目次
是を以って、高御產巢日神・天照大御神、亦、諸神等に問う
葦原中國之所に遣わした天菩比神が久しく、不復奏(ふくそうせず)
亦、何(いず)れ之神を使わすが吉
爾(なんじ)、思金神答えて白(もう)す
天津國玉神之子 天若日子遣わす可(べ)き
故爾(ゆえに) 、天之麻迦古弓【自麻下三字以音】・天之波波【此二字以音】矢賜るを以って、
天若日子、而(すなわち)遣わす
於是(これを)、天若日子、其國に到り降りる
卽(すなわ)ち、大國主神之女 下照比賣娶る
亦、其國を慮(おもんぱか)りて獲る
八年于(に)至り、不復奏(ふくそうせず)
故爾(ゆえに)、天照大御神・高御產巢日神、亦、問諸神等に問う
天若日子、久しく不復奏(ふくそうせず)
又、曷(いず)れの神を遣わすを以って、天若日子之淹留所の由を問う
於是(これを)、諸神及思金神、答えて白(もう)す
雉名鳴女を遣わす可(べ)き
之(これ)詔(みことのり)する時、汝、天若日子者(は:短語)行った狀(様子)を問う
汝、葦原中國に使わす所以者(は:短語)、
其の國之荒振神等之和(やわらぎ)者(は:短語)趣(すみや)かに言う也
何(いず)れ、八年于(に)至り不復奏(ふくそうせず)
淹留所
原文:
故爾 天照大御神・高御產巢日神 亦問諸神等 天若日子 久不復奏
又遣曷神以問天若日子 之淹留所由 於是諸神及思金神 答白
解読:
故爾(ゆえに)、天照大御神・高御產巢日神
亦、問諸神等に問う
天若日子、久しく不復奏(ふくそうせず)
又、曷(いず)れの神を遣わすを以って、天若日子之淹留所の由を問う
於是(これを)、諸神及思金神、答えて白(もう)す
「天菩比神」は「不復奏」でも探したりしませんでしたが、
この場面では、「天若日子」の居場所を知りたいとなっています。
ただ、「天照大御神・高御產巢日神」が知りたいのでなく、
陳情書の様な種類を提出した人間がです。
「淹」は、「デジタル大辞泉」によると、「冷蔵庫に淹れる」の様に、
「外側にあるものを、ある範囲内、内側の場所に移す。」という意味があるようです。
しかし、字形を見ると、意味が変わるのでは?と思うようになりました。
参照169のサイトの「淹」の字形は、「漢隸書」以降しかありません。
なので、本来の字形を知る事はできそうも無いです。
「説文解字」の字形ですが、なぜか、
参照169のサイトと参照170のサイトの字形が異なっています。
もしかすると、「淹」には二種類あるのかも知れませんが、
現時点では判断できません。
参照169のサイトの「淹」と参照171のサイトの「奄」を比較すると、
「説文解字」の字形が一致しています。
参照171のサイトの字形は、小さくて分かりづらいので、
参照172のサイトにある字形を見ると、「电」と「大」が逆の位置になっています。
「电」は、調べると「申」になっているので、参照173のサイトを見ると、
「西周早期」の字形では、確かに一致していますが、
「説文解字」の字形は、参照172のサイトの「説文解字」とは一致していません。
これにより、「电」=「申」と考えるのは違うのかも知れません。
そもそも、「申」は「电」の様に、「下が伸びる」字形になっていません。
ちなみに、「申」の「説文解字」と一致するのは、「曳」の「説文解字」です。
参照169: 淹: zi.tools
参照170: 淹的解释|淹的意思|汉典 “淹”字的基本解释
参照171: 奄: zi.tools
参照172: 奄的解释|奄的意思|汉典 “奄”字的基本解释
参照173: 申: zi.tools
上記のように、字形について考えたのですが、
「电」の箇所が、「申」ではなく、別の漢字だと思いますが、見つけられませんでした。
「奄」ですが、参照171のサイトにある「西周金文西周早期」の字形では、
「申」+「大」なのに、「秦簡帛睡虎地」の時代には、なぜか、逆になっています。
この件について、言及しているサイトは、調べた限りなかったです。
字形の位置が変わると言うのは、大きな変化なので、
意味が変化しないというのは、違うかなと思っています。
色々と意味について、探しましたが、有益な情報がありませんでした。
「奄」は、参照171のサイトの「説文解字」には、「覆也。大有餘也」とあります。
「大有餘也」は解読すると、「大きな餘(あまり)有る也」となりますが、
「覆」と合わせると、「大きな餘(あまり)有る」物で「覆う」となりそうです。
「大きな餘(あまり)有る」とは、何を指すのでしょうか?
