最終更新日 2022/06/05

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Infinite Alternative World(インフィニティ・オルタナティブ・ワールド)
〜探索は食から(仮)〜


13話 錬金術師サラ

5月6日(水曜日)

午後8時

「これは・・・。」

錬金術師のサラは、山岳地帯を抜けて、海の街アクセリアを北上し、
先程、フィンテルに到着した。

そして、冒険者ギルドで、情報収集しようと入ると、
”ゴブリンの血”の看板が、目に入って来た。

「あの、この”ゴブリンの血”の効果は、どの様な感じなのですか?」

「これは、ダンジョンで見つけたと、冒険者の方が持ち込んだ物ですが、
残念ながら、我が支部には、検証する施設がありません。

そこで、買われた方に、使った感想をお願いしているのです。」

「なるほど。それでしたら、1つ買わせて下さい。

錬金術師をしているので、他の品と掛け合わせると、別の効果が出るかも知れません。」

「ありがとうございます。1つ大銀貨1枚になっています。」

お金を払い、王都への行き方を聞いたサラは、冒険者ギルドを後にする。

「さて、王都へ行って問題を片付けてから、研究しましょう。」

サラは、北門から出て、ダンジョンの街ライカークへと繋がる森に入ると、
5人の男に囲まれる。

「やっと見つけたぜ。ステラティア王女。」

「あなた達もしつこいわね。他国に来てまで、暗殺者を差し向けるなんて。」

「くくく。逆に他国なら、死んでも分かるまい。」

「そう。あたしも、あなた達に構っていられないのよ。ウインド・カッター!」

サラ(ステラティア王女)は、瞬動を使って囲みを抜け出すと、
5人に向かって、ウインド・カッターの魔法を使う。

しかし、体に届くかどうかの所で、魔法はかき消される。

「なんですって!」

「くくく。いつまでも、対処しないと思ったか(にやり)」

男達は、好機と見て、サラ(ステラティア王女)を再び囲み、短剣で攻撃して来た。

だが、サラ(ステラティア王女)も体の動きが軽く、
応戦するも、魔法攻撃が封じられているので、決定打を出せないでいた。

「くっ!まずいわね。このままだと、殺されてしまう。」

「お困りですか?」

コーヤSIDE:

