最終更新日 2022/06/05

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45話 2学期

9月1日(木曜日)

今日から、9月に変わり、2学期が始まった。

「おはよう。」

「おう!光矢、おはよう。」

「光矢君、おはよう♪」

「海人と道下さんおはよう。で、なんで、僕の席の近くで2人は話しているのさ?」

僕の席の近くでは、海人と道下さんが、話で盛り上がっていた。

道下さんとは、高校のクラスで初めて逢ったんだけど、
海人の苗字は陸原で、中学三年間、同じクラスメイトだった中だ。

「ああ。ほら、昨日、IAW始めたって言っていただろ?それが気になってな。」

「私は、陸原くんに聞いて、どんな事しているのか、興味があったから。」

「(イスに座って)二人はゲーム中でも会った事あるの?」

「たまにね。でも、光矢君。
本体とゲームソフト、結構な値段なんだけど、バイトでもしていたの?」

「違うよ。偶然に手に入ってね(苦笑)」

「なるほど。偶然か。光矢の事だから、人助けでもしたか?」

海人は、腕を組み、目を閉じて、感想を口にする。

「なんで知っているんだ?」

さすがに、正解が出るとは思っていなかったのでびっくりした。

「おいおい。本当だったのか?適当に言っただけなんだが。」

どうやら、言った本人が一番驚いているようだ。

「まあね。(事情説明)と言う事なんだよ。」

「すご〜い!私なら助けようって思っても、体が動かないよ。」

「俺も無理だな。それで、お礼に本体とゲームのセットを貰ったと。」

道下さんが話を引き継ぐ。

「それで、光矢君は、何日から始めたの?」

「僕は、7月27日からだね。今はフィンテルの街でまったりしているところだよ。」

「フィンテルにいるんなら、レイドの参加と修練の間を体験したのか?」

「したよ。とは言っても、
レイドは神殿のダンジョンを往復して魔石と宝箱集めてをしていただけだし、
修練の間は、知り合いが見つけたのに便乗しただけだしね。」

「なんだ?ケルベロスとは戦闘していないのか?」

「少しはしたかな?でも、結構、人が多かったから、まぁ、僕はいなくても良いかなって。」

「はぁぁ。欲が無いなぁ。それで?ポイントは?」

海人は呆れながらも聞いて来た。。

「ダンジョン込みのイベントだったから、30万ポイントは稼げたよ。」

「ちっ。やっぱり、そっちを優先するべきだったか。」

苦渋の選択で、ダンジョン切上げ組になったようだ。

「本当だね。私のパーティーも早々に諦めて、拠点に戻っちゃったから、全然ダメだった。
でも、終盤に間に合って、ポイント稼げたから、助かったよ。」

「くっ。

俺達は、第4エリアのエリアボス攻略や、装備の強化素材をダンジョンから回収するので、
忙しくて、全然、イベントの事を確認していなかった。

結局、ポイントは1万弱しか入らなかった。」

「それは、大変だったね。(苦笑)」

道下さんが話題を変えた。

「そうだ。光矢君は、体力と魔力はどんな感じ?」

「そうだなぁ。だいたい、体力が28000、魔力が30000かなぁ。」

「(ハモって)はぁ!?」

「ちょっと待て!どうしたら、そんな数値になるんだ!?」

「そうだよ!私達だって体力7000くらいだし、最前線の知り合いも体力9500とかだよ!?」

2人はすごい勢いで、前のめりになっている。

「それはね。みんなが錯覚を起こしているからだよ。」

「錯覚だ?」

「どういう事?」

2人を落ち着かせて、イスに座らせて、話を再開する。

「さっきも言ったけど、僕は特別な事はしていないよ?
ただ、ダンジョンを往復していただけなんだからさ。」

「おいおい。謎掛けは良いから、教えてくれ。」

そこで、道下さんは閃いたようだ。

「もしかして、そういう事?」

「おっ?道下さん気が付いたみたいだね。(答えを聞いて)うん。そういう事だよ。」

「それで、もやもやしていた部分が無くなったよ。すごい、単純だったんだ。」

「おいおい。俺は分からないぞ?どういう事だ?」

「光矢君。わたし達含めて、多くのプレイヤーは、
運営の罠にはまってしまって、本来あるのに無いと思い込まされているって事?」

「そう。海人もダンジョン通過したんでしょ?おかしいと思わなかった?」

「おかしい?不思議に思わなかったけどな。」

腕を組んで、ダンジョンを思い出している。

「じゃあ。あのダンジョン何階まである?」

「え?そんなの100階・・・!?」

「海人も気が付いたみたいだね。そう。
多くの人は、どうしても、レイドボスを攻略したいから、不思議に思わないで、ワープする。
しかし、実際には100階まで存在するし、最深部に近くなればなるほど、
魔石は、大きくなるから経験値を多く入手出来るんだ。」

