最終更新日 2024/11/12

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 第四章 葦原中國の平定

如此之白 而於出雲國之多藝志之小濱 造天之御舍多藝志三字以音而 水戸神之孫 櫛八玉神
爲膳夫 獻天御饗之時 禱白而 櫛八玉神 化鵜入海底 咋出底之波邇此二字以音
作天八十毘良迦【此三字以音】而 鎌海布之柄 作燧臼 以海蓴之柄 作燧杵 而鑽出火云

是我所燧火者 於高天原者 神產巢日御祖命之 登陀流天之新巢之凝烟訓凝姻云州須之
八拳垂摩弖燒擧 麻弖【二字以音】 地下者 於底津石根燒凝而 𣑥繩之 千尋繩打延爲
釣海人之口大之尾翼鱸訓鱸云須受岐 佐和佐和邇此【五字以音】控依騰 而打竹之
登遠遠登遠遠邇【此七字以音】獻天之眞魚咋也

故 建御雷神 返參上 復奏言向和平葦原中國之狀
解読

此の如くに之(これ)白(もう)す

而(すなわち)出雲國之多藝志之小濱に於いて、天之御舍多藝志【三字以音】を造る

而(すなわち)、水戸神之孫 櫛八玉神が膳夫を爲す

天を獻(たてまつった)御饗之時、禱(いのる)と白(もう)す

而(すなわち)、櫛八玉神、鵜に化けて海底に入り咋(くう)

底から出て之(これ)波邇【此二字以音】、天八十毘良迦【此三字以音】を作り
而(すなわち)、鎌海布之柄 に燧臼(のろしうす)を作る

海を以って蓴(ぬなわ)之柄、燧杵(のろしきね)を作る

而(すなわち)、鑽(きり)出す火と云う

是、我の所の燧(のろし)の火者(は:短語)、
高天原に於いて者(は:短語) 神產巢日御祖命之登陀流、
天之新巢之凝烟【訓凝姻云州須】之八拳、摩弖を垂らして燒き擧げる

麻弖【二字以音】の地下者(は:短語)、底津石根に於いて凝らし焼く

而(すなわち)繩之(これ)𣑥(かえ)、千尋の繩を打ち延ばすと爲す

海で之(これ)口大之尾翼の鱸【訓鱸云須受岐、すずき】を釣る

佐和佐和邇此【五字以音】控(弓を引きしぼる)に依って騰(あげる)

而(すなわち)之(これ)竹を打ち、登遠遠登遠遠邇【此七字以音】
天之眞魚を咋(くい)獻(たてまつる)也

故、建御雷神、返りて参上し、葦原中國之狀が和平に向かうと復奏して言う

解説

03

複雑化した文3


白(もう)す

原文:

如此之白 而於出雲國之多藝志之小濱 造天之御舍多藝志【三字以音】而 水戸神之孫 櫛八玉神
爲膳夫 獻天御饗之時 禱白而 櫛八玉神 化鵜入海底 咋出底之波邇此二字以音
作天八十毘良迦【此三字以音】而 鎌海布之柄 作燧臼 以海蓴之柄 作燧杵 而鑽出火云

解読:

此の如くに之(これ)白(もう)す

而(すなわち)出雲國之多藝志之小濱に於いて、天之御舍多藝志【三字以音】を造る

而(すなわち)、水戸神之孫 櫛八玉神が膳夫を爲す

天を獻(たてまつった)御饗之時、禱(いのる)と白(もう)す

而(すなわち)、櫛八玉神、鵜に化けて海底に入り咋(くう)

底から出て之(これ)波邇【此二字以音】、作天八十毘良迦【此三字以音】を作り
而(すなわち)、鎌海布之柄 に燧臼(のろしうす)を作る

海を以って蓴(ぬなわ)之柄、燧杵(のろしきね)を作る

而(すなわち)、鑽(きり)出す火と云う

白(もう)す

「如此之白(此の如くに之(これ)白(もう)す)」とはありますが、
「唯(ただ)、僕(やつかれ、使用人)の住む所者(は:短語)〜」の文は、
誰かが、話をしたという表記がありません。

