇ〜。のんびりと見ていて良いのかな?」
「我が気づかないとでも思ったか?先程から、小細工をしているようだが、無駄な事だ。
あいつが本気を出せば、この街などすぐに吹き飛ぶぞ?」
「じゃあ。本気を出す前に倒してしまえば問題はないと言う事だね。」
「愚かな。我を倒すだけの力を有していないお前が、ロスリーを倒すだと?笑わせてくれる。」
「そうかな。何事も絶対は無いんだよ?」
「そうですね。何事も絶対はありません。」
「ん?貴様は!あの時の獣人!」
声のする方向を向くと、セレサさんが武器を持ちながら、歩いて来ていた。
「セレサさん、どうして?」
突然でびっくりしてしまう。
「移住先で思わぬ力を手に入れまして(笑顔)」
「力ですか?」
「はい。その事は後にしましょう。今、子ども達が前線で、冒険者と一緒に戦っています。」
その時、念話で話しかけて来る声があった。
「お兄さん!仲間と一緒に加勢に来ました!こちらは任せて下さい!」
そう言うと、念話が切れてしまう。
「なるほど。お前は、人間達の加勢に来たと言うわけか。そして、我を倒そうと?」
「ふふふ。それも良いかも知れません。しかし、今回は私の出番では無い様です。
コーヤさん。私達は前線を死守します。魔王を倒して下さい。」
「くっ。ははは(大笑い)何を言うのかと思えば。
この小僧が我を倒すだと!面白い冗談だ!」
「そうでしょうか。その様に思うのならば、そう思って下さい。
では、後は任せました。」
セレサさんはそう言うと、前線に戻って行った。
話をしている間に、ロスリーとソアリス王女の戦いは、終盤に入って来ていた。
「くっ!俺を本気にさせたようだな!俺の最大魔法で、この街を火の海にしてやる!」
「ロスリーめ。やっと、本気を出すか。これで、終わったな。お前は逃げなくて良いのか?」
「なぜ?逃げる必要も無いのに?」
「ほう。では、お前が悔しがる顔を拝ませて貰おう。」
ロスリーが魔力を高め、最大魔法の準備をしている頃、ソアリス王女も準備をしていた。
「(柄の一番下にあるボタンを押して下さい。)」
剣は、いつの間にか、最初の時と同じになっていたが、ボタンを押すと、
槍の形態になり、槍の尖端が開き、中心の空洞部分が見える様になった。
「くくく(笑)何をするか分からんが、もう、遅い!インフェルノよ!焼き尽くせ!」
ロスリーの手から、最大まで凝縮されたインフェルノが、ソアリス王女に向けて放たれた。
《残り時間、5分を切りました。》
そこに、準備が完了したソアリス王女は、
ロスリーのインフェルノよりも、高出力な魔法を発射する。
「発射!」
ソアリス王女が、発射した高出力砲は、ロスリーを一瞬で倒し、魔王を巻き込み、
線上にいた魔物を道連れにして行く。
「なに!?ちっ!逃げれないだと!」
この時、魔王は知らなかったが、体力吸収札が身体中に貼られていて、
有り余った体力は、既に、100程しか残っていなかった。
その為、魔王は逃げれなかった。
「魔王。さよなら。(にやり)縮地」
「なに?!消えただと!くっ!?謀ったな!ぐわぁぁぁぁー!」
光の線が無くなると、残っていたのは、魔族の死体と瀕死の魔王だった。
プレイヤーだけでなく、魔族も魔物も高出力砲にあっけにとられている間に、魔王を倒す。
「さて。時間もないし、魔王には退出して貰おうか。」
「くくく(笑)これで、勝った気でいるのか?残念だが、この程度で、我は死なん!」
「もちろん。分析スキルを使って、これから、3つの心臓を潰させて貰うさ。
その為に、色々と準備をして来たんだしね。ただ、あまり苦労しなさそうだ。」
《残り時間、2分を切りました。》
「貴様!最初から!がはっ!な!やめろぉぉぉぉ!」
1つずつ心臓を潰して行き、魔王の絶叫がこだまする中、
最後の心臓が弱点属性の太陽の光に照らされると、魔王は灰になって消えて行った。
《残り時間、1分を切りました。》
「ふぅー、なんとかなったかぁ。」
周りを確認すると、前線で少し戦っている以外は、
体力も魔力も精神力も尽きた様で、多くの参加者は地面に座り込んでいた。
《終了の時間になりました。これにより、イベント防衛戦を終了します。
これから、ポイントの集計しますので、もう暫くお待ち下さい。》
フィンテル組は、勝利で防衛戦を終える事が出来た。