「はぁぁ。なるほどなぁ。全然気が付かなかったぜ。」

海人は頭をかきながら、苦笑している。

「それって、今からでも大丈夫かな?」

「イベント終了してからは、入っていないけど、たぶん、同じだと思うよ。」

「よ〜し!じゃあ、今日からダンジョンに籠もってレベルアップしよ!」

「どうやら。俺達もした方が良さそうだ。光矢。良い情報助かったよ。」

「まぁ。参考になったらそれで良かったよ。」

なぜか、話に参加せず、聞いていただけの人も海人や道下さんの様な反応をしている。

この学校で半分の人は、あのゲームをしているかも知れない。

そんな風に呆れていると、声をかけられた。

「あのぉ。ちょっと、良いかな?」

「あ、おはよう、牧ノ原さん。どうしたの?」

「今、みんなが話していたのって、TVCMで流れているVRゲームのだよね?」

「そうよ。

Infinite Alternative world(インフィニティ オルタナティブ ワールド)という名前のね。」

「その事で、聞きたい事があって。」

「僕達で答えられるのなら。」

牧ノ原さんは、近くからイスを借りて座った。

「私の誕生日が8月27日なんだけど、従姉のお姉ちゃんが、わざわざ新古品を探してくれて
プレゼントしてくれたんだ。

夏休み最終日に妹と従姉のお姉ちゃんと、3人で遊んだんだけど、分かんないうちに、
時間切れになってもやもやしていたから、基本的な事を教えて欲しいなって。」

「妹さんは、結構前からしているの?」

「うん。初期限定版を買ったみたいで、母と交渉して、ルール範囲で遊んでいるらしいわ。
今も、制限なく遊んでいるようだから、母との約束は守られているんじゃないかな。」

「それで、基本的な事って?」

「うん。何も分からなかったから、妹や従姉のお姉ちゃんも、今は雰囲気を
楽しんでくれれば良いって、言っていたんだけど、ネットで調べても、
どんな風に育てていけば良いのか分からなくて。3人は、私よりは理解してそうだったから。」

牧ノ原さんは、育成について悩んでいるようだ。

海人は・・・。

「育成か。俺は、前線で敵を倒すのが爽快だから、防御力が高い装備にしている。
防御力が高いのは重いものが多いから、速さに関しては目をつむっているな。」

道下さんは・・・。

「私は、初期から遊んでいて、最初は全然、身内にも友達にも遊んでいる人がいなかったから、
まず、ネットなんかで書かれている基本形を一通り試してみて、弓装備が相性良かったから、
選んだって感じね。」

「え〜と。水晶君は?」

「え?僕?僕は形を決めていないよ?強いて言うなら、近接はスピード勝負、中遠は魔法だね。

僕はまだ、1ヶ月くらいしか遊んでいないけど、
自分のしたい事をなんでもして見るのが良いと思うよ。

運営側で縛りを作っていないから、アイディアがあれば、まず、行動して見る。

ダメなら別の方法考えるか、諦めるか。
何も特化しているからと言って、強くはなれないしさ。」

海人が頷いている。

「確かにな。あのゲームは、一筋縄では行かないから、
多くの経験をしている人が強いのかも知れん。」

「そっかぁ。じゃあ。自分がしたい事を見つけるのが先だね。」

「それが良いと思うわ。生きるだけなら、戦闘をしなくても問題ないしね。」

「あと、拠点って持ってるの?やっぱり必要なのかな?」

「ええ。必要よ。(切実)特に精神衛生上ね。
お金が必要だけど、盗撮・盗聴などを防いだり、
あらかじめ、登録した人には拠点ボーナスが付くのも、すごく助かるわ。」

道下さんが、力説する。

「本当。俺達もボーナスにはだいぶ助けられたぜ。」

海人は大変だった事を思い出している様だ。

「なるほど。だから、物件が少ないんだね。競争になって。」

「そう言う事ね。ただ、最近、街の中以外に拠点を所有する事が出来るって、
掲示板に書かれていたけど。本当なのかしらね?」

「その話は、聞いた事がある。試した人がいるかは分からないが、
過去の建物を修復し、王宮に申請して通れば、拠点にする事が可能と言う話だ。」

「でも、もし、可能でも、街の安全圏ではないし、
魔物や賊などから自力で対応しなきゃならないから、相当、リスクがあるわね。」

がらがら

「はーーい、みんな、席について!」

「おっと。もう、そんな時間なのね。この続きは、昼休みにしましょ。」

皆、自分の席に戻ると同時に、ホームルームが始まる。

昼休み

「なんか、夏休み中、この時間は仮想現実の世界にいたのに、
授業で入れないとなると、うずうずするね。(苦笑)」

僕は、夏休み中、家事などを早く片付けて、ゲーム世界に入っていたけど、
学校が始まったので、時間が取れず、少々、禁断症状が出ているようだ。

「くくく。光矢もハマったみたいだな。」

「そのようだね。とは言え、出来る事は終わらせてあるから問題ないけど。」

道下さんが近くの机とイスを移動させながら聞いて来た。

「ねぇねぇ。フィンテルの北西にゲーム開始当初からある、
土砂で埋もれた土地が、きれいになっているんだって!聞いた?」

「いや?最近、フィンテルに興味無かったし、掲示板も見ていなかったからな。
誰だ?相当な金持ちでないと、あれだけの土砂を撤去するのは難しいだろ?」

「そうなのよ。みんながレイドボスに興味が集中している時に、
気が付いたら、無くなっていたんだって。私達もまだ、確認していないけど。」

牧ノ原さんも近くの机とイスを移動し、会話に入って来た。

「その話なら、妹も話していました。
なんでも、人がいる気配が無いのに、日に日に、土砂が無くなっていくって。

そうそう、それで、昨日の帰りに3人で、女の子が一人でお茶しているのを見ましたよ。」

「え!?本当?どんな子?」

「(思い出しながら)そうですねぇ。14〜5歳に見えました。
妹も自分に似た年齢だって言っていましたし。可愛かったですよ?」

「そうなんだぁ♪今度、見に行こうっと♪」

「無茶するなよ?通報されるかも知れないぞ。」

「通報される様な事はしないわよ!」

「(呆れ)さて、牧ノ原さん、参考になった?」

「う〜ん。分かんないかな。とりあえず、自分なりに考えて動いて見るよ。」

この後は雑談し、授業を受けて、放課後となる。

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