つまり、ナレーションの様な存在なので、
「此の如くに之(これ)白(もう)す」の文は当てはまりません。

そうなると、この文の前には、誰かが話している文が存在していたのだろうと推測できます。

なぜ、その部分を削除して、「〜神之御尾前而仕奉者違神者非也」の文の後に繋げたのか、
すごく不思議です。

文を読めば、明らかにおかしいのは、すぐに分かるのに、
歴史書にその様に記したのには、なにか意味があるのだと思いますが、
文章がおかしいのは確かなので、フォローはできません。

天之御舍多藝志

「天之御舍多藝志」がどの様な物だったのかは書かれていません。

読み

「多藝志【三字以音】」と注記があるので、「音読み」指定となります。

「多」:呉音・漢音:タ

「藝」:呉音:ゲ、漢音:ゲイ

「志」:呉音・漢音:シ

上記により、呉音「たげし」、漢音「たげいし」となりそうです。

意味

参照270のサイトにある「説文解字」には「種也。从坴、丮。持而種之」とあり、
「種」を指すと書いています。

ところが、「漢多」では、「象人伸出雙手栽種草木之形」とあり、
「人が雙(ふたつ)の手を伸ばして出し、草木之形を栽種する象(かたち)」と解読できます。

また、「後在「埶」上加注「艸」旁,「丮」下的「止」(或「女」)又進一步訛為象「云」之形,
遂演變成「藝」。本義是種植。」とあり、「本義は種を植える事」としています。

これにより、「説文解字」では「種」を指すとした考えから、
「漢多」の「種を植える」事へと変化した事になります。

ところが、真ん中にある「埶」の参照271のサイトにある「説文解字」には、
「像跽跪的人双手捧持禾苗或树苗栽种之形」とあります。

解読すると「跽跪的(ひざまずき、上半身をまっすぐに保つ?)人が双(ふたつ)の手で、
禾の苗を持って捧げる。或いは、树苗(苗木?)を栽种(植え付ける)之形」となりそうです。

参照270のサイトにある「漢多」の意味に近いようですが、こちらは「捧げる」となっています。

参照271のサイトにある「漢多」を見ると、「埶」の字源に付いて、
色々と考察している様子が分かりますが、結局、何が正しいかは不明です。

参照272のサイトにある「字源字形」の形が正しいと考えた場合、
「捧げる」、「植える」は十分にあり得ると思います。

もしかすると、「捧げる」と「植える」の意味を持つ漢字が、
別々に存在していた可能性もありそうです。

「「埶」甲1991合28809」は、「捧げる」の代表例になりそうです。

「「埶」甲2295合27382何組」は、「植える」の代表例です。

ちなみに後世に付与されたと云われる「艹(草冠)」と「云」ですが、
参照270のサイトにある「漢多」の場所に「又進一步訛為象「云」之形」とあり、
「訛り」が影響した可能性がありそうです。

「艹(草冠)」と「云」にも、当然、「埶」に付けたほうが良いと判断された話があると思いますが、
全く、外に出て来ていません。

Wikiでは、「艹(草冠)」が先に付いたと書いていますが、その様な情報を見た事が無いです。

その他に「藝」の意味を考察できそうな字として「坴」があります。

「丸」の部分は「丮」の字形なので、「坴」は「埶」の旁の部分になります。

しかし残念ながら、参考になりそうな情報がありませんでした。

参照273のサイトにある「説文解字」には「土凷坴坴也」とありますが、
「土の凷(かた)まり」しか分かりません。

「土の塊」を砕いたのか、それとも、水をかけたりしたのか、
「土凷坴坴也」では、考察すべき情報がほとんどありません。

参照270:藝: zi.tools

参照271: 埶: zi.tools

参照272: 藝的解释|藝的意思|汉典 “藝”字的基本解释

参照273: 坴: zi.tools

まとめ

「多」は「多い」、「志」が「自分の意志によって、したい事を行う」ですが、
「藝」は何を指しているのかと考えると「植える」と「捧げる」どちらも合っていると思います。

「多くの捧げ物」でも、「多くの植えた物」でも通じると思われます。

でも、高位の人間で無いと「捧げ物」は、意味が無いと思うので、
「多くの植えた物」が良い気がします。

そうなると、「多藝志」は「多くの植えた物」を栽培するために
「志」を持ってあたるという意味でしょうか?

