移動した場所は、入り口が岩で塞がれていたが、
なんらかの影響で崩れて、中に入れる状況を作ったようだ。
「へぇー、ここは一本道か。」
「ああ。一本道の突き当りに下る階段がある。以前来た時は、あれ?何階だったか?」
カイトが記憶を辿っているが、覚えていなかったみたいだ。
オリエさんが覚えていたようで、話を引き継ぐ。
「確か。50階まであったはずよ。
あの当時、深くて30階程だったから、50階と分かって、宝が無いか気になっていたもの。」
僕は、カイト達が話をしている横で、
周りを鑑定したり、隠された部屋が無いか確認していた。
「コーヤさん。どうですか?」
シルフェさんが聞いて来た。
「一箇所に魔力で封鎖した跡がありますが、それだけですね。」
僕は、シークレット解除の魔法を発動すると、
入り口から近くの場所に枝道が出現した。
「へぇー。こんな所に、隠された道があるんだ。敵がいそうですか?」
「いないですね。」
僕達は、隠された道を行き、突き当りに10畳程の部屋があった。
「ここは、古すぎて、何も残っていないな。」
カイトは、部屋を見渡して言う。
「みんなで部屋に何か無いか探そうよ。」
僕の言葉で、念入りに部屋を調べて行くが、
収穫は魔法袋が1つ部屋の角に残されているだけだった。
「コーヤさんが、確認してもらえない?」
オリエさんから、手渡された魔法袋の中を見ると・・・。
「これは、魔法陣の中級編だ。」
「なんだと!?
確か、以前に山岳地帯に隠されていると聞いた覚えがあるが、ここだったのか?」
「カイト。そうとも限らないわ。誰かが見つけて、ここまで持って来た可能性もあるし。」
「うん。鑑定すると、どうやら、オリエさんの意見に近いらしいね。
ただ、これは、僕が探しているのでは無いらしい。
他にも保存していた人がいたんだと思う。それに、残念ながら、全巻無かったし。」
今回見つかった魔法陣中級編は、分析と解析により、
本来20冊あるのが、ここには15冊しか無かった。
「そうか。ちなみに、全巻無いと、やはりダメか?」
カイトが考え事をしながら聞いて来た。
「どうだろう。中身見ていないから、確定じゃないけど、パーツ次第だね。」
「それで、強化できれば、第五エリアのボスに勝てると思うか?」
どうやら、カイトは第五エリアのボスを倒せるのか、気になるようだ。
「そうだね。全巻揃っていれば、新しいアイディアも出るから、
倒せる可能性も出て来ると思うけど。」
「ねぇ。ここには、他に調べるところが無いなら、早く、下に行こうよ。」
ユニさんが催促して来た。
「考えるのは後にするか。」
今日は終業式で、冬休みに入ったので、時間があった。
その為、最下層の50階までの階を、慎重に調べる事が出来たが、
見つかるのは、風化した鉄くずくらいで、何も無かった。
「なぁ、コーヤ。ここは、何に使っていたんだ?最初に調べたんだろ?」
40階近くになると、カイトが聞いて来た。
「うん。ここが何か。そして、どんな事があったのか分かったんだけど、
教えていいか、微妙なんだよね。」
「それって、どういう事だ?」
オリエさんは、僕の遠回しの言い方に、気が付いた様だ。
「なるほどね。カイト、ここは聞かずに最下層に行きましょう。」
「おい!オリエは分かったのか!」
「ええ。でも、確かに先にバラしては、興ざめになるかも知れないわ。」
「はぁ。またかよ。最下層気になるから行くか。」
その後も慎重に調べていき、最下層に到着する。
ぐぅおぉぉぉぉーーーーーーー!!!!!!!!
「この鳴き声はドラゴン!?」
「正解。どうやら、グリーンドラゴンらしいよ。」
「そうか!一度、ドラゴンと戦ってみたかったんだ!」
カイトは、ドラゴンと戦えるとあって興奮している。
最下層も、ボス部屋以外に収穫は無いと思うので、
調べるのは、ボスであるグリーンドラゴンを倒してからに決まった。
「これは、上から入って来たのか。」
グリーンドラゴンの上には、巨大な穴があり、外から侵入したようだ。
「よし!今回は威圧で装備に、ヒビも入らなかった!絶対倒すぞ!」
「(メンバー全員)おーーーー!!!!」
カイトの号令で、グリーンドラゴンへ攻撃を始める。
グリーンドラゴンも侵入者を倒すべく、咆哮や魔法などで攻撃するも、
速さを手に入れたカイトパーティーには、なかなか、当たらない。
そして、終盤になり、大技を放つも、防がれてしまう。
その隙きに、上空へと移動したカイトは、
落下を利用して、グリーンドラゴンの頸めがけて突進する。
「そぉりゃぁぁぁーーーー!!!ドラゴンスレイヤーで斬る!!!」
カイトは、ドラゴンスレイヤーをイメージした剣で、
グリーンドラゴンの頸を切り落とす。
どしぃぃぃぃぃーーーーーーん。
「よし!ドラゴン初討伐!!」
「おめでとう。それで、最後の溜め技の感想は?」
「ああ。自分のイメージ次第だが、自由があるから、俺は好きだ。
それで、このドラゴンどうする?」
「そりゃぁ。僕の魔法袋に入れて持って帰るよ。」
「え!?コーヤさん。さすがに、無理では?」
シルフェさんが驚いている。
「ああ、僕のは無限袋だから、大丈夫ですよ。」
「(全員)はぁぁぁぁぁ!?」
「コーヤ!そんな話聞いていないぞ!」
「わたし達、魔法袋(中)でやりくりしているのに(呆然)」
収拾が付かなくなったから、一度落ち着かせて、説明した。
「コーヤさん!それじゃぁ。わたし達も無限袋を持てるんですか!」
すごくユニさんが興奮している。
「ユニ、落ち着いて。つまり、魔法袋を合成スキルの手動で、重ねて行けば良いのね?」
オリエさんが確認して来た。
「ええ。僕は、料理が好きなので、油揚げをイメージしましたが、
重ねる事が出来れば、なんでも問題ないと思いますよ。」
「そう。でも、魔法袋を集めるのも大変そうね。」
「もし良ければ、複製機貸しますよ。」
「複製機という事は、魔法袋をコピーするって事?」
「はい。ただ、複製機経由だと、無限袋にはなりません。
あと、合成スキルを手動で使うと、確率でレアスキルを入手する事も出来ます。
僕は、空間スキルを手に入れたので、裁縫で袋を作って、
空間で魔法袋に昇格させると、無限袋が完成します。」
「むぅー。という事は、空間スキルは絶対に欲しいわね。」
「シェーラさんも空間スキル持っているので、頼んでみるのも手ですよ。」
「そうね。後で、話し合ってみるわ。」
話が終わったので、僕はグリーンドラゴンの亡骸を無限袋に収納した。
「話が終わったのなら、宝の確認しましょ。」
シルフェさんが、そわそわしているので、
奥に山積みにされている宝の場所に移動した。
「これは、すごいな。(コインを手に取り)これは、過去の通貨か?」
「その様ね。他にも、魔法が付与された装備や使途不明なアイテムとか色々ね。」
「ねぇ。カイト、オリエ。ここで、1つずつ見てたら時間かかるから、
拠点でコーヤさんに確認してもらわない?」
ユニさんが提案して来た。
「そうだな。その方が良さそうだ。コーヤどうだ?」
「そうだね。ここまで多いと、纏めてからの方が良いと思うな。」
「良し。俺達の拠点に戻ろう。」
こうして、僕達は、ドラゴン退治を済ませて、カイトの拠点に移動した。
ちなみに、隠された部屋などを探したが、見つからず、
最下層を探索したが、使えそうな物はひとつも見つからなかった。