もし、繋がる話ならば、「覆(おお)う」事が出来る素材になります。
であるならば、「布」だと思いますが、それなら、「布で覆う」で良い気がします。
もう一つ、「覆(おお)う」ではなく、「覆(くつがえ)す」だった場合、
意味が、少々変わってきそうです。
「大きな餘(あまり)有る」と「覆(くつがえ)す」だと、「覆(くつがえ)す」が「反転」なので、
「大きな餘(あまり)」で「転覆した船」をイメージします。
「大きな餘(あまり)」は、「転覆した船」の「残骸」の可能性がありそうです。
そうなると、「奄」に「氵(さんずい)」を加えた「淹」の漢字の意味は、
「水」と「反転」となるので、「転覆し、バラバラになった船」を指すと考えました。
あと、参照171のサイトを、日本語表示で見ようと変更すると、
「淹」は「洪水」に変換されました。
「洪水」と「転覆し、バラバラになった船」は、繋がりますから、
「淹留所」とは、単なる「滞在地」ではなく、災害現場の意味が強いのかも知れません。
「天若日子之淹留所」を知りたい理由を、「諸神及思金神」が答えるのですが、
「諸神」とは、どれだけの人数なのでしょうか?
答えた内容ですが、下記になります。
原文:
可遣雉名鳴女 時 詔之 汝 行問天若日子狀者
汝所以使葦原中國者 言趣和其國之荒振神等之者也解読:
雉名鳴女を遣わす可(べ)き
汝、之(これ)詔(みことのり)する時、問いて行う
天若日子の狀(じょう:様子)者(は:短語)
汝、葦原中國を使う所以者(は:短語)、
其國之荒振神等之和(やわらぎ)者(は:短語)趣(すみや)かに言う也
上記の様に、「諸神及思金神」が話すのですが、「又遣曷神以問天若日子之淹留所由
(又、曷(いず)れの神を遣わすを以って、天若日子之淹留所の由を問う)」の答えとして、
適していないように思います。
なぜなら、「諸神及思金神」が話さなければダメなのは、「由」とあり、「理由」を聞いています。
しかし、理由が存在していません。
「雉名鳴女」が登場しますが、「雉名鳴女」なのか、「雉」の「名」が「鳴女」なのか、
判断にすごく困ります。
そこで思ったのが、「特殊部隊」の名ではないか?と思うようになりました。
「雉」は、「矢」+「隹(ふるとり)」で形成されています。
「矢」はそのままですが、「隹(ふるとり)」は、
参照177のサイトの「説文解字」には、「鳥之短尾緫名也」とあります。
解読すると「短い尾の鳥之緫(総)名也」とあり、「短い尾を持つ鳥の総称」と解釈できます。
「隹(ふるとり)」が、「短い尾を持つ鳥の総称」なのは分かりましたが、
「矢」はどの様に、関係するのかを調べると、参照175のサイトが見つかりました。
そこには、「「飛んでいる鳥」の下から「矢」を射る」字形と解釈出来ます。
参照174のサイトで、確かめると、
同じ字形(「雉」乙8751合10513𠂤賓間)がありました。
そうなると、「雉」がある程度の高さまで飛べるのか?が問題になります。
参照178のサイトには、「低空飛行」とあります。
これにより、「雉」とは、現代の「キジ」とは異なることになります。
「低空飛行」ならば、下から矢を射るのは難しいでしょうから。
参照174: 雉的解释|雉的意思|汉典 “雉”字的基本解释
参照175: 音 符「矢シ」<や> と 「疾シツ」「嫉シツ」「雉チ」 - 漢字の音符
参照176: 漢 字「雉」の成立ち
参照177: 隹: zi.tools
参照178: キ ジって飛ぶの?