ちなみに、「藝」に関しては、「伊多久佐夜藝弖」でも考察をしてい ます。

櫛八玉神

「而(すなわち)、水戸神之孫 櫛八玉神が膳夫を爲す」とあるが、
「櫛八玉神」が「膳夫」に就任した経緯などについては、書かれていません。

ちなみに、「膳夫」とは「宮中に仕え、大王の食膳に奉仕する」事を言うらしいです。

神社
櫛八玉神

湊神社、御門主比古神社 境内 阿於社、賣布神社、火守神社、ふくろうの社

櫛八玉比女命

志布比神社、櫛玉比女命神社

まとめ

「櫛八玉比女命」とはいつの時代の人なんでしょうか?

鵜に化けて海底に入り咋(くう)

この後の記事では、「櫛八玉神」が行った事について、書かれています。

「而(すなわち)、櫛八玉神、鵜に化けて海底に入り咋(くう)」は、
当然、「鵜」に化ける事は出来ないですので、
「鵜」の様に潜水時間が長い事から、付けられたと思われます。

潜水時間と深度ですが、参照274のpdfには、
「カワウ」で、最大時間1.2分、最大深度37m、
「ウミウ」で、最大時間が2.4分、最大深度45mのようです。

なので、最大深度40m近くを素潜りで行ける人だったのだと思います。

「海底」が、何mかは不明ですが、最低でも30m近くはあったと思われます。

そして、「口」に魚を咥えて、地上に戻ってきたのかも知れません。

参照274:カワウってどんな鳥

波邇、天八十毘良迦、燧臼を作る

底から出て之(これ)波邇【此二字以音】、天八十毘良迦【此三字以音】を作り
而(すなわち)、鎌海布之柄 に燧臼(のろしうす)を作る

波邇


読み

「波邇【此二字以音】」と注記があり、「音読み」指定となります。

「波」:呉音・漢音:ハ

「邇」:呉音:ニ、漢音:ジ

上記により、呉音「はに」、漢音「はじ」となりそうです。

意味

波際という事だろうか?

天八十毘良迦


読み

「天八十毘良迦【此三字以音】」と注記があり、「音読み」指定となります。

「毘」:呉音:ビ、漢音:ヒ

「良」:呉音:ロウ(表外)、漢音:リョウ、慣用音:ラ(表外)

「迦」:呉音:キャ、ケ、漢音:カ、キャ

上記により、呉音「びろうけ」、漢音「ひりょうか」となりそうです。

意味

「毘」ですが、「毘」ではあまり情報が無かったので「毗」の字形にすると情報が出てきました。

参照275のサイトには「説文解字」の字形が載っていないので不明ですが、
参照276のサイトには載っています。

それによると、「田」になっているのは「囟」が変化した為で、
「比」は「匕(さじ)」を2つ並べた形になっています。

「囟」は、参照277のサイトにある「説文解字」には、
「像婴儿头顶骨未合缝……本义指婴儿头顶未合缝之处」とあります。

解読すると「頭蓋骨が未だ縫い合わされていない赤子のようなもの、
本義は赤ちゃんの頭で縫い合わされていない部分を指す」

「比」は、比較すれば分かりますが、「刀」の字形になるのが「人」、
「刀」の逆位置になるのが「匕(さじ)」なので、
参照276のサイトにある「説文解字注」の字形が正しければ、
「人」ではなく「匕(さじ)」が2つ並んだ字形となります。

これらから、参照275のサイトにある「説文解字」には、
「人臍(へそ)也。从囟,囟,取气通也;从比聲。」とありますが、
なぜ、「臍(へそ)」にたどり着いたのか、疑問しかありません。