「お困りですか?」

僕がこの様に言うと、女性も男性5人も動きを止めた。

「気配を感じさせなかっただと!」

男性5人は、僕の登場で動きを止めるが、すぐに臨戦態勢に入る。

「本当に助けてくれるの?」

女性は、藁にでも縋り付きたいと言う雰囲気だった。

「ええ。あなたが生きる事を、望んでいるならですが。」

「お願い!助けて!魔法が効かなくて困っているの。」

「なるほど。つまりは、魔法攻撃で無ければ、普通に攻撃が通るわけですよね?」

「そうだと思うわ。」

僕達が話している間に、男性5人は、じわりじわりと距離を詰めていた。

「じゃあ。問題ないですね。僕は体術も使えますし。」

男性5人が、僕の間合いに入っていたので、瞬動を使って、後ろに周り、
ゼロ距離でスリープを使い、1人ずつ確実に眠らせて行く。

「うん。こんな感じかな。」

「早い・・・。」

女性は、あまりの早さに呆然としていた。

「う〜ん。この人達をどうしようか。王都に持って行くのが良いかな。」

「あの!王都行くなら、あたしも連れて行って欲しいの!」

女性から、気迫が伝わって来た。

「分かりました。それでは、一緒に行きましょう。これに乗って」

僕はゴールデンウィーク中に、魔物氾濫のダンジョンで入手した素材の使い方を模索していた。

そこで、色々と考えた末に、絨毯に出来そうな素材があり、
試行錯誤しながら、ロマンアイテムである”魔法の絨毯”を作った。

これには、〈速度上昇〉、〈気配遮断〉、〈重量軽減〉を付与した。

「これは?すごく、ふかふかですけど。」

「絨毯を知りません?」

「はい。あたしの国では、この様に手触りが良い物はありません。」

話をしている最中も、ずっと触っている。

「という事は、他国から来たんですか?おっと、男性陣は上空にいて貰いますか。」

僕は、魔力で出来た檻を作ると、そこに男性陣を入れて、上空へ舞い上がらせた。

「すごいですね。この様な事まで出来るとは・・・。」

「さて、行きましょうか。」

速度の調整をしながら、約一時間で、王都に到着した。

王都

サラ(ステラティア王女)さんは、王都に入ると、周りをキョロキョロしながら付いて来る。

相当、自分の国とは違うのだろうと思う。

ちなみに、男性陣は、門で話をすると、王都で処理してくれるとの事で安心した。

そして、王宮に向けて歩いていると、声をかけられた。

「あれ?コーヤさん、お久しぶりです(お辞儀)」

「あなたは、ソアリスさんのお付きの・・・。」

「はい。あの時は、名を言えませんでしたが、私は ウェンディと言います。」

「そうでしたね。あの時は、色々と大変でしたから。

それで、ウェンディさん。ソアリスさんと会えませんか?」

「重要な話の様ですね。分かりました。私が話をして来ますので、
王宮の門の前で、待っていてくれますか?」

「分かりました。お願いします(お辞儀)」

ウェンディさんは、足早に王宮に向かった。

その後10分くらいで、王宮の門の前に着いた。

王宮の門前

僕達が着いた時には、ソアリスさんとウェンディさんが、門の前で待っていてくれた。

「すみません。王女様にここまで、来て貰って。」

「お久しぶりです。命の恩人を出迎えるのは当然の事です。」

「そこまで、しなくても(苦笑)

実はこちらの女性が、話す事があると言うので、お連れしました。

僕はこのまま、拠点に帰りますので、よろしくお願いします。」

僕がそう言うと、2人の王女から待ったがかかった。

「いえ。この話は、コーヤさんにも聞いて欲しいです。」

「それには、私も賛成です。

話の内容次第では、コーヤさんへアイテム開発をお願いするかも知れません。」

説得されて、僕も話を聞く事になった。

国王様の私室

「国王様、お久しぶりです(お辞儀)」

「おお!コーヤよ。良く来た。」

皆が座ると、ステラティア王女が話を始める。

「私は、隣国リスピア王国で、王女をしているステラティアと言います。

今から4ヶ月前の王族会議で、突然、我が国王は、フォルセニア侵攻を言いました。

普通であれば、反対されますが、その時には反対意見がありませんでした。

周りの人の顔を見ると、別人の気配に感じられました。

たぶん、アイテムか何かで、洗脳もしくは暗示をかけられていたのかも知れません。

私は、母が一般人で、錬金術師で色々な物を作っていて、
流行病で亡くなりましたが、遺品の中に、精神攻撃・状態異常70%削減という指輪があったので、
ずっと、着けていたのが幸いしたようです。

その後、なんとか、フォルセニア王国へ行けないか模索しましたが、
タイミングが無かったのですが、先月、良いタイミングがあり、脱出に成功しました。

一番早く到着する経路を考えて、山岳地帯を抜けて来ました。

軍隊が到着するまで、4ヶ月近くまだかかると思っています。

脱出する時点で、国内に向けて兵の募集をしていましたが、
王都騎士団が5000人、募集兵が3000人、冒険者2000人の計1万人を予定していて、
5000人の内、半分近くは集まったらしいですが、一ヶ月でどれだけ集まったかは不明です。

