是於(これお)天照大御神の為を以て怪しむ。
天石屋の戸を細く開けて内而(に)告げる者(は:短語)、
吾、隠れて坐す而(に)因って、
天原自(より)闇く、亦、葦原中國皆闇くを以て為す。
天宇受賣者(は:短語)楽しむ為には、何を以て由とする
亦、諸(もろもろ)の八百萬神が咲く
爾(なんじ)天宇受賣白(もう)して言う
汝の命の益而(に)貴神坐す
故、歓喜して楽しんで咲く(喜ぶ?)
天兒屋命、此の如くに言う之(この)間に、布刀玉命は其の鏡を指し出す
天照大御神之(これ)奉りて示す時
天照大御神奇しき思い而(に)逾(いよいよ)
自ら戸から出て稍(ようやく)坐す而(に)臨む之(この)時
其の隠れ立っていた之(この)所、天手力男神、其の御手を取り引き出す
即ち布刀玉命、尻久米(此の二字、音を以ってす)繩以て
其の御後方に控え度して白(もう)して言う
此れの内を以て従い入って不得(え)ずに還る
故、天照大御神出て坐す之(この)時、高天原及び葦原中國自ら照らす明るさを得る
是於(これお)八百萬神共而(に)議して、
速須佐之男命於(お)千の位の戸を置くを負わせ
亦、鬚(あごひげ)及び手足の爪を切り、神夜良比夜良比岐を抜くを令(うなが)す
又、大氣津比賣神食べ物を乞う
爾(なんじ)大氣都比賣、鼻口及び尻自(より)、
種種(くさぐさ)而(に)味の物取り出し種種(くさぐさ)而(に)具を作り進める時、
速須佐之男命、其の態(さま)立って伺い穢れの為而(に)進んで汚れて奉る
乃ち其の大宜津比賣神が殺すが、故、神者(は:短語)殺した身の所から物を生む
頭に於いては蠶(かいこ)が生まれ、二つの目に於いては稻の種が生まれ、
二つの耳に於いては粟(あわ)が生まれ、鼻に於いては小豆が生まれ、
陰に於いて麥(むぎ)が生まれ、尻に於いては大豆が生まれる。
故、是(これ)神產巢日御祖命、種成り茲(し)げるを令(うなが)す
鏡と継承
原文:
如此言之間 天兒屋命 布刀玉命指出其鏡
解読:
天兒屋命、此の如くに言う之(この)間に、布刀玉命は其の鏡を指し出す
「布刀玉命は其の鏡を指し出す」と書いていますが、
前の文では「鏡」について触れていません。
それに、「天兒屋命」が「此の如くに言う」というのは「祝詞」の可能性があり、
その場面も前文にはありません。
そのため、前文とこの文には繋がりが無く、場面も異なると言えます。
後の文に「天照大御神之(これ)奉りて示す時」とあるので、
儀式に使うために、改めて「鏡」を作成したのでしょうが、
その場面が抜け落ちてしまっています。
今後、日本書紀の該当場所で比較検証します。
原文:
示奉天照大御神之時 天照大御神逾思奇而 稍自戸出而臨坐之時 其所隱立之天手力男神
取其御手引出 即布刀玉命 以尻久米【此二字以音】繩控度其御後方 白言 從此以内不得還入
解読:
天照大御神之(これ)奉りて示す時
天照大御神奇しき思い而(に)逾(いよいよ)
自ら戸から出て稍(ようやく)坐す而(に)臨む之(この)時
其の隠れ立っていた之(この)所、天手力男神、其の御手を取り引き出す
即ち布刀玉命、尻久米(此の二字、音を以ってす)繩以て
其の御後方に控え度して白(もう)して言う
此れの内を以て従い入って不得(え)ずに還る
以前、アメーバブログで考察している時には気が付きませんでしたが、
改めて、原文を解読すると、これは「前天照大御神」が亡くなったので、
後継者が行った儀式が「天岩屋」で行われたのではないか?と考えるようになりました。
「自ら戸から出て稍(ようやく)坐す而(に)臨む」とありますが、
これは、「天岩屋」で祈りを行い、覚悟などをし、
「天兒屋命」の「祝詞」、「布刀玉命」の「鏡」により、
新たな「天照大御神」が誕生した時の話だと思われます。
「尻久米【此二字以音】繩」と注記があり、「久米」の二文字が音読み指定となります。
「尻」:呉音・漢音:コウ(カウ)(表外)、訓読み:しり
「久」:呉音:ク、漢音:キュウ(キウ)
「米」:呉音:マイ、漢音:ベイ
「縄」:呉音:ジョウ(ジョゥ)、漢音:ショウ(ショゥ)(表外)、
訓読み:なわ、表外:ただ
上記により、呉音「こうくまいじょう」、
漢音「こうきゅうべいしょう」となりそうです。
「久米」の「米」は「万葉仮名」では「め」かも知れませんが、
「万葉仮名」は音読みではないので、「米」は「まい」か「べい」となります。
「久米」とは何か?を探すと、「久米」=「供米」とするサイトもありましたが、
「久」は「長い」、「米」は「稲」と考えると、
「脱穀後の稲わら(久米)」の「尻(根?)」の部分を縄に結んだとすると、
「しめ縄」と考えることも出来ると思っています。