逆に、「囟」が「縫い合わされていない頭蓋骨」で、「比」が「匕(さじ)が並んだ形」なので、
「匕(さじ)」を使って、「縫い合わせる」事を指している様に思えます。

それとも、「縫い合わせていない」と思われる場所が「臍(へそ)」という事でしょうか。

参照275:毗: zi.tools

参照276: 毗的解释|毗的意思|汉典 “毗”字的基本解释

参照277: 囟: zi.tools

参照278: 匕: zi.tools

Wikiによると「計量器の形、食器の形、部屋から伸びる廊下の形、
など複数の説が存在するが定説はない。」とあり、複数の字源説があるようです。

参照279のサイトと参照280のサイトにある「甲骨文字」の字形を見ると、
真ん中の箱の様な字形に「横棒」があるタイプと無いタイプが存在します。

「金文」でも「横棒」の有無が存在します。

ところが「楚系簡帛」の時代になると「横棒」があるのが当然という字形に変化します。

多分に「横棒」がある字形に統一されていったのかも知れません。

しかし、「甲骨文字」や「金文」では「横棒」の有無があるので、
当然、意味も異なっていたと思われます。

これは「豆」と似た感じがします。

あと、Wikiで書いてあったように「定説が無い」と思えるのが、
字源諸説の内容から分かります。

「説文解字」では「善也」とあり、「从畗省」と解釈されていますが、
「畗」の字形と思える形が「良」の中にはありません。

「字源」では「像水中有梁形」と「水中に有る梁の形」とありますが、
仮にそうだとして、上下にある形は、何を指しているのでしょうか。

「本义,应与水中之梁有关……良应以梁为本义」ともあり、
「本義、水中之梁に有る关(ものともののつなぎ目)に与えて应(こた)えた、
梁を以って良き应(こた)える為の本義」と解読できそうです。

これは「なにか」の「梁」として使われていた物を見つけたから創ったとも受け取れます。

「漢多」では、そうではなく、別の見解を述べています。

「《漢多》(徐中舒):甲金文象古人居住的半穴居的走廊之形,是「廊」的初文。半穴居的走廊,
兩邊各有入口,空氣流通,生活條件改善了,所以引申有良好、明朗義。」とあり、
古代人が住んでいた「穴居」に通じると考えているようです。

上下の形は、「廊下」だと書いています。

しかし、参照279のサイトにある「商甲骨文𠂤組」以降のように、
「廊下」の様に見えれば良いですが、
「商甲骨文午組」では、何かを掴むアームの様な形でになっています。

これも、一部分のみを区切って、考察しているという感じに映ります。

やはり、説得力がある字源は存在していないようです。

参照279:良: zi.tools

参照280: 良的解释|良的意思|汉典 “良”字的基本解释

まとめ

「毘」:「匕(さじ)」を使って、「縫い合わせる」

「良」:計量器の形?

「迦」:「であう」、「巡り合う」、「比べる」

上記の様に考えた場合、「毘」は「80」という物を入れる入れ物で、
「良」が「計量器」と考えれば、「80」という物の重さを図っていると思われます。

「計量器」の場合、「比べる」が適している様にも思えます。

燧臼

「燧臼」は「のろしうす」と読むと思われます。

「燧」は「ひうち」とも読み、「ひうちうす」でも良いのかも知れません。

「臼」は、参照281のサイトにある「説文解字」には「古者掘地爲臼」とあり、
古代では、「掘られた場所」=「臼」と考えられます。

ただ、「燧臼」がどの様な物で作られたかについては不明です。

参照281:臼: zi.tools

蓴(ぬなわ)之柄、燧杵(のろしきね)を作る

海を以って蓴(ぬなわ)之柄、燧杵(のろしきね)を作る

「蓴」は「蓴菜」や「石蓴(あおさ)」の様に、海や川に存在する植物なので、
「柄」を作るというのは、「石蓴(あおさ)」を「柄」に巻いたりするくらいではないかと思います。

先程は「燧臼」と「臼」でしたが、今回は「燧杵」と「杵(きね)」になります。

何をしたかったのでしょうか?

火を鑽(きり)出す

而(すなわち)、火を鑽(きり)出すと云う

これは、無人島などで生活する時に必要な火を起こす時に、
木を速く回して、火の粉を確保する方法と似ているように思えます。

しかも、「言」ではなく「云」なので、色々と伝え聞いた方法だと思います。

燧(のろし)の火

原文:

是我所燧火者 於高天原者 神產巢日御祖命之 登陀流天之新巢之凝烟訓凝姻云州須之
八拳垂摩弖燒擧 麻弖【二字以音】 地下者 於底津石根燒凝而 𣑥繩之 千尋繩打延爲
釣海人之口大之尾翼鱸訓鱸云須受岐 佐和佐和邇此【五字以音】控依騰 而打竹之
登遠遠登遠遠邇【此七字以音】 獻天之眞魚咋也

解読:

是、我の所の燧(のろし)の火者(は:短語)、
高天原に於いて者(は:短語) 神產巢日御祖命之登陀流、
天之新巢之凝烟【訓凝姻云州須】之八拳、摩弖を垂らして燒き擧げる

