最終更新日 2022/06/05

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132話  空間魔法札

5月18日(日曜日)

アキホお姉ちゃん達に、装備を渡して一週間が経過した。

今回のダンジョン攻略は、フィンテルの時と違って、攻略組だけでなく、
あまり戦闘を得意としていない人でも、報酬を多く貰えるようになっていて好評だ。

攻略の進行としては、第三形態突破が全体の半分、第四形態突破は4分の1程度、
最終形態突破はゴリ押しした集団が1組したようだ。

知り合い勢は、全員第三形態を突破したが、第四形態で足止めされていて、
カイトが相談にやって来た。

「それで、突破口を開けるアイテムが欲しいと。」

「ああ。そうだ。最悪の事態である、水中での戦いは、回避された。

だが、第四形態の素早さ特化だからか、タイミングが合わないと、魔法での拘束も難しい。

この形態は、完全体一歩手前だからか、魔法も通常攻撃も強くなっている。」

「う〜ん。

一人〈気配ゼロ〉を習得して、みんなが引きつけている間に、高出力攻撃するとか?」

「最終形態つまり、完全体を倒せた要因はそれもあるらしい。

しかし、この短期でそれは無理だ。

それに、当たりなら良いが、ハズレなら再戦があるからな。習得する余裕は無い。」

「となると、レイドボスを拘束して、攻撃を当てるか、溜め込んだ高出力攻撃で体力を削るか。

拘束の場合は、間接的だとダメだろうから、直接札を貼り付ける必要があるかな。

高出力攻撃は、周りの魔力を時間をかけて吸収し、至近距離からなら、相当削れるだろうね。」

「確かにな。しかし、思った以上に速いんだ。だから、みんな苦戦している。

一歩先を予想しても当たらないからな。高出力攻撃も当たらなければ意味が無い。」

「カイトさん。なにも、高出力攻撃は当てるだけでは無いですよ。」

ミュウちゃんとシエラちゃんがやって来た。

「2人ともいらっしゃい。そう言えば、四天王戦で面白い事してたよね。」

「そう。あれを使えば、相手の裏をかける可能性が高いと思う。」

シエラちゃんは、当時を思い出している様だ。

「なんだ?思い出せないんだが。」

カイトは、公式で使われていた場面を見ていないのか、懸命に思い出そうとしている。

「面倒だから話すけど、2人は四天王に気付かれない様に、
わざと外して五芒星を作ったんだ。

その真ん中に誘導されて、勝利を手にしたんだよ。」

「なるほど。使いようと言うわけか。」

「それでね。お兄ちゃんに、レイドボスを足止めする為の防壁を、
アイテムで作れないか相談に来たの。」

「フィンテルの封印状態を再現して、倒してしまおうと?」

「そう。でも、試行錯誤したけど。全然ダメだった。」

シエルちゃんが、今まで試した方法を教えてくれた。

「分かった。良いアイデアが閃いたから、それで試作品を作って見るから。」

「ありがとう!!検証はわたし達に任せて!明日のいつもの時間に来るね。」

「お兄ちゃん、ありがとう。私達は、みんな待っているから。」

2人は要件を伝えて、メンバーの所に戻って行った。

「コーヤ。何を思い付いたんだ?」

「まだ、完全な形になっていないから、話せないよ。

明日、カイトの問題も解決出来る試作品を考えておくから、検証は任せる。」

「おう!検証は任せておけ!」

5月19日(月曜日)

午後8時

時間がある知り合いが、集まって来た。

「お兄ちゃん!来たよぅ!」

「俺達も揃っているぞ。」

「じゃあ。始めようか。まず、フィンテルの封印状態の再現ては、これを作って見た。」

取り出したのは、魔法札だ。

「あれ?お兄ちゃん、いつもの札と違う。」

「そう。今まで札として使っていたのは、道具屋や本屋で買える、普通の紙を使っていたんだ。

しかし、みんなの不用品には、ちょこちょこと魔法紙と言うのが、混じっていたから、
鑑定すると、この紙は、魔力を蓄える木のテアミンの樹皮から作られていた。

面白い性質を持っていて、勝手に周りの魔力を吸収するんだ。

そこで、アカネさんに実演して貰うから、見ていて。アカネさん。お願い。」

アカネさんは、手に持っている魔法紙で作られた札を、適当な空間に貼り付ける。

すると、札の外側から透明な板のような物が形成されて、
1メートル四方の透明な板の様な壁が完成した。

「なにこれ!?空間に貼れるの!?」

みんなも驚いているが、ミュウちゃんが一番驚いている。

「最初は、床に置くなり、レイドボス本体に貼るなりする方が、
使いやすいかと思っていたんだ。

その後、アカネさんとリンネさんとで、構想を話し合っていた時、
空間を小さく出来ればって話が出た。

家にいる時に、テレビのチャンネルを動かしていたら、空間収納の番組があって、
そう言えば、魔法袋は空間を拡げているなと思って、基本パーツを確認したら、
あったから作ってみたんだ。」

「リンネ。私達もその発想は無かったよね。

魔法とかバンバン使っていたけど、魔物に当てる事しか考えていなかったし。」

「うん。現実でも繋がっていないと空間は使えないしね。

パントマイム見たいに、繋がっていない空間を見せる方法があるのは、
ゲームだからこそだね。」

「まぁ。とは言っても、朝、早めに学校の準備して、急いで試作品作ったから、
さっきの実演程度しか出来ないんだ。」

「コーヤ。長さとか変更出来ないのか?」

カイトが質問して来た

「ちょっと待って。え〜と、高さ2メートル、横の長さは4メートル、厚さは50センチに設定と。」

良さそうな場所に貼って見ると、やはり、面積が多くなればなるほど、時間はかかり、
指定の状態になるまでに、30分を要すると鑑定で出た。

「う〜ん。時間がかかり過ぎるね。戦闘で30分は痛いなぁ。

強度測りたいから、誰か、魔法や武器で攻撃して見て。」

その後の検証で、厚さ50センチの場合、初級魔法までは耐える事が出来たが、
中級魔法ではすぐに破壊された。

武器の場合は、強化されていない武器なら、持ちこたえるが、強化武器だとダメ。

「強度を上げないと使い物にならないね。それと、壁完成までの時間か。」

「コーヤ。俺の方の解決策はどうなった?」

以前、カイトから依頼のあった話をする。

「1つは、過去に使われていた戦法で、1人が必ず死ぬ代わりに、敵の能力を削除する方法。

2つ目は、魔法カードを使って、魔法の威力を増幅させる方法。今の所、この2つかな。

「コーヤくん。1つ目は物騒なんだけど、それだけ強力なのよね?」

オリエさんが考えながら聞いて来た。

「ええ。なんでも、失敗した事が無いと書かれていました。

ただ、何回使ったとかは書かれていないので、信憑性はどうかなって感じです。」

「コーヤさん。2つ目の増幅なんだけど?どんな?」

ユニさんは、表情から増幅に興味があるようだ。

「考えているのは、魔法カードに〈増幅〉を付与して、
魔法カードの裏に加工したテアミンの木を合成。

予め、テアミンの木に魔力を溜め込んで、高出力攻撃する時に増幅させる感じですね。」

この話を聞いて、オリエさんとユニさんが、改良点について話しを始めた。

「分かった。コーヤは、壁と増幅の改良を頼めるか?1週間で出来る所までで構わん。

どのみち、この方法だけでは、完全体を倒せないだろうからな。」

みんな、頷いている。

「了解。出来る限り、実戦投入出来る様に頑張るよ。」

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