故爾(ゆえに)鳴女、天自(より)降りて到りて、天若日子之門湯津楓上而(に)居る
天神之詔(みことのり)の命の如く、委曲(くわしく?)言う
爾(なんじ)天佐具賣【此三字以音】此の鳥の言うを聞く
而(すなわち)、天若日子が語りて言う
此の鳥者(は:短語)、 其の甚だ鳴る音惡(にく)む
故に、射殺す可(べ)きと進んで云う
卽(すなわ)ち、天若日子、天神の所で賜った天之波士弓・天之加久矢を持ち、其の雉を射殺す
爾(なんじ)其の矢、雉の胸自(より)通り、而(すなわち)逆に上に射る
天安河之河原に坐す天照大御神・高木神之御所まで逮(およ)ぶ
是(これ)、高木神者(は:短語) 高御產巢日神之別名
故、高木神が其の矢を取りて見れ者(ば:短語)、其の矢羽に血著しく
於是(これを)、高木神之(これ)告げる
此の矢者(は:短語)、天若日子が賜った所之矢
卽(すなわ)ち、諸神等に示して詔(みことのり)す
天若日子、或い者(は:短語)命(めい?)に不誤(あやまらず)射ったと爲す
惡(にく)む神之矢之(これ)至れ者(ば:短語)、天若日子に不中(あたらず)、
或るい者(は:短語)邪心有り
天若日子、此の矢に於いて、麻賀禮【此三字以音】と云う
天佐具賣
原文:
爾天佐具賣【此三字以音】聞此鳥言而 語天若日子言
解読:
爾(なんじ)天佐具賣【此三字以音】此の鳥の言うを聞く而(に)、天若日子が語りて言う
「天佐具賣」には、「此三字以音」と注記があるので、「音読み」指定となります。
「天」:阿麻(あま)
「佐」:呉音・漢音:サ
「具」:呉音:グ、漢音:ク
「賣」:呉音:メ、漢音:バイ、慣用音:マイ
上記により、呉音「さぐめ」、漢音「さくばい」となりそうです。
「
伊多久佐夜藝弖」で考察し、
「「三角測量」し、家具などの配置を助け合いながら設置する。」と解釈しました。
「具」の解釈は難しいです。
情報収集で、色々なサイトを見ると「貝」を「鼎」と書いている人が多いですが、
なぜ、そうなのか?の説得力がありません。
参照194のサイトにある「説文解字」には「共置也。从廾。貝省。古㠯貝爲貨。」とあります。
「古㠯貝爲貨」は「古き貝を㠯(もち)いて貨と爲す」と解読できそうです。
「貨」を調べると、「化」+「貝」で形成されているとあり、
普通に考えれば、「貝が化けた」と解釈できます。
「古き貝」とは何か?を考えると、一番に思いつくのは「アンモナイト」です。
合わせて考えると、「アンモナイトの化石」を「貝が化けた」と、
当時の人達が解釈しても不思議ではありません。
これにより、「具」の「貝」と思われる字形は「アンモナイトの化石」の可能性があります。
実際に参照197のサイトにあるように、
縄文時代の遺跡調査で「アンモナイトの化石」が見つかっている様です。
片手ではなく、「両手」なので、大きい「アンモナイトの化石」だと思われます。
ちなみに、「鼎」と「具」では、「甲骨文字」の字形が、大きく異なるので、同一とは出来ません。
参照194: 具: zi.tools
参照195: 具的解释|具的意思|汉典 “具”字的基本解释
参照196: 貨 とは? 意味や使い方
参照197: 向別遺跡・ 栄丘遺跡・昌平町遺跡・常盤町遺跡
問題は、「手」の字形では無く、「又(三本指)」を使っているところです。
「手」の字形であれば、「手全体を使った」と解釈出来ますが、
両手の「三本指」で持っていると言うのは、多分に違うと思います。
そうなると、下の部分は何か?となります。
多くのサイトでは「廾」と書かれていますが、欠点があります。
参照195のサイトにある、大きくて見やすい「甲骨文」を見ると、
「貝(アンモナイトの化石)」の下に「‖」があるのが分かります。
これは、推測ですが「担ぎ棒」ではないかと思います。
上にある「貝(アンモナイトの化石)」が大きいので、
二本の棒で持ち上げて、数人で担いだのかも知れません。
もしくは、「レール」の様に、上に「貝(アンモナイトの化石)」を置いて、
転がしながら、目的地に向かったのかも知れません。
この「‖」は「甲骨文字」では存在していましたが、「金文」では短くなり、
「貝」の字形と混同されたのだと思われます。
ただ、「説文解字」の「共に置く」を考えると、
「担ぐ」が正解なのかも知れませんが、情報が足りません。
「廾」ですが、検索すると「両手を合わせた形」というのを目にします。
しかし、「両手」であるなら「手」の字形を使えば良いのに、
わざわざ、「三本指」の又の字形を使っています。
しかも、「廾」では、「又(三本指)又(三本指)」と繋がった字形になっていますが、
「具」の字形は、そうではなく、単に「又(三本指)」が距離を置く形になっています。
他にも、参照194のサイトにある「春秋篆書石鼓文」の字形も、
「又(三本指)」が向き合っているのではなく、「下から支えている」と解釈できます。
これらにより、「具」の字形には、「廾」の字形が入っていないと言えそうです。
意味としては、今回は「アンモナイトの化石(推測)」ですが、
「重たい石」を運び込むと解釈する事が出来るように思います。
調べると「出」+「网」+「貝」で形成されているようです。
このまま、繋げて考えれば、
「網(网)で取った貝が、網(网)に入りきれなくなったので出した」と解釈できます。
この「出した」が、「販売」になるのかは不明です。
誰でも簡単に入手出来る「貝」を、置いて帰っても、「販売」にはならないでしょう。