麻弖【二字以音】の地下者(は:短語)、底津石根に於いて凝らし焼く

而(すなわち)𣑥(たえ)之繩、千尋の繩を打ち延ばすと爲す

海で之(これ)口大之尾翼の鱸【訓鱸云須受岐、すずき】を釣る

佐和佐和邇此【五字以音】控(弓を引きしぼる)に依って騰(あげる)

而(すなわち)之(これ)竹を打ち、登遠遠登遠遠邇【此七字以音】
天之眞魚を咋(くい)獻(たてまつる)也

繋がらない話

是我所燧火者〜

「是(これ)」とありますが、
前文が「而鑽出火云(而(すなわち)、火を鑽(きり)出すと云う)」なので、
「燧(のろし)の火」と関係があるようには思えません。

もちろん、「火を鑽(きり)出す」までに「燧臼」や「燧杵」を作っていますが、
その時に、今回の話が挿入されていれば良かったですが、そうではありません。

内容ですが、「神產巢日御祖命之登陀流」とは、どの様な物なのでしょうか?

前回の範囲で「登陀流」について、
「険しい場所」で「食べ物」を捧げ、「生まれた子」に名を与えたと解釈しましたが、
今回も、それが当てはまるのかは疑問です。

また、「天之新巢之凝烟【訓凝姻云州須】之八拳」なのでしょうか?、
新しい言葉が登場しています。

「州須」は、呉音で「すす」と読めますが、「新巢」とは新しい町や村を指すのでしょうか?
それとも、別の事を指すのか、いまいち良く分かりません。

「摩弖を垂らして燒き擧げる」も、意味不明な文となります。

「摩弖」が食材なのか、それとも別の物なのか、ここでは判断できません。

麻弖の地下?

「八拳垂摩弖燒擧 麻弖」と「摩弖」と「麻弖」が近くにあるので、
どの様に解読しようかと考えましたが、「摩弖」は「摩弖を垂らして燒き擧げる」とし、
「麻弖」は「地下者(は:短語)」に繋げました。

「麻弖」の「読み」と「意味」は最後の方に書くとして、
「底津石根に於いて凝らし焼く」という言葉が使われています。

これは、たぶんに、「底津石根」に工夫を凝らして「焼く」、
つまりは「焼き石」ではないかと思っています。

しかし残念ながら、前文との繋がりは無いようです。

読み

「麻」:呉音:メ(表外)、漢音:バ(表外)、慣用音 : マ

「弖」:呉音・漢音:テ

上記により、呉音「めて」、漢音「ばて」となりそうです。

意味

「弖」の字源が、判明していないので、「麻」だけでは考察できません。

𣑥(たえ)之繩

「而(すなわち)𣑥(たえ)之繩、千尋の繩を打ち延ばすと爲す」の「𣑥(たえ)之繩」とは、
参照282のサイトによると「𣑥、たえ。梶の木の繊維で織った布。」とあります。

問題は「千尋の繩を打ち延ばすと爲す」です。

「千尋」は、「非常に長い」や「非常に深い」を表す言葉と、検索するとあります。

なので「千尋の繩」は「非常に長い縄」となりますが、
「縄」を「打ち延ばす」とは聞いたことがありません。

探しても見つかりませんでした。

本当に「非常に長い縄」を「打ち延ばす」したと考えた場合、
なぜ、その様な事をしたのか気になります。

参照282: 「𣑥」の漢字‐読 み・意味・部首・画数・成り立ち - 漢字辞典

「海で之(これ)口大之尾翼の鱸【訓鱸云須受岐、すずぎ】を釣る」とあり、
「須受岐」を呉音で読むと「すずぎ」となり、漢音だと「しゅしゅうき」となります。

もしかしたら、古代では「すずぎ」と呼んでいたけれど、
後世に「すずき」へと変化した可能性がありそうです。

佐和佐和邇此と登遠遠登遠遠邇
佐和佐和邇此

読み

「佐和佐和邇此【五字以音】」と注記があるので、「音読み」指定となります。

「佐」:呉音・漢音:サ

「和」:呉音:ワ、漢音:カ、唐音:オ

「邇」:呉音:ニ、漢音:ジ

「比」:呉音:ヒ、ビ(表外)、漢音:ヒ

上記により、呉音「さわさわにひ」、漢音「さかさかじひ」となりそうです。

意味

「佐和佐和」と繋げた意味が不明です。

普通であれば「佐和」だけで、十分なはずですが、なにかあったのでしょうか?

