最終更新日 2022/06/05

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44話 直接民主制の仕事

8月31日(水曜日)

「う〜ん。コメント書けそうな議題は・・・。」

今日は、夏休み最終日。

2日前の29日に、鍛冶については一段落したので、
昨日と今日で、調薬など、今まで手を付けていない分野をしていた。

ところが熱中した事で、「直接民主制」の仕事の時間が取れたのは、午後5時だった。

この仕事は、今年の4月から高校生になって義務化され、
国政の議題に対するコメントや投票する為に、仮想世界の議論部屋に来ている。

直接民主制

天光暦2020年に選挙で大勝した《新しき風党》の選挙公約。

本格稼働したのは、今から20年前で天光暦2080年だけど、
その間に直接民主制の環境整備に尽力した。

その過程で、フルダイブ化したVR空間でのゲーム・医療・学校等の技術においても、
一般人の意見や感想を取り入れ、α版を全面開放した。

それによって、直接民主制に移行する天光暦2080年までの60年間、
《新しき風党》は政権与党であり続けた。

ちなみに、もちろん、技術面だけでなく、無駄な税制の改革、
官僚や国会議員の権力を分散するなどの政策が、
多くの有権者に受け入れられたのは大きい。

議論部屋

この部屋は、直接民主制に移行した時に、
国民が議論や討論、悩み相談等に使える用途で開設された。

書き込まれた内容は、議事録として保存される。

部屋が開設された20年前は、SNSと同じ感覚で反対意見への意味の無い書き込み等が、
多かったようだけど、5年前頃から、国会と同じ様な使われ方をしている。

ルール

・月に1回以上、議論部屋にある案件にコメントする事、
・それと、投票待ち案件に、投票する事。

上記の二点しか無いが、ポイント制になっていて、
実行が確認されない場合、マイナスポイントになる。

コメント無しの場合:-2pt

投票一回欠席:-20pt

マイナスポイントも累計され、罰則が付与される。

軽いのは”社会奉仕”で
一番重いのは、”市民権剥奪”となり、”国民枠”から外される。

政治システム

現在の主な政治システムは、下記の通り。

・議論部屋の内容は、精査委員会で検証。

・精査委員会と同軸に、各専門委員会があり、
  各分野に携わる人達で構成し、国民に投票して貰う選択肢を提供。

・法律化の際は、法律の専門家による委員会で話し合いをし、
  法律の原案を公表し、国民の意見で修正し、最終投票で可決すれば、施行される。

・諸外国からの窓口は1つで、そこから、専門委員会に割り振られる。

・憲法改正の場合、有権者100%の同意が必要。

・専門Webサイトにマイナンバーでログインすれば、全ての情報を閲覧出来る。

この様に、国会議員や官僚など、不正の温床になる部署を無くし、
国民の投票によって、国の運営をする形になっている。

ここまで来るのに、紆余曲折があり、苦労は計り知れない。

閑話休題

僕は、一つずつ議題を確認して行き、処理して行く。

最後に嫌な、議題を見つけてしまった。

「うわぁぁ。また、あるのか。先月もあったなぁ。」

議題は、「国軍を設立するべき」というもの。

過去の自衛隊は、《新しき風党》の技術と交渉により、国を守るという、
存在意義が無くなり解散している。

内容としては、簡単で《新しき風党》が領海や領空に、
レーザー技術の応用を使用した事により、戦闘機や核兵器などが侵入不可となったのだ。

これにより、他国が侵略する事は不可能となり、過去の同盟は破棄され、
過去の同盟国は撤退を余儀なくされた。

しかも、不服により、居座っていた場合、敵と判断される為、渋々ながら、撤退した。

これに、多くの国民が歓喜した。

ところが、その事を喜ばない人達もいた。

その人達は、軍は自分達国民を守るものだという迷信を信じている様だ。

この迷信は、過去の新聞等を見ると、天光暦2012年頃から大きくなった様に思える。

これがあったからこそ、《新しき風党》は政権党になって初めての仕事を、
「憲法改正は、有権者100%の同意が必要」という改革にした。

「しっかし、軍に類する組織が、”国民を守る”為ではなく、
”国を守る”為に敵を倒すのは、普通に分かりそうなのにな。(呆れ)」

そもそも、国民を守るのが最優先ならば、戦闘など出来ないだろうし。

時間を確認すると1時間後が経過していた。

「う〜〜〜〜〜ん!(背伸びをしてリラックスする)
はぁ。やっと終わった。思っていたよりも多かったなぁ。」

思いに耽っていると、声が掛かった。

「よう。光矢も来ていたのか。」

「ん?ああ。海人。終わった?」

「ああ。今回は、俺がコメント出来そうなのが、少なかったからな。
それより、光矢は夏休み前に俺が言っていたゲーム始めたのか?」

「ゲーム?あぁあれか。ちょっとした縁があってね。
今は、時間がないから、明日、学校で話すよ。」

「(時計を見る)おお。もうこんな時間か。
お前は、夕食作る時間か。そう言う事なら、明日聞かせてくれ。」

そうして、僕はログアウトして、夕食を作り始め、夏休みのイベントは終了した。

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