ユヅキちゃんが、小走りで家の中に入って行き、少しすると、戻って来た。
「コーヤさん。なんでも、土地がすごくきれいになってるから、
見せて欲しいって言っています。」
「どんな人達?」
「冒険者と思われる女性5人です。年齢は、コーヤさんと同じくらいです。」
「ふ〜ん。分かった。僕がそっちで見てから決めるよ。」
その頃、門では女性のパーティーが、応答を待ちながら、話をしていた。
「(ねぇねえ、大丈夫かな。怖い人が出て来たりさぁ。)」
「(大丈夫だよ!さっきの声の子が、目当ての子でしょ?保護者の人も良い人だよ。絶対!)」
「あの。すみません。変わりました。それで、庭を見たいという事で良いですか?」
「はいぃ!?あ、ごめんなさい。以前、土砂で埋もれていたところしか見ていなかったので、
きれいなところを見たいと思いまして。」
「そう言う事なら、構いませんよ。今、入り口の門を開けますから、どうぞ、入って下さい。」
坂の下にある、出入り口の門が開いて行く。
「うわぁ。これって、ホームの設定なのかなぁ?すごいよねぇ。」
「うん。でも、ここを守るのは広すぎて大変じゃない?」
「大丈夫じゃない?気づいた?門入ったら、違う空間見たいな感じになったのを。」
「と言う事は、知られないように守っているって事だよね?」
「みんな、そろそろ坂終わるよ。」
僕は、坂道を歩いて来る、お客を出迎えるべく、近くまで来ていた。
「いらっしゃい。適当に見て行ってよ。」
先頭にいる女性が、僕の顔を見ながら言う。
「あれ?光矢君だよね?ここがそうだったの?」
僕の事を知っている人らしいが、僕自身は、全然分からないので聞いた。
「(少し考えるが分からず)ごめん。誰かな?」
「あ〜、分からないか(苦笑)クラスメイトの道下朱音(あかね)だよ。」
どうやら、クラスメイトの道下さんらしい。
「あれ?全然分からなかったよ。でも、良く分かったね。僕だって。」
「(少し考えて)ん〜、なんとなくかな。クラスにいる雰囲気と似ていたのもあるかな。」
僕達の様子を見ていた、道下さんのパーティーが、紹介を要望して来た。
「ちょっと!アカネ!紹介してよ。」
「ごめんごめん(苦笑)
みんな、さっきの会話で分かったと思うけど、クラスメイトのコーヤ君。
そして、(僕の方を向いて)4人は私の中学校の友達で、
ゲームの中で再会して、パーティーを組んでいるの。
拠点は第3エリアだから、通常は居ないんだけど、始業式の日に、
可愛い女の子がいるって言うから、修練やダンジョンの魔石狙いで来たってわけ。
それで、メンバーは・・・。」
アカネさんのメンバーが、順に名を言っていく。
「初めまして!わたしはコノミだよ。よろしくね!」
「私は、シェーラです。」
「私は、ミリスです。」
「最後に私は、ハヅキよ。」
「こちらこそ、よろしく。僕は、コーヤで、こっちが・・・。」
「ユヅキと言います。よろしくお願いします!(お辞儀)」
「なるほど。ユヅキちゃんの事だったんだね。それにしても、かわいい♪」
ユヅキちゃんを目的に来たようで、ユヅキちゃんは、アカネさん達に「かわいい」とか、
頭を撫でられたりして照れている。
そんな中、シェーラさんが、土砂撤去の事について聞いて来た。
「コーヤさん。あれだけあった土砂をどうやって撤去したんですか?」
「そうそう!すごい気になるよね!」
「ほら、このゲームって、アイテムを作ったりするのって簡単に出来るでしょ?
シンプルに魔法袋に〈吸収〉と〈自動〉を付与して、24時間フル稼働させただけだよ。」
「う〜ん。なるほど。確かに、魔法袋に直接、吸収出来ればすごく楽だよね。」
「ちょっと待って!?それって、おかしいわ。」
ミリスさんが異議を唱える。
「え?ミリスどこがおかしいの?」
「みんな、忘れたの?魔法の袋(小)が満杯になって大変だった事。」
「あ〜(遠い目)苦渋の選択だったよね。」
「だから、あれだけの土砂を24時間フル稼働していたら、
すぐに満杯になって吸収も停止するはず。」
ミリスさんが鋭い観察眼を持っているようで力説している。
「それは、あれじゃない?整理も兼ねて、庭に吸収した物を出す。
そして、また、吸収するって感じで。」
「でも、魔法袋(中)でも、1日に何回も吸収を止める必要があるわ。」
「ねぇ。結局、ミリスは何が言いたいの?」
シェーラさんが痺れを切らしたようで、結論を急かす。
「私も掲示板とかで調べて見たんだけど、誰も、作業する人を見ていないのよ。
そこから考えるに、コーヤさんが持っている魔法袋は、大か無限のどちらかだと思うの。
私達に、どちらかが1つでもあれば、結構助かると思うわ。」
ミリスさんは、ドヤ顔し、アカネさんは僕に答えを聞いて来た。
「それで、コーヤ君?正解は?」
「(拍手)いやぁ。ミリスさんすごいね。そこまで、考えられるなんて。」
「と言う事は?推理は正しかったって事ですか!」
ミリスさんは、前のめりに近づいて来る。
「うん。大正解。当時は小しか持っていなかったから、小だと1時間程で満杯になったよ。
そんな時に、偶然、無限袋のレシピを手に入れて、作って、あとは放置していたんだ。」
ミリスさんは、ガッツポーズしている(苦笑)
「おー!それは、すごいです!コーヤさん!わたし達にも!」
コノミさんが、絶対欲しいと言って来る。
「小だけで100枚の魔法袋が必要になるよ?」
「うそ!?そんなに?コーヤ君!何か良い方法ない!?」
アカネさんは落胆している。
「お金なら貯め込んだ白金貨3枚あります!」
「ちなみに、袋の小は何枚ある?」
「ランダムBOXで手に入った1枚かな?ねぇ?」
アカネさんは、メンバーで話し合うと、3枚以内という答えが返って来た。
「じゃあ。作り方を教えるから、誰か普通の袋か袋に使う生地を買って来てくれる?
いくら、ゲームとは言っても、無から有を作り出すのは無理で、素材が必要なんだよ。」
こうして、僕は、魔法袋の作り方を教える事になった。