「佐」の考察は、「伊多久佐夜藝弖」でもしています。

意味としては、「「三角測量」で、皆が助け合う」だと考えています。

「和」の考察は「和備弖」でもしてます。

これには問題もあり、「龢」と「和」を「和」として考えている可能性です。

現在でも「龢」は、「和」の異体字としています。

しかし、「龢」は「禾(いね)」の「容積」を量る」事で、
「和」は「口」が「口(くち)」を表している場合、
「禾(いね)」を「口(くち)」で「食べる」という意味になるように思えます。

この様に、「龢」と「和」では、意味が異なります。

なので、この当時の「和」がどちらに傾いているのか、非常に気になります。

「佐和」であれば、「龢」・「和」どちらの意味でも通じます。

「爾」=「美しく輝く花」と考えられているので、
「邇」で「美しく輝く花」まで行くという意味にも見えます。

ただ、参照283のサイトを見ると、「説文解字」には「麗爾,猶靡麗也」とあり、
解読すると「猶(なお)麗しさを靡(わ)ける也」となりそうです。

「美しく輝く花」とは書いていないので、どの様に判断するかは個人に任されています。

それに「字源」、「漢多」の字源諸説を見ても、「美しく輝く花」と解釈しているのは無く、
なぜ、その様に思ったのか謎になります。

字義には「花朵繁茂的样子(生い茂る花々の様子)」とあるので、
完全に間違いでも無さそうです。

参照283:爾: zi.tools

Wikiでは「「止 (足)」+「匕 (=「比」、ならぶ)」。「やめる」「とまる」を意味する漢語」
としていますが、「匕(さじ)」は「小刀」などを象(かたど)った字形と云われていて、
「止(足)」が付いたからといって、「やめる」や「止まる」というのは、
「足」の近くに「罠(鉄線の様な罠)」があるからという事でしょうか。

「罠」があるから、そこから先に行くのは危険という事で、
「足を並べた」というのならば、納得できます。

まとめ

上記のように考察した場合、「佐和」で「穀倉庫」の設置と考えれます。

「佐」の「三角測量」によって建物を建設するのと、
「和」の「禾(いね)」の「容積」を量る」で「穀倉庫」だと考えました。

「邇此」の判断が難しいです。

「邇」は普通に「穀倉庫」の周りに植える花、
「此」が「穀倉庫」周辺に「罠」を巡らせたという事でしょうか。

もう少し、当時の状況などの情報が欲しいところです。

控依騰

「控(弓を引きしぼる)に依って騰(あげる)」と解読しましたが、「控」の考察が難しいです。

「控」には「ひく」などの意味があり、色々と試行錯誤しましたが、
「弓を引きしぼる」事で、目線が上に行くという風に考えましたが、正しいかは不明です。

登遠遠登遠遠邇

読み

「登遠遠登遠遠邇【此七字以音】」と注記があり、「音読み」指定となります。

「登」:呉音・漢音:トウ(トゥ)、慣用音:ト

「遠」:呉音:オン(ヲン)、漢音:エン(ヱン)

「邇」:呉音:ニ、漢音:ジ

上記により、呉音「とうおんおんとうおんおんに」、
漢音「とうえんえんとうえんえんじ」になりそうです。

意味

天神御子之天津日繼所知之登陀流」で考察し ていますが、
Wikiには、二通りの解釈が載っています。

1:「「豆」+「癶」で、食器に盛られた食べ物を捧げるさまを象る。
「すすめる」「ささげる」を意味する漢語{烝 /*təng/}を表す字。」

2:「登」はそれを音符にもつ形声文字で、「癶」は上方向に登っていく足の形。
「のぼる」「あがる」を意味する漢語{登 /*təəng/}を表す

Wiki

今までは、なんとなく、選べましたが、今回は判断が難しいです。

Wikiなどの字源サイトには「「辵」+音符「袁 /*WAN/」」とありますが、
字形から見ると、実は違うように見えます。

まず、参照284のサイトにある「西周金文西周中期」の字形を見ると、
「袁」と言われた字形は、上下に「止」がある字形なのが分かります。

ところが、「袁」の字形は?と言うと、参照287のサイトにある「袁」の字形を見ると、
「止」の字形は無く、「山」もしくは「傘」の様な字形が「甲骨文字」にはあります。

