最終更新日 2022/06/05

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55話 フィンテル防衛戦・後編

コーヤSIDE:

後方の国王部隊にも危険が迫って来ていた。

「国王様、早くお逃げ下さい!」

お付きの人が、国王様に逃げるように促すが、逃げようとはしなかった。

「ならん!国王であるわしが、国の為に戦っている者達を見捨てるなど!」

「(カキン)くっ、しかし、お父様!このままでは国が滅んでしまいます!」

ソアリス王女が、ダンジョン産の剣を使って、魔将軍と呼ばれる男と対峙するが、
剣の技術が劣っている事もあり、防戦一方となり、辛うじて敵の攻撃を捌いている。

「どうした?女?そんな、剣さばきでは俺には勝てんぞ!そらそらそら!」

「(きーん、きーん、びきびき、ぱきーん)くっ!」

さすがに、ダンジョン産の武器とはいえ、激戦に耐えうる耐久度は無かった。

しかし、ソアリス王女は、折れた剣を持ち、この場を死守する構えだ。

「くくく。武器を無くした以上、俺の勝ちだ!折れた剣で俺と戦おうって言うのか?死ねぇ!」

その時、魔将軍の背後から、コーヤの変形武器剣モードが心臓を貫く。

「誰が勝ちだって?(魔将軍の心臓を貫く)」

「ぐふっ。貴様、いつの間に!(剣を抜くと地面に倒れて動かなくなる。)」

「ふぅ。なんとか、間に合ったみたいですね。」

周りを確認すると皆、なんとか戦っている様子だった。

「コーヤ様!助けてくれてありがとうございます!」

「コーヤよ。助かった。」

魔王登場

そこに魔王が国王の近くに現れる。

「くくく。なんだ?たかだか、弱い魔族を倒して喜んでいるのか?」

「貴様は魔王!」

「人間の王よ。我が来たからには、そなた達には勝ちはない。
我が魔族に屈服するなら、命だけでもやるぞ?はーはっは!」

「ふん。人間を甘く見るなよ?わしの命が無くなろうとも、必ず、魔王を倒す人間が現れる!
それなのに、屈服などするものか!」

「ふっ。そうか。ならば苦しみながら死んで行くと良い!」

「私達はそんな簡単に殺されはしません!」

ソアリス王女は、折れた剣を構えながら、魔王に言う。

「ほう。武器も無いのに良く吠える。

しかし、我が手を出したのでは、簡単すぎて面白くも無い。

よし。ロスリーよ。この任務やり遂げて見せよ。」

「はっ!有難き幸せ!必ず、人間を根絶やしにしてご覧頂きましょう。」

この間、コーヤは気配を消して、魔王に体力吸収の札を貼り、体力を削る作戦を行なっていた。

《残り時間、20分を切りました。》

そこへ、ユヅキが到着して、対魔王の剣をソアリス王女に手渡す。

「ソアリス王女様。こちらの剣を使って下さい。今日の為に2人で作った物です。
念話を付与しているので、これからは念話で説明します。」

「ほう。新しい武器か。
如何ほどの能力があるのか知らぬが、俺を楽しませてくれよな。(にやり)」

「(相手の挑発に乗ったフリをして、攻撃をして下さい。)はぁぁぁぁ!」

「ふむ。簡単に俺の挑発に乗るか。それも良いだろ。」

「やぁぁぁぁー!」

ソアリス王女の攻撃が、ロスリーに当たる直前、
剣の刀身が柄から外れて上空へと舞い上がって行った。

「はぁっはぁっはぁ(大笑い)!これは、面白い!そのような欠陥品を使うとはな。」

ところが、剣の刀身はブーメランの様に戻って来る。

「うん?なるほど。
俺を油断させて、後ろからか。悪くない作戦だが、バレては意味が無いなぁ。」

「(相手は、1枚だと思っています。
もう1枚は、使用者の正面の敵を攻撃する様になっています。
なので、今のままそう思わせておいて、刺さった瞬間に、柄にある魔石に魔力を流して、
剣をイメージして攻撃して下さい。必ず、当たりますので。)」