あと、軍隊が移動する経路は、私が移動した経路と似た場所を通ると思います。

ですので、山岳地帯を防衛する事をおすすめします。以上です。(お辞儀)」

この話を聞き終わっても、言葉を発する人はいなかった。

国王様が重い口を開く。

「むう。この情報が無ければ、山岳地帯を占領され、足場を作られてしまっておったじゃろう。

しかし、1万の軍勢となると、対抗する事は簡単ではない。」

ソアリスさんが話を引き継ぐ。

「そうですね。王宮では魔族の襲撃で、まだまだ、復興は道半ばです。

今後の襲撃を考えると、王都の騎士団は動かせません。

他の騎士団も、王都陥落を考えると、簡単に防衛隊を派遣するのは、
やはり、厳しいと思われます。」

ステラティア王女は、神妙な面持ちで聞いていた。

「では、問題点を出して行きましょう。

まず、国王様。リスピア王国の軍隊が、国境線を越えて、進軍している情報は無いんですよね?」

「うむ。この一ヶ月、各地域と情報を共有すべく、動いていたが、その様な話は無かった。」

「であれば、リアルタイムで、その場の状況が分かれば、対応は可能ですね。

あと、派遣できる人数の問題として、罠で補いましょう。」

「コーヤさん。どうやって補うんですか?」

ウェンディさんが聞いて来た。

「戦いって、別に人数が多ければ勝つわけではありません。

魔族の襲撃しかり、魔物の氾濫しかりです。

勝敗を分けるのは、その場の臨機応変さにかかっていると思っています。

それに、敵軍が山岳地帯を通るなら、十分に勝機があります。

なんせ、障害物が多いですから、伏兵を配置する事も出来ますし、
罠を設置する事によって、心理戦で疑心暗鬼にする事も可能です。」

僕の言葉で、重苦しい雰囲気が、少し、緩和された様に感じた。

「ふむ。なるほどのう。戦い方次第というわけじゃな。」

国王様が一番悲観していたが、少し、元気が出たようだ。

「そうです。それと、もしかすると、魔族が絡んでいる可能性もありそうです。」

「まさか、前回失敗したから、軍事力が高い国を利用するという事ですか?」

「ですね。そもそも、人族の国家は、フォルセニア以外にも大陸にはあるのに、
なぜ、この国を狙うのかを考えれば、何か、弱みがあるのでは無いか?と思います。」

ソアリスさんが考え事をしている。

「弱みかは不明ですが、図書室の中に、特別室があります。

そこには、建国してからの品や、発掘された品などがあります。

もしかしたら、その中に糸口があるのかも知れません。

ただ、残念ながら、解読など精査出来る人が少なく、遅々として進んでいません。」

ソアリスさんが悔しそうな顔をする。

「なるほど。その中にある本を複製しても良いですか?」

「複製出来るのですか?失われたと云われていますが。」

「はい。以前にダンジョンで見つけました。

なので、僕の方でも調べながら、魔王戦に有効な方法があれば教えします。

あとは、リスピア王国内と、国境の状況をリアルタイムで知る事が出来る
アイテムがあるので、量産して配置しようと思います。

これがあれば、戦略を立てる事も可能でしょう。」

「また、コーヤに世話になったな。すまない(頭を下げる)」

「そうですね。まだ、コーヤさんの貢献に見合う報酬を用意できていないのに。」

「気にしないで下さい。他国が来て、困るのは僕も同じです。

研究をする時間が少なくなりますから。」

ここで、今まで、話に参加していなかったステラティア王女が、話に加わる。

「そう言えば、あたしを助けてくれた時も、すぐに来ましたよね?

近くに拠点があるのですか?」

「ええ。すぐ近くにあります。一応、全方位に見張りを置いていますから、
今回の事も、すぐに分かりました。」

「あの!でしたら、居候させてもらえませんか?

あたしも母の意志を継いで、錬金術師の道に入ったのですが、
実験する設備のある場所が無く、どうしようかと思っていたのです。

もちろん、対価は払います。」

「(少し考えて)そうですね。数人分の泊まれる場所は作っていますし、
僕も全ての設備を、毎日使っていませんし、構いませんよ。」

「ありがとうございます!」

この後、王宮側には、今まで通り、魔族対策をお願いして、
情報収集は僕がする事で落ち着いた。

ステラティア王女は、偽名のサラを今後も使うと言ったので、
王女を封印したようだ。

あと、重要な荷物は、僕の拠点に置くが、基本は宿屋で寝泊まりをするらしい。

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