この漢字は、参照194のサイトには、「秦簡帛嶽麓書院」の字形が最初に載っています。
なので、「甲骨文字」や「金文」の字形を知る事は出来ません。
また、「買」は、「商甲骨文𠂤組」の字形が最初です。
この「買」の「説文解字」の字形は、当然、「賣」の「出」の字形を抜いただけです。
なので、当然、「网」+「貝」となり、「網(网)で貝を取る」となります。
ここでも、「売買取引」に繋がりません。
これは、大きな問題です。
元々、「売買取引」ではなく、物々交換なので、
自分たちが食べる量を持ち帰るのが基本だったと思われます。
そのため、「売買取引」に使われた要因があるはずです。
多分に、「売買取引」に使われたのは、漢字が誕生してから、後に流用されたと思われます。
最初は、問題なく、入手するのが簡単だから、取っていたが、
潮を流れか、気候変動か、何かで取れなくなって、取引する必要が出たとか、
大陸などから移住してきた人達の価値観が異なるので、それが影響したのか。
参考に出来る情報がありません。
参照194: 賣: zi.tools
参照195: 買: zi.tools
貝
「貝」を検索すると「子安貝」という言葉が出てきます。
さらに調べると、参照196のサイトには、下記の様に書いています。
タカラガイ(宝貝、英: cowry, cowrie)はタカラガイ科の巻貝の総称。
特にそれらの貝殻を指すこともある。タカラガイの貝殻は丸みを帯びて光沢があり、陶磁器のような質感である。
土地によっては貝殻を通貨として利用したり、装身具や儀式的な用途に用いたりする。
生態:
タカラガイは世界中の熱帯から亜熱帯の海域に分布し、全て海産である。
特にインド洋や太平洋の、潮間帯から水深 500m にかけての深度に多く生息する。
砂の海底よりも岩礁やサンゴ礁を好む。
Wiki
上記にある、
「特にインド洋や太平洋の、潮間帯から水深 500m にかけての深度に多く生息する。」は
大きなヒントです。
「賣」と「買」の漢字にある「貝」が、「タカラガイ」だとした場合、
深い海域に潜り、網に入れて、引き上げたとも解釈できますが、
わざわざ、その場所に出かけたのでしょうか?
それであるならば、字形にも反映されているはずですが、見た限りありません。
これは、「インド洋や太平洋」で漁をしている人達が、
海中から見つけたりしたのでは無いか?と思っています。
そもそも、「二枚貝」と解釈できる字形に「巻き貝」を当てはめるのはどうかと思います。
縄文から弥生時代の間には、色々な人達が安住の地を求めて、
色々な土地に移住した時代なので、
「貨幣」としていた場所が存在していても不思議では無いです。
これらから見ても、「賣」も「買」も本来は、「「网」の許容量の差」なのだと思います。
「賣」と「買」を「貨幣」に紐付けたのは、漢字の字形が浸透した後だと考えています。
ちなみに、「网(網)を使って貝を取る」ので、「潮干狩り」や「地引網」と考えましたが、
調べても良く分かりませんでした。
あと、「
宇那賀氣理弖」でも「貝」について考察していますが、、
こちらでは、「説文解字」の「海介蟲也。居陸名猋。在水名蜬。象形。古者貨貝而寶龜。
周而有泉。至秦廢貝行錢。凡貝之屬皆从貝。」の考察になっています。
参照196: タ カラガイ
网
基本的に「网」は「網」で問題ないですが、他にも「罒(あみがしら)」という種類があります。
この字形は、「目」を横倒しにしている様に見えます。
この字形に似ているのが、「𧶠」という漢字で、「賣」の「网」の箇所が「囧」になっています。
「囧」の字形は、「窓」を表しているようです。
この字形を使っているのが「讀」などがあります。
混同していないと思いますが、古事記の編纂者達が見た時に、「网」なのか、
「囧」なのか、気になります。
この様に考察しましたが、
「貝」は、「アサリ」や「ハマグリ」などの「二枚貝」を指す可能性が高いので、
「巻き貝」である「タカラガイ」では無いと考えられます。
なので、「貨幣」として考えるのは、間違っていると思われます。
「网」に、「網」以外の意味があれば良いですが、調べた限り、その様な事は無いので、
「買」は、「网(あみ)で貝を取る」事、もしくは、「取った貝を网(あみ)に入れる」を
指すで良いと考えています。
「賣」も「网(あみ)で貝を取る」事、もしくは、「取った貝を网(あみ)に入れる」にプラスして、
「出る」で「持ち帰らなかった「貝」」と解釈できます。
「佐具賣」について考察しましたが、現代に伝わる意味とは異なりそうです。
「佐」:「三角測量」し、家具などの配置を助け合いながら設置する。
「具」:「アンモナイトの化石」を、二本の棒で担いで運び込む
「賣」:取った貝を网(あみ)に入れて、入らなくなったので出す
上記の様に考えた場合、「佐具」で「建材」をイメージできます。
ここに原意は違うけど「賣(う)る」として加えると、「建材」を「賣(う)る」となります。
「佐具賣」以降の内容を見ると、「道速振荒振國神」や「荒振神」の話は登場しません。
つまり、「道速振荒振國神」や「荒振神」が「災害」と解釈できるので、
「復興」に移って、まだ、使えるものをまとめて売ったという考えが出来ます。
もし、古事記編纂時の漢字が「賣」ではなく「買」だった場合、
仮設小屋の設置や建材を買ったと解釈できます。
どちらが正しいのかは不明です。
「天佐具賣」という人物は、「会計業務」を担当していたのかも知れません。