「雉」について考察しましたが、
最低でも「仕留める」事が出来る程度の「鳥」だと解釈しました。
調べると、「尾が短い鳥」でも、「オオハム」の様に「速く」飛べる鳥はいるようです。
あと、「キジ」の「鳴き声」について調べると、「悲鳴」に聞こえるともありました。
そこから、葬儀で泣く、「泣き女」かと思いましたが、
「キジ」ではない可能性もあるので、違うだろうと考えています。
ちなみに、「野鶏」というワードが、調べている時に出たので調べると、
参照179のサイトに「野鶏は、雉の別名」とあります。
これ、実は別名ではなく、「野鶏」は現代のような「キジ」を指して、
「雉」は、「空を高く飛べる鳥」なのではないか?と考えています。
参照179: 野 鶏(ヤケイ)とは? 意味や使い方
「時詔之汝行問」を「汝、之(これ)詔(みことのり)する時、問いて行う」と、
解読しましたが、この「汝」とは、誰のことでしょうか?
今まで、「高御產巢日神・天照大御神」や「天照大御神・高御產巢日神」と、
きちんと名を書いていましたが、なぜ、ここでは「汝」になっているんでしょうか?
可能性としては、「高御產巢日神・天照大御神」や「天照大御神・高御產巢日神」が、
いない場所で話をしているのか?と考えています。
「天若日子之淹留所」の箇所から、話が噛み合っていない様に思います。
原文:
行問天若日子狀者 汝所以使葦原中國者 言趣和其國之荒振神等之者也
何至于八年不復奏
解読:
天若日子の狀(じょう:様子)者(は:短語)
汝、葦原中國を使う所以者(は:短語)、
其國之荒振神等之和(やわらぎ)者(は:短語)趣(すみや)かに言う也
調べると、「爿」の箇所が、字形サイトの内容とは違う意味かも知れません。
参照180のサイトにある「爿」の字形と、参照181のサイトにある「爿」の字形が、
似てはいますが、同じでは無いようです。
比較すると分かりますが、「狀」の「爿」は、「H」が縦に並んだ字形をしています。
それに対して、「爿」は、「一本線」に「┐┌」の様な字形が繋がっています。
参照181のサイトにある「爿」の「説文解字」には「反片爲爿」とあり、
「片」を反転した形と解釈できます。
参照182のサイトにある「片」の「説文解字」の字形と、確かに一致します。
これにより、「狀」の偏である「爿」と、「爿」の字形はイコールでは無い事が分かりました。
参照180のサイトにある「狀」の「説文解字」には、「犬形也。从犬。爿聲」とありますが、
「爿」の意味については、書かれていません。
「犬の形」であるならば、旁の「犬」があるので、理解不能です。
でもここから、本来は「犬種」を表していたのではないか?と考えています。
長い年月が経過し、その間に、重要な情報が抜けてしまったのだと思います。
参照180: 狀: zi.tools
参照181のサイトにある「爿」の「字源諸説」には「説文」とはありますが、
下の方にある「説文解字」には、「説文解字注」の内容しかありません。
「説文解字注」の内容は、「1815年」当時の情報なので、
本来の意味が、知っていたと考えるには難しいと思います。
内容の中に、「附注孫海波《甲骨文編》:「《說文》有片無爿、〜」とありますが、
もし、「説文解字」に記載されていたのならば、その情報が表に出ないのか疑問です。
多分に、一番上に情報を持ってきていないので、
信憑性が足りないと感じていたのかも知れません。
ちなみに、「康熙字典」でも「説文解字」の内容を載せている様ですが、
多いので、下記にまとめます。
【説文】牀从木爿聲。【註】徐鍇曰:爿則牀之省。象人衺身有所倚著。
至於牆壮戕狀之屬、(大+大+_)李陽冰言木右爲片,左爲爿。【説文】無爿字,故知其妄。
《説文》有爿部,鍇卽唐宋閒人,不應云無。且玉篇亦無爿部,類篇爿字偏旁歸幷片部,篇海止有牀部,亦俱無爿部。司馬光曰:傳寫之 譌,片或作爿。此皆祖述說文。
若據周鄭二家,而廢徐氏之說,亦未爲當,存以俟考。又字彙,蒲閑切,音瓣。爿片未知所據,然爿片二字,今俗音有之。