魔族は片方が、自分目掛けてやって来る剣をジャンプして避けた瞬間、
もう片方(影刃、認識阻害機能付き)が、魔族目掛けて襲いかかる。

「がはっ!なんだと?ちっ、いつの間に!ぐあっ!」

意識が分散している間に、ソアリス王女は、言われた通りに、魔力の剣で魔族に攻撃する。

《残り時間、10分を切りました。》

ロスリーとソアリス王女の戦いの様子を、魔王は近場で見ている。

「ほう。なかなか。有能ではないか。」

「へぇ〜。のんびりと見ていて良いのかな?」

「我が気づかないとでも思ったか?先程から、小細工をしているようだが、無駄な事だ。
あいつが本気を出せば、この街などすぐに吹き飛ぶぞ?」

「じゃあ。本気を出す前に倒してしまえば問題はないと言う事だね。」

「愚かな。我を倒すだけの力を有していないお前が、ロスリーを倒すだと?笑わせてくれる。」

「そうかな。何事も絶対は無いんだよ?」

「そうですね。何事も絶対はありません。」

「ん?貴様は!あの時の獣人!」

声のする方向を向くと、セレサさんが武器を持ちながら、歩いて来ていた。

「セレサさん、どうして?」

突然でびっくりしてしまう。

「移住先で思わぬ力を手に入れまして(笑顔)」

「力ですか?」

「はい。その事は後にしましょう。今、子ども達が前線で、冒険者と一緒に戦っています。」

その時、念話で話しかけて来る声があった。

「お兄さん!仲間と一緒に加勢に来ました!こちらは任せて下さい!」

そう言うと、念話が切れてしまう。

「なるほど。お前は、人間達の加勢に来たと言うわけか。そして、我を倒そうと?」

「ふふふ。それも良いかも知れません。しかし、今回は私の出番では無い様です。
コーヤさん。私達は前線を死守します。魔王を倒して下さい。」

「くっ。ははは(大笑い)何を言うのかと思えば。
この小僧が我を倒すだと!面白い冗談だ!」

「そうでしょうか。その様に思うのならば、そう思って下さい。
では、後は任せました。」

セレサさんはそう言うと、前線に戻って行った。

終了5分前

話をしている間に、ロスリーとソアリス王女の戦いは、終盤に入って来ていた。

「くっ!俺を本気にさせたようだな!俺の最大魔法で、この街を火の海にしてやる!」

「ロスリーめ。やっと、本気を出すか。これで、終わったな。お前は逃げなくて良いのか?」

「なぜ?逃げる必要も無いのに?」

「ほう。では、お前が悔しがる顔を拝ませて貰おう。」

ロスリーが魔力を高め、最大魔法の準備をしている頃、ソアリス王女も準備をしていた。

「(柄の一番下にあるボタンを押して下さい。)」

剣は、いつの間にか、最初の時と同じになっていたが、ボタンを押すと、
槍の形態になり、槍の尖端が開き、中心の空洞部分が見える様になった。

「くくく(笑)何をするか分からんが、もう、遅い!インフェルノよ!焼き尽くせ!」

ロスリーの手から、最大まで凝縮されたインフェルノが、ソアリス王女に向けて放たれた。

《残り時間、5分を切りました。》

そこに、準備が完了したソアリス王女は、
ロスリーのインフェルノよりも、高出力な魔法を発射する。

「発射!」

ソアリス王女が、発射した高出力砲は、ロスリーを一瞬で倒し、魔王を巻き込み、
線上にいた魔物を道連れにして行く。

「なに!?ちっ!逃げれないだと!」

この時、魔王は知らなかったが、体力吸収札が身体中に貼られていて、
有り余った体力は、既に、100程しか残っていなかった。

その為、魔王は逃げれなかった。

「魔王。さよなら。(にやり)縮地」

「なに?!消えただと!くっ!?謀ったな!ぐわぁぁぁぁー!」

光の線が無くなると、残っていたのは、魔族の死体と瀕死の魔王だった。

プレイヤーだけでなく、魔族も魔物も高出力砲にあっけにとられている間に、魔王を倒す。

「さて。時間もないし、魔王には退出して貰おうか。」

「くくく(笑)これで、勝った気でいるのか?残念だが、この程度で、我は死なん!」

「もちろん。分析スキルを使って、これから、3つの心臓を潰させて貰うさ。
その為に、色々と準備をして来たんだしね。ただ、あまり苦労しなさそうだ。」

《残り時間、2分を切りました。》

「貴様!最初から!がはっ!な!やめろぉぉぉぉ!」

1つずつ心臓を潰して行き、魔王の絶叫がこだまする中、
最後の心臓が弱点属性の太陽の光に照らされると、魔王は灰になって消えて行った。

《残り時間、1分を切りました。》

「ふぅー、なんとかなったかぁ。」

周りを確認すると、前線で少し戦っている以外は、
体力も魔力も精神力も尽きた様で、多くの参加者は地面に座り込んでいた。

《終了の時間になりました。これにより、イベント防衛戦を終了します。
これから、ポイントの集計しますので、もう暫くお待ち下さい。》

フィンテル組は、勝利で防衛戦を終える事が出来た。

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