そうなると、本当に「遠」にあるのは「袁」ではない、別の字形という事になります。

今の活字にすると「辶(しんにょう)」と「袁」になっているだけとなりそうです。

では、「袁」の様に見えてしまう字形ですが、参照288のサイトにある字形を見ると、
どうやら、似た漢字が存在していたようです。

「甲骨文字」にある「袁」と思われる「「遠」後2.42.8合30273無名組」の字形ですが、
これは「辶(しんにょう)」ではなく「彳(ぎょうにんべん)」なので、「遠」の字形とは言えません。

「金文」は、「彳(ぎょうにんべん)」+「止」の漢字があるので「辶(しんにょう)」です。

ただ、「「遠」番生簋蓋西周晚期集成4326」の字形には、なぜか、「止」が無いので、
これも「遠」の字形と考えるのには無理がありそうです。

「秦系簡牘」と「傳抄古文字」は、「遠」の字形と思われますが、「傳抄古文字」の一部、
「「𢕱」四3.15崔」や「「𢕱」四3.15崔」は「遠」とは言えそうも無いです。

「説文解字」になると、なぜか、今まで登場していなかった「辶(しんにょう)」+「袁」と
「辶(しんにょう)」+「止+○(点が入る)+三本に分裂した線」が並びます。

非常に不思議です。

なにか圧力でもあったのでしょうか?

ちなみに、「袁」の意味ですがWikiでは、
「「爪 (=人の手)」+「衣 (=衣服)」+「又 (=人の手)」、服を両手に持って体に着る様子」
と書かれています。

今回の本当の「遠」の字形は、参照284のサイトにある「漢簡帛張家山」の字形までは、
「辶(しんにょう)」+「止+○(点が入る)+三本に分裂した線」で書かれていましたが、
「漢石經熹平石經」以降は「遠」になっています。

「□」と「𧘇」の字形の意味が分かれば、意味も分かるかも知れませんが、
現在は不明なので、今後の情報で見つかれば、改めて考えます。

参照284: 遠: zi.tools

参照285: 袁: zi.tools

参照286: 止: zi.tools

参照287: 袁的解释|袁的意思|汉典 “袁”字的基本解释

参照288: 遠的解释|遠的意思|汉典 “遠”字的基本解释

まとめ

「登遠遠」と同じ漢字を繋げる意味を考えましたが、分かりませんでした。

これが、万葉仮名で「とおー、とおー」ならば、「許々袁々呂々邇」のように、
「かけ声」や「歌曲」と考える事が出来ますが、
「とうおんおん」だと、何を言っているのか不明です。

古代の人の間では、「登遠遠登遠遠邇」の言葉は大きな意味が合ったのかも知れませんが、
現代では、解明する事は出来ないようです。

葦原中國之狀が和平

原文:

故 建御雷神 返參上 復奏言向和平葦原中國之狀

解読:

故、建御雷神、返りて参上し、葦原中國之狀が和平に向かうと復奏して言う

葦原中國

最後の文でも「葦原中國」とあり、「出雲國」をどうにかしようと考えていたのではありません。

ちなみに、「出雲の国譲り」は、誤っているので、「葦原中國の和平」に改めるべきと思います。

しかし、第四章の流れが、「葦原中國」を和平に持っていく為と分かりますが、
なぜ、「出雲國」に行ったりしたのかの理由が書かれていません。

普通に考えれば、「出雲國」は全く関係ない立場です。

必要な箇所は、ほとんど削除されているので全貌は分かりませんが、
「葦原中國」を「天(あま)一族」に渡すのを反対した勢力がいたのは確かな様です。

そこで「大国主神」等が本当に関わっていたのか、考察をしてみて、
非常に微妙だなと思いました。

なぜなら、文の繋がりが考慮されていないからです。

今までは、文の繋がりを考えていた様に見えましたが、
第四章では、おかしな文の繋がりを多く見つけています。

展開も飛び飛びで、文のまま考えるべきか、裏を考えるべきか、非常に難しいです。

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