上記にあるように、「説文」の場所を引用しましたが、情報が統一されていません。
次に「字義」の一番最初に「劈木而成的木片」があります。
解読すると「木を劈(ひきさき)、木片而(に)成る」になりそうです。
「劈木而成的木片」とは違いますが、
参照183のサイトには、「版築のとき、左右にあてて中の土を衝き固める板」とあり、
縦になっているので、説得力があります。
あと、「漢多」に「甲骨文象豎寫的牀。「爿」是「牀」的初文,本義是牀,異體又作「床」。」
とありますが、参照184のサイトにある「牀」の「説文解字」の字形を見れば分かる通り、
「牀」は「狀」と同じ分類にあるので、間違っています。
ここから、「爿」を「寝台」などに考えているサイトがありましたが、
そもそも、字形が異なるので違います。
参照181: 爿: zi.tools
参照182: 片: zi.tools
参照183: 爿 とは? 意味や使い方
参照184: 牀: zi.tools
上記の情報を基にして、「狀」の偏である「爿」を考えていきます。
本来であれば、「説文解字」で方向性が見えてくるのですが、今回はそうではなかったです。
「狀」の「説文解字」には、「犬形也。从犬。爿聲」とあり、
「爿」の意味として出てくる「寝台」などとは繋がりそうも無いです。
「狀」の解釈は、すごく難しいです。
「時 詔之 汝 行問天若日子狀者」を、「汝、之(これ)詔(みことのり)する時、
問いて行う天若日子の狀(じょう:様子)者(は:短語)」と解読したんですが、
これだと、「者(は:短語)」で終わってしまいます。
そこで、「狀」の字源が分かれば、ヒントになるかと思ったけど無理でした。
解釈を難しくしているのは、「時 詔之」、「行」、「狀」だと考えています。「汝、天若日子者(は:短語)行った狀(様子)を問う」だとした場合、
「時 詔之」は今までの解読になりますが、「之(これ)」が何を指すのか不明です。
そして、「汝、天若日子者(は:短語)行った狀(様子)を問う」だと問題があり、
「天若日子之淹留所」を知りたいから、「諸神及思金神」は、
「雉」という部隊?を派遣すべきと言ったのです。
ところが、「天若日子」が「問う」と言うのは話の流れが繋がっている様に思えません。
「天若日子」が「問う」が正解に近い場合、「天若日子」が部下に命じたのだと思います。
では、どこの様子が知りたかったのでしょうか?
多分ですが、「天若日子」を見つけた後の話のように思いますが、
不明な点が多すぎます。
原文:
汝所以使葦原中國者 言趣和其國之荒振神等之者也 何至于八年不復奏
解読:
汝、葦原中國に使わす所以者(は:短語)、
其の國之荒振神等之和(やわらぎ)者(は:短語)趣(すみや)かに言う也
何(いず)れ、八年于(に)至り不復奏(ふくそうせず)
第四章では、派遣する場面で「遣」と「使」を利用していて、非常に困ります。
「可遣雉名鳴女」では「遣」なので、だいぶ、途切れ途切れの文なのかも知れません。
ここでも「其の國」とあり、どの國を指しているのか不明です。
なぜ、國命を出さないのでしょうか?
知らない國というわけでも無さそうですが、削除したのか、消失していたのか謎です。
この文で、「天菩比神」と「天若日子」を派遣した一連の話が終わります。
「道速振荒振國神」や「荒振神」が登場しました。
「
道速振荒振國神」では、「荒れ地整備班」と書きましたが、
洪水などの「災害」により、「濁流」を「止め」、「水浸し」になった畑は「荒れ地」へと
なってしまったので、「災害復興」のために「天菩比神」と「天若日子」の2人が、
尽力したのだと思います。
実際に、「道速振荒振國神」だったのが、「濁流」を「止めた」ので、
あとは「荒れ地」になった土地の整備だけになったようです。
そして、今回の「其の國之荒振神等」によって、災害は「其の國」で、
「葦原中國」は救援に人を派遣したという関係の様です。
「其の國」ですが、もしかすると、この「災害」が大きかったので、
「國」では無くなった可能性があります。
そうだとすると、「巨大地震」の可能性がありそうです。