12月16日(月曜日)
「おはよう。」
「おはよう。おい!光矢!あの武器はなんだ!」
朝の挨拶をするなり、海人が怒り出した。
「あはは(苦笑)光矢君、おはよう。
ほら、わたし達が倒した映像が、編集されて昨日、公開されたの。
で、それを見た陸原君が、暴れてしまって。」
道下さんが、苦笑しながら話してくれた。
「まぁ。ある意味、予定通りかな。
海人。あれは、道下さん達の隠れステータスが高いから、
あれほどの威力になったのであって、誰でも、あの威力にはならないよ。」
「隠れステータスってなんだ?」
海人も知らないようだ。
「不思議に思わない?攻撃の成功失敗判定はなんでしている?」
「む。なるほど。確かに、参考にする数値が無ければ難しいか。」
海人は腕を組んで考えている。
「そう。攻撃に限らず、生産系もそう。
まあ、通常意識はしていないから、しょうがないと思う。
けど、他の人の様に出来ないとかがあれば、関係していると思う。」
周りの聞き耳を立てている人達は、メモを取り始めた。
「本題に戻るけど、魔力系の練習を多くして、関連ステータスが高かった、
道下さんのパーティーだからこそ、出す事が出来たと思っているよ。」
「という事は、俺達の様に物理重視のパーティーには、
別な武器が必要なわけか。
光矢、市場に出回っている素材で、なんとかならないか?」
「う〜ん。今まで手に入れた本とかを見て、物理重視で高出力出す為に、
色々と試行錯誤しているけど、なかなかに難しい。」
「おはよう。拠点でも、水晶君、本を読みながら難しい顔をしているよね。」
「牧ノ原さんおはよう。僕、そんな顔している?」
「うん。本の内容を、色々とイメージに当てはめているけど、うまく行かないって感じ。」
「なぁ。物理重視は難しいか?」
海人が心配そうな声を出して来た。
「魔力重視だと、魔力を1つに纏めて、高出力として出すという流れが決まっているから、
そこに、アイディアを付け加えれば、完成しやすい。
しかし、物理重視だと、武器一つ一つの攻撃力を上げるより、現時点で方法が無い。
これは、バランス型でも同じで、色々と模索しているけど、なかなか上手く行かない。」
「そうか。確かに、物理だとそうなるか。う〜ん。」
海人も唸ってしまった。
「そこで、今、考えているのは、ボス領域の弱点属性エネルギーを吸収と、
ボスから魔力を吸収し、それを利用するの2つ。
現在、試作品を作っているけど、やはり、耐久力を高く出来る素材が見つからない。」
「やっぱり、素材の問題に戻るんだね。
陸原君は、使えそうな素材って持っていないの?」
道下さんが海人に質問した。
「どうだったかな。なにぶん、金が必要だから、金策で無いかも知れないな。
まぁ。今日にでも、調べてみる。もし、使えそうな素材があれば、光矢に連絡する。」
ログインし、作業していると、来客が来た。
「来客?」
リンネさんが来客を知らせてくれた。
「うん。イベントで一緒だった、ドラグさんだって。」
「ああ。という事は、アカネさんの件か。」
「だろうね。衝撃だったと思うし。」
「分かった。後は、僕が対応するよ。」
その後、ドラグさんを拠点に入れて、イスに座って話をした。
「当然、ボスの件ですよね?」
「そうだ。あれはどうしたんだ?お前が作ったんだろ?」
「ええ。試作品のテストで貸したんですけど、思った以上の威力でしたね。」
「なんだと!あれで、試作品だと!」
ドラグさんは、すごくびっくりしている。
「はい。アカネさん達は魔力重視のパーティーなので、
あれ程の威力になったのだと思います。」
「なるほど。裏のステータスがそこまで高いという事か。」
「ドラグさんは、ステータスの事、知っていたんですか?」
「ああ。最初は気にしていなかったが、
拠点持って安定して研究できる様になってからだな。
物理重視はどうするつもりだ?」
「まだ、模索中ですね。」
「次の質問だが、公表されているパーツでは、ステータスが高くても、
あれ程の威力が出るとは思えん。自作したのか?」
「残念ながら、違います。9月頃にフィンテルのお店を見ていたら、
面白い物を見つけまして。」
「なんだ?その面白い物とは?」
「魔法陣と言う技術です。」
「なに!?新技術だと!?」
「ええ。なかなかに扱いが難しいので、試行錯誤しながら使っていました。
あの銃もそのパーツを使用しています。
他にも、使っていますが、現時点では秘密です。」
「いつ見つけた?掲示板とか見ても、その様な技術の話は出ていないぞ?」
「僕の場合、9月2日ですね。これです。」
複製した本を袋から取り出し、机に置く。
「む。表紙がほとんど見えない。(ぱらぱら)おい、中が読めんぞ。」
「あれ?そうですか?(ぱらぱら)僕は普通に読めますよ?」
「なに?どういう事だ?まさか、前提があるのか?」
「イオさんは、最初から普通に見えていましたけど。一通りの知識が要求されますから、
それで判断している可能性がありますね。」
「イオと言うのは、翠の泉のクランマスターの事か?」
「はい。イオさんから、色々とヒントが欲しいと言われたので、
魔法陣の初級編を複製して渡しました。
確か、魔族再襲撃の後なので、11月初旬頃ですね。」
「ちっ!俺は、まだ、この技術を使うラインまで到達していないと言う事か!
しかし、絶対に超えてみせる。」
「頑張って下さい。正月の一周年イベントで公開するつもりですから。」
ドラグさんは、水を飲んで落ち着くと、何かを思い出したような顔をした。
「そうだ。思い出した。この拠点は、土砂で倒壊していただろ。
魔法袋(大)でも見つけたのか?」
「そうですねぇ。今なら、言っても良いかも知れませんね。
僕の場合、縁あって、魔獣ケルベロスの開放場面に立ち会えました。
部屋の中には、状態保存の魔法が付与されて、過去の遺物が置かれていて、
発見者特典で、偶然、その中にあった無限袋のレシピを入手出来たんです。」
「無限袋は存在したのか。対価は払う。レシピを教えてくれ。」
「作り方は至って簡単。合成スキルの手動で、魔法袋を合成して行くだけです。
対価はお金ではなくて、情報や珍しいアイテムでお願いします。」
「了解した。後で、クランメンバーに聞いたり、アイテムを探して持って来よう。
それにしても、自動ではダメなのか?」
「僕も、それで出来れば楽だなと思ったんですが、成功率が50%。
しかも、失敗するとプラスの数値が下がってしまいました。」
「そうか。そうであるなら、手動しか無いか。良い話を聞けた。」
ドラグさんは、意気揚々と帰って行った。
「そう言えば、合成スキル、無限袋で使っただけで、使っていなかったなぁ。
・・・合成か。もしかして、使えるのかな?」
僕は、ふいに気になった事を実験するべく、準備に入った。
「さて、実験してみるか。僕の予想があっていれば、成功するはず」
周りでは、アカネさん達が見学している。
「コーヤ君、何の実験?」
「見ていれば分かるよ。合成。」
僕は、鉄のインゴットが2つ置かれている机を見て、合成スキルを発動し、
魔法袋と同じ要領で、合成して行く。
二分ほどで、鉄のインゴット+2が完成していた。
「よし!上手く行った!」
「え!?インゴットも合成できるの?」
鑑定したアカネさんが驚いている。
「僕も、まさかと思って実験したんだけど、インゴットが合成できるという事は、
他の物質を混ぜると、違う素材になるかも知れない。」
「おー!水晶(コーヤ)君!それって、新発見じゃない!?」
「かもね。とりあえず、試行錯誤していこう。」
一時間ほど、試行錯誤した結果、鉄インゴット×ニッケル300gで、新素材へ進化した。
「名は、フェルムケルか。耐久力を50%引き上げてくれるのは嬉しいね。」
「うん。あと、鋼インゴットとマンガン200gで、耐久力80%増も良いよね。」
リンネさんが、鋼インゴットとマンガン200gで進化した
シュタールネシアを手に持って感想を言う。
ニッケルとマンガンの量は、合成する段階で最低使用量が決められていているようだが、
グラム単位の事もあり、作業に慣れるまで悪戦苦闘した。
逆に、多く入れすぎると、素材の特殊性能が無くなったりするので要注意だ。
「これって、まだまだ、掛け合わせによっては、新素材が完成するよね。」
「うん。アカネさんが言った通り、まだまだ、可能性がありそうだ。
上手く行けば、機械と魔法の融合も、近い内に出来るかも知れない。」
「コーヤ君!それって面白そう♪」
僕達は、この後、色々なアイディアをを出しては、実験して1日を終えた。
ちなみに、今まで、クラン対抗戦のポイントの交換していなかったけど、
新素材を見つけた事で、交換する事にした。
1000ptの古龍の装備素材20個、5000ptの龍王の装備素材20個、
7000ptの古龍王の装備素材10個、50ptの魔法木の種20個、100ptの木材(テアミン)30個、
3万ptの弓(魔法木テアミン使用、攻撃力5万、耐久力8万)、
3万ptの杖(魔法木テアミン使用、攻撃力5